わからないことは楽器屋さんに聞け!ドラムチューニングの基礎知識?知識編?

基礎知識シリーズ17回目、
今回からは、「ドラムのチューニング」について解説していきたいと思います!





さて、ドラムのチューニングってなんぞや?とお思いの方もおられるでしょう。

弦楽器などでは、チューナーなどを使用し、
周波数をもとに正確な音(AとかDとか)に合わせる作業をチューニングと呼びますが、
ドラムにおけるチューニングってどうしてるの?何をしているの?と思う方もいらっしゃるはず。

もともとドラムは、打面と裏面の二つのヘッドをほぼ同時に振動させ、
さらにシェルの振動も加えて楽器全体で発音する楽器ゆえに、
明確なピッチ(音程)がわかりにくく、ギターなどのように正確な音名で表すのは難しい
のです。

しかしながら、チューニングが不要というわけでは有りません。

ドラムにおけるチューニングとは、
?ドラムの音質を整える。
?目指す音程感や、サステインをコントロールする。
?ドラムが一番鳴り易い状態にする。


この3点がキモではないかと私は考えております。

個人的には特に?の要素は、
ドラムチューニングにおいての最も重要な要素
と考えております。

まず、一つの基本的な知識として、ナチュラルにタイコを鳴らす仕組みを解説しましょう。

■ナチュラルに鳴るチューニングを目指して


チューニングに関する理論、方法はいくつかあるのですが、
ナチュラルにタイコを鳴らす、これはもっとも基本と言えるチューニングです。
このようにドラムのヘッドをスムーズに鳴らすための条件として、
全てのボルトの張り具合を均等にし、ヘッドに極力同じようにテンションをかけることが重要です。



この図は10テンションのテンションの掛かり方を簡単にイメージしたものです。
※実際はもっと複雑に絡み合っているのですが、、、ここでは簡素化しております。
このように対角線上に引っ張りあってお互いのバランスを取っています。
これが1本でも緩んでしまっていたりすると、このバランスが崩れ、
鳴りがイマイチだったり、不快な倍音が目立ったり、不安定な音色になってしまいます。

実は、このテンション数は少ない方がチューニングは楽です。
例えば10テンションと6テンションを比べると、引っ張り合う力の分散が6テンションの方が少ないため、
均等に張るのは6テンションの方が比較的簡単です。
ただし、細かい調整や、チューニングできる幅(いわゆるチューニングレンジ)は10テンションの方が圧倒的に広く、
チューニングも安定しやすい
です。実際どちらが使いやすいかはプレイヤー次第といえるでしょう。

とにかく、ヘッドをなるべく均等に張ることが第一歩、
こちらについては「実践編」でまた詳しく説明したいと思います。

さてチューニングにより音はどうなるの?ということで
?、?について解説していきたいと思います。

■音程の調整


音程の調整には、主に叩く側のヘッドの張り具合を調整します。

今回は動画を使い比べてみますので、是非比較してみてください。

<今回登場のスネアはこちら>


YAMAHA RLS1455 ヤマハ レコーディングカスタム 14x5.5 ステンレススティールシェルモデル

スティーブ・ガッド氏がプロデュースした、ステンレススチール製のスタンダードなモデル。
10テンションでチューニングレンジも広く素直なため、今回のサンプルとして使用しました。


まずはスタンダードにミディアムピッチにチューニングしたものです。



スナッピーのテンションもノーマルです。
ステンレスらしく非常に抜け良く素直に良く鳴っています。
音量も十分、埋もれないパワーがありながら、決して痛いサウンドではない、
さすが「レコーディングカスタム」の名称通りの使いやすい音色です。


これを打面側だけ張りを強くしてみたものが次の動画です。



こんな感じに、より音程も高くなり、鋭い音に感じると思います。
ハイピッチではヘッドの振動も速くなるため、
余韻が短くハイトーンの協調された、キレあるサウンドを生み出すことが出来ます。

続いて逆に、打面側だけ限界まで下げてみましょう。



途中まではノーミュート、途中からはリングミュートを装着しております。

このように、音程も低くなり、低音感が増していると思います。
しかしながら、低音成分も増える為、余韻も長くなり、少し暴れた感じになると思います。
そこでリングミュートなどを活用し、余分な音をカットしてみました。
すると、音量は落ちますが、余分な響きが無くなり、タイトなサウンドになりました。

このように、ナチュラルにチューニングしもともと楽器を鳴る状態にしておけば、
ミュートなどの処理で、いくらでも余分なサウンドはカットできます。

このように、基本的に音程の高さの調整は主に「打面」で行います。


■音質の調整


では、音程以外の部分は、どのように調整しているのでしょうか??

ここで登場するのが「裏ヘッド」いわゆる叩かない側のヘッドです。

スネアドラムの場合は、打面よりもずっと薄い厚みのヘッドを用いて、
スナッピー(響き線)が反応しやすいようになっております。

結構よくありがちなのが、、、



このように裏がベロベロで全くテンションがかかってない状態。
この動画ではかなり極端にベロベロにしてますが、
ベロベロの状態ではスナッピーが上手く反応せず粒立ちが悪くなるうえ、
全体の胴鳴りも得られず、スネアとしては「なんだが変な音」になってしまいます。

なんかスネアの鳴りがイマイチ悪いなぁと思っている方は、
一度ボトムのヘッドの張りを強くしてみてください。


すると一気にバランスが整い、胴鳴りのするいかにもスネアなサウンドになるはず!です。

しかしこの裏ヘッド、どのぐらいまで張ればいいの??
という事でお悩みの方もいるかと思います。



あまりわかりやすくないかもしれませんが、
このように素手で叩いて「コンッ、コンッ」と甲高い音がしっかり鳴るくらいがベスト。
※動画は若干強めぐらいのテンションです。

機種にもよりますが、基本的には裏ヘッドは
このくらいのテンションは維持しておいたほうがベターかと思います。

逆にこれよりも張りを強くすると、、、



音質が高域に寄りすぎて、詰まったサウンドになってしまいます。
サステインも短くなるので、あえてそのサウンドを狙う時は良いのですが、
少し耳に痛い音色に感じるようになるでしょう。

まとめると裏ヘッドでは
・サステインの調整
・音質のバランス調整(張ると高音成分が増す)
・全体の鳴り方の調整

上記の音質に関わるバランスを調整しております。

■まとめると
全体の音の高さは→表ヘッドで調整
全体の音質に関わることは→裏ヘッドで調整


自分の持っているスネアが何か足りない、思い通りにならない
そんな時はチューニングを一度見直してみましょう。


これらのことは正解とは限りませんが、一応の目安として覚えておくと便利かと思います。

この調整のバランスは機種でも違いますし、
スネア1台1台、個体差や状態としても違ってきます。


また、好みのサウンド、出したいサウンドもプレイヤーそれぞれかと思います。


そんな好みのサウンドを見つけ出すためにも、
是非一度、お手持ちのスネアをいじり倒してみてください!!

次回はこれを踏まえた上での実践編をお送りしたいと思います。

■過去記事はこちらから■

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■この記事を書いた人

松岡 武 Takeshi Matsuoka

中学生の頃突然ドラムに目覚め、そのままのテンションで音楽の専門学校に入学。卒業後よりお茶の水イシバシに勤務し13年、2016年6月より渋谷WEST勤務。20代のころはジョン・ボーナムにあこがれすぎて24インチのライドをバカバカ打ち鳴らしてました。豊富な現場経験を生かしたその人に合った楽器のチョイス、チューニングやメンテナンスポリシーで、様々なタイプのドラマーをサポート致します!







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