わからないことは楽器屋さんに聞け!ドラムチューニングの基礎知識?発展編・前編?

今回よりドラムセットにフォーカスしたチューニングについて解説!

2017-04-18 今回は前回の応用編/実践編を踏まえた発展編・前編

ドラムセットにフォーカスしたチューニングについて解説していきたいと思います。

◆前回の記事◆
わからないことは楽器屋さんに聞け!ドラムチューニングの基礎知識?応用編/実践編?




単品で勝負のスネアと違い、セットで考える必要があるドラムセットのチューニング。
基本的な考え方はやはりヘッドを均一に張り、ナチュラルにタイコを鳴らす。

これはスネアと一緒ですが、セットである以上、
トータルでのバランスを考慮しなければなりません。
なので「鳴らす」だけでは成立しないのも事実、
これまでにご説明してきた「スネア」単品でのチューニング技術を生かしつつ、
セットならではのチューニング方法も必要になってきます。

そもそもドラムセットではそれぞれサイズが異なるので、
チューニングのポイントも異なっていたり、
元々持っている音程を考慮する必要が有ります。

それでは今回はドラムセットで出したい音を出す為に、
考慮したいポイントを解説していきたいと思います。


■ドラムセットのサイズ

まずはセットのサイズについて

口径では
タムタムは概ね8-14インチ
フロアタムは概ね14-18インチ
バスドラムは概ね18-24インチのサイズにおさまる事が多いと思いますが、

このサイズはそれぞれの音程に直結します。


12インチのタムで14インチのタムの音を出すことは難しいように、
それぞれのレンジに合ったチューニングにする必要が有ります。

レンジに合ったチューニングにする事で、それぞれのタイコが持ち味を殺さずに自然と鳴ります。
これはセットにおけるチューニングの基本では無いかと思います。


勿論ジャンルによっても好まれるサイズに違いは有りますが、
一般的に以前の標準では12+13タムと16フロアに22バスドラムのセットが主でした。


画像は12+13タムのTAMA IP52H6HC-HBK


しかし近年では10+12タムと16フロアに22バスドラムも標準とされる傾向も見られます。


10+12タムのYAMAHA RCCORDING CUSTOM RBB2216 + RBP6F3 サーフグリーン

これは近年、ナチュラルなチューニングで
程よい音程感を出したいという傾向に合わせた流れ
では無いかと思われます。

※12&13の組み合わせがダメな訳ではなく、求められるサウンドの傾向が10&12のサウンドにシフトされて来た感じです。

確かに、12と13タムではサイズ差が1インチしかないため、
無理に音程差をつけようとすると、どちらかに無理をさせてしまう印象で、
綺麗な音程感のあるチューニングがしづらい傾向があります。

タムタム間の音程差としては
聴感上の音程にして3度から5度程度が丁度心地よい音程差かと思います。

※ちょうどドとミからソあたりの音程感

勿論タムタム間の音程差に決まりはありませんが、
2インチ刻みの口径は自然と3-4度程度の音程差が出来るので、
バランスが取りやすいと個人的には感じます。


ちなみにに同じ口径ならば深さが深くなると、、、
・サステインが長くなる
・低音感は増す
・輪郭は弱くなる

このような傾向があります。

上記のシェルの特性を理解した上でチューニングをしていく事が必要です。




以下のサンプル動画ではヤマハの大定番ともいえるYD-9000(バーチ6ply)の
10×10タムと12×12タムを使用し、約4度差でのチューニングに調整したものです。




ヘッドはクリアーのピンストライプ
ボトムはYAMAHAのクリアヘッドで、トップの方が分厚くなっているため、
ボトム側の張り具合をやや強くしております。
深胴らしいサステインのある、クリアで有りながら重めのサウンドです。

このように、ドラムセットを選ぶ際は、自分が出したい音程感をイメージして選ぶと、
サイズをスムーズに決めやすいと思います。


ちなみに余談ですが、数々の楽曲をレコーディングした名ドラマー、
故青山純氏は、10タム+13or14タムに18フロアという、
通常ではかなり極端なサイズを使用していたといいます。
彼の特徴的でメリハリのあるサウンドは、かなり口径差のあるサイズを活かした、
スタジオミュージシャンならではのサイズチョイスであったと感じます。



■ヘッドのテンションについて

ヘッド別の特性については以前の記事、ドラムヘッド編を参照いただけると幸いです。

これはジャンルや好みによっても左右されるのですが、
ジャズ系ではカラッとしたアタックのハイピッチ
ロック系では低音の効いたローピッチ目にチューニングされる事が多いですが、
タイコの1番鳴るポイントに持って来る事が望ましいです。

その基本を押さえた上で、好みのバランスに調整していくことが
ドラムセットにおけるチューニングの基本です。

では今回、動画でいくつかサンプルもご用意しました。



○上下ほぼ均等


○下側強め


○上側強め



ちなみににシェルはネギドラム製ビーチ、
ヘッドは上下ともにコーテッドアンバサダーで厚みが同じです。

同じ厚みのヘッドの場合基本振動特性近いので、
上下均等だと最もナチュラルにサステイン、鳴りが出せる印象です。

下を張ると、若干タイトになり、太さを残しつつも余韻の倍音が少し高くなります。


上を張るとピッチ自体があがり、全体の音域も少し高くなりドライな印象
かと思います。

これについては、どれが正解ということはなく、出したいサウンドで決めて良いと思います。
また、最終的にバランスを調整する際にこれらを微調整しますが、
上記の傾向を理解しておくと、調整も容易になるはずです。

また、補足として、上下のヘッドの厚みを変える事も良く有り、
特に打面のみ分厚くする組み合わせはよく行われるパターンです。

個人的な経験では、
上が厚い場合は下を少し張り目にすると、バランス良く鳴るように感じます。
もちろん同じ厚みでも、ヘッドの種類が違うとバランスは変わりますので、
それに合わせたチューニングが必要です。

セットのチューニングはいわば経験と慣れが必要です。
とにかく機会があればいろいろなパターンを試してみてください。



このように、基本の知識的なところを説明してきましたが、
ドラムセットはここからが難しい(笑)

単体で鳴るようになったは良いけど、
セットにしてみたら「アレ??」なんてこともしばしば、、、

それには、全体の共鳴や、タムホルダーの干渉などなど、
セットゆえの問題が結構浮上してきます。

次回はそんなドラムセットのチューニングについての後編、
セットとしてのバランスのとり方をメインに解説したいと思います。

今回はここまで、ではまた!

■過去記事はこちらから■

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■この記事を書いた人

松岡 武 Takeshi Matsuoka

中学生の頃突然ドラムに目覚め、そのままのテンションで音楽の専門学校に入学。卒業後よりお茶の水イシバシに勤務し13年、2016年6月より渋谷WEST勤務。20代のころはジョン・ボーナムにあこがれすぎて24インチのライドをバカバカ打ち鳴らしてました。豊富な現場経験を生かしたその人に合った楽器のチョイス、チューニングやメンテナンスポリシーで、様々なタイプのドラマーをサポート致します!


MATSUOKA