楽器屋さんに聞けシリーズ —ピッコロスネアは使えるぞ!—

ここ最近影が薄くなってしまった「ピッコロスネア」のお話です

2018-08-15 こんにちわ、渋谷WESTの松岡です。

今日のお題は「ピッコロスネア」

この間ふと思ったのが、
最近「ピッコロってあまり見かけないなぁ」と

そうなんです、
ここ最近カタログを見ていても、
4インチ以下の厚みの「ピッコロ」が無い!

ちなみに現行カタログ掲載の特注以外のモデル、
所謂プロパー商品を調べてみましたが、、、

Y社 12台中 0台
P社 40台中 6台
T社 56台中 1台


※口径問わず深さが4インチ以下のモデル 2018/8現在

もはや絶滅危惧種ではないですか、、、
こんなに無くなっていたとは悲しい限りです。

と言いつつも、
私自身も今まで所有していたスネアにでも
実はピッコロが1台も無かったりします(苦笑)

でも意外なほどに使い道は幅広く、
様々なシチュエーションで使えるサイズでもあります。

今回はそんな「深さ4インチ以下のピッコロスネア」をピックアップしてみたいと思います。


■100年前から存在したサイズ

さてこの所謂ピッコロサイズのスネア、
気になってみたのでカタログのデータを追っかけてみたところ、
1912年のラディックのカタログにも
しっかり「14x4」インチのサイズは存在しておりました。


191885 B

その後も主役になる事は無い物の、
このサイズのスネアはどの時代も作り続けられている歴史あるモデル。

ちなみに14×3.5という今で言う典型的なピッコロサイズは
PEARLのフリーフローティングの14×3.5のデビューから一般的になった模様。

そんな歴史あるサイズが「絶滅危惧種」とは何ともさびしい話であります。


■そんなピッコロスネアの特徴

標準とされるサイズが14x5(5.5)とされるスネアドラム。
ピッコロ14インチの場合3?4インチが標準的とされています。

5インチと比べると、
・サステインが短い
・スナッピーの反応(立ち上がり)は非常に素早い


音の立ち上がりが早く、細かいタッチにも非常に繊細に反応できるので、
ブラシワークを多用するドラマーにも向いています。

これらが特筆されるべき特徴であります。

但し、
・音の線が細くなる
・音の太さ、迫力は深胴にかなわない


このような弱点もありますが、
シチュエーションや作りたいサウンドによっては、
非常に武器になる特性を持ったスネアドラムで有ります。


■1980年代にブーム到来したピッコロ、火付け役はフリフロ

それまでも存在していた3-4インチ程度の深さのスネアでしたが、
1980年代中ごろに発売された、
PEARLのFREE FLOATINGシステム(フリフロと称されることが多い)
による14×3.5インチのスネアが大ヒット!


フリフロスネアはシェルに穴を開けず、独自のシャーシ(土台)でテンションを支え、
シェルを文字通り「フローティング」した状態にすることにより、
音量の増強、サステイン延長、豊かな鳴りが生み出されるパール独自のシステムです。

これが当時のサウンドメイクに良くマッチしたようで、
特にゲートリバーブを掛けた時のアタックが強烈で、
クイックなレスポンスを生かした迫力のバックビートが生まれます。



80年代らしさ満載のエフェクトで奥行きのあるサウンドを実現!
※Powered by YAMAHA EAD-10 EAD-10ならこんなサウンドも作れます

また、故ジェフ・ポーカロが唯一の教則ビデオで叩いていたのも、このパールのフリフロ・ブラス。
その影響もあってか、1980年代?90年代中ごろにかけてのサウンドメイクの要的な存在でした。

特にこのパールのフリフロシリーズはピッコロ界の王道として、
現在でも根強い人気を誇っています。


その後、一旦ブームが落ち着きますが、2000年代に入り、再び脚光を浴びます。
このころでは、過去のエフェクティブなサウンドというよりは、
ナチュラルながらもタイトでハイレスポンスな音色が求められ、
ややハイピッチ目にチューニングされた抜けの良いサウンドが注目されました。

特にスピード感のあるサウンドメイクに活躍、
速いテンポでも粒立ちが損なわれない為、ロック系を中心に活躍しました。



(例)90年代初期JPOP風サウンド(○―イング系っぽい?)結構懐かしい音!

112328 B
Pearl / B-9114P パール Free Floating Brass 14×3.5

上の2つの動画は、
先述のパールのフリーフローティングブラスを、
全くチューニングも変えずエフェクトを変えて録音してみました。
80-90年代の音色は再現するにはまさしく「不可欠」とも言えるモデルです。

しかし、意外なほどにぶっといサウンドかと思います。
また、元のサステインが短いため、エフェクトとの相性も良く、
様々な音作りがしやすいこともメリットでしょう。


■深胴の台頭によって存在感が薄くなってしまったピッコロスネア

かつてはメインスネアとしても主役級になりつつあったピッコロですが、
時代のサウンドに合わせ、その人気に陰りが見えてきます。

2010年代に入り、6インチ以上の深さのあるスネアの人気が再び再燃、
特性として全く逆のピッコロは徐々に影をひそめていってしまったのです。

こうして80年代末から90年代中期ごろに掛けては一世を風靡したのですが、
現在では絶滅危惧?と思われる程見かけない存在になってしまったのも事実です。




■先入観を捨ててみよう!現代のピッコロ活用術

・線の細さを逆手に取った「エフェクティブ」なサウンドメイク
元々ピッコロは胴鳴り<<アタックの傾向が強いもの。
よって、音色を「点」で出すのは得意です。


96985 B
NEGI / Maple Snare 13X3.5




このように特長を生かした「エフェクティブ」な音色で
個性的なサウンドを目指すのはいかが?



・反応の良さを活かしたローピッチ

305812 B
CANOPUS / BZ-1440 Bronze Piccolo



ピッチを落としても反応の良さが落ちない為、
敢えてミュートを強めにかけてローピッチで使っても面白いです。
意外にも太くしっかりしたサウンドが得られますよ!



・小細工はなし!王道のナチュラルチューニング

112165 B
YAMAHA / BSD0544 Birch Custom Absolute Nouveau 14×4




ミディアムピッチで胴鳴りも生かしつつ、
歯切れの良さを生かした明るいスッキリした音色は、
ファンキーなリズムが映える王道サウンド!


いかがでしたか??
ピッコロスネアの世界

最近はめっきり主役の座を奪われてしまった印象でしたが、
懐かしのサウンドを再現するもよし、
特性を生かして全く新しいサウンドをあみだすもよし、
ピッコロスネアの可能性を今一度見直してみてはいかがしょうか?

それではまた!

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■この記事を書いた人

松岡 武 Takeshi Matsuoka

中学生の頃突然ドラムに目覚め、そのままのテンションで音楽の専門学校に入学。卒業後よりお茶の水イシバシに勤務し13年、2016年6月より渋谷WEST勤務。20代のころはジョン・ボーナムにあこがれすぎて24インチのライドをバカバカ打ち鳴らしてました。豊富な現場経験を生かしたその人に合った楽器のチョイス、チューニングやメンテナンスポリシーで、様々なタイプのドラマーをサポート致します!


MATSUOKA