?スティックはただの棒ではない!?
2016-07-17
こんにちは、渋谷WESTの松岡です。
基礎知識シリーズもついに4回目、
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わからないことは楽器屋さんに聞け!スネア選びのカンタン基礎知識2
わからないことは楽器屋さんに聞け!ドラムヘッド選びの基礎知識
さて今回は、
実はもものすごーくサウンドと密接な関係がある、
ドラムスティックについて、いろいろ解説してみたいと思います。
まず、ドラムスティックとは…
いわゆる「バチ」ですね、これが無いとドラムは叩けません。
このスティック、実に種類が豊富な「ドラムアクセサリー」であり、
ドラムを始めるにあたって、一番最初に購入するアイテムではないでしょうか?
しかしいろいろありすぎて
わけがわからん!!
なんてことよくあります。
私自身も初めて買ったスティックは
パール106H(現106HC)なんですが、
初心者だった当時の自分には太すぎて、取り回しに苦労した経験があります。
以下、選び方の参考になるよう、
おおまかな基礎知識を解説いたします。
■サイズについて
まず、選ぶポイントとしては、サイズ。
まず太さは一般的に130mmくらいから160mmくらいの太さがあります。
同じ素材なら細いものほど軽く、太いものは重くなる傾向です。
140mm?150mm程度が多く、ドラムセットを叩くには程よいサイズといえます。
サイズが細いものは、繊細なタッチを表現しやすく、
サイズが太いものは音量が出しやすくパワフルな傾向です。
一般的に、細いものはJAZZ向けモデル、
太いものはROCK向けモデルとして販売されている事が多いものです。
次に長さです。
およそ380mmから430mmくらいのモデルがあります。
短いものは小回りが利く感じ、コントロールしやすいのが特徴。
長いものは遠心力がよりかかるので、パワーを出しやすいのですが、
その分スティックコントロールや握力が要求されます。
長さはそのプレイヤーの体格に合わせるほうが無難でしょう。
一般的には390mm?410mmくらいのサイズが使いやすいとされています。
これを基準に、まずは自分の体格にあったスティックをチョイスすることが大事。
実際に使ってみてしっくりくるものを選ぶのがベストですが、
上記の一般的なサイズに該当するものならは、比較的使いやすいでしょう。
■素材について
スティックって何で出来ている??
基本的には「木」です。
※それ以外の素材もありますが、ごく少数派なので今回は割愛します。
その「木」にも種類があり、特性も音色も変わりますので、
今回その音色の差も動画付きで解説致します。
・ヒッコリー
クルミ科の材で強度も強く、程よい重量。
スティックとしての耐久性に優れるため、もっとも使用されている素材です。
ドラムスティックは、ほぼほぼヒッコリーであると言っても過言ではありません。
それだけ一般的なスタンダードな木材です。
・メイプル
ドラムの胴体にも主に使用されており、硬く密度が高いが軽量。
音色はヒッコリーに比べ軽めで独特の明るさがある。
この独特の音質を好むプレイヤーも多い。
ヒッコリーに比べるとやや折れやすい。
・オーク
スティックに使用されているのはいわゆる「樫」の木。
ヒッコリーと比べるとやや重く、音質も暗く硬め。
重厚感があるためロック系に使用されるケースが多い。
今回、同型の素材違いの音の比較として、
パール110シリーズの
ヒッコリー/オーク/メイプルの3種を同じシンバルで試奏してみました!
シンバルは定番、ZILDJIAN K 20RIDEです。
■Pearl Classic Series Hickory 110HC
■Pearl Classic Series Oak 110AC
■Pearl Classic Series Maple 110MC
どうでしょう?
ヒッコリーに比べ、
メイプルは軽快なサウンド
オークは重厚なサウンドではないでしょうか??
このように、同じ形状のものでも素材によって音質の差を作り出すことが出来ます。
好みの音色を楽器ではなくスティックを変えることによって作り出すのもひとつの手段ですよ!
■形状について
ここまでは「サイズ」「素材」による差をピックアップしましたが、
もうひとつ重要な要素があります。
それは「形状」です。
特に、チップの形状は音色も叩き心地にも多大な影響を及ぼします。
典型的なチップ形状をここでご紹介したいと思います。
・俵型チップ

パール110シリーズを筆頭に、ベーシックで比較的よく用いられるタイプ。

このREGAL TIP 8Aのようにやや四角が強いタイプもあります。
このチ ップの特徴としては、打点をある程度面で捕らえられるため、
音色の安定性と十分な音量を得ることが出来るタイプ。
比較的リバウンドも素直で、ビギナーにおススメのオールラウンドな形状です。
・丸型タイプ

VIC-PEの小さめの丸型チップ
■Vic Firth Signature Series PETER ERSKINE VIC-PE

ZILDJIAN 3Aのやや大きめ丸型チップ
丸型の特徴として、打点が極めて均一に点で当たるため、
安定感のあるリバウンド、ムラの少ないタイトなサウンドが特徴で、
特に粒を立たせたいときに非常に有効です。
VIC-PEのような小さめの丸型はJAZZ系の安定したレガートに向き、
ZILDJIAN 3Aの大き目の丸型はファンク系など、パワフルでタイトなサウンドに向きます。
コントロールもしやすく、ビギナーも扱いやすいタイプです。
・ティアドロップ形
各社の5A(世界的定番の形状)などに採用されている、
先端がやや尖った形状のモデル。

こちらも非常によく見る形状で一般的です。
派生型にACORNタイプ、先端がより尖った形状もあります。
画像の一例はVIC-SM

この「トンガリ」傾向が強いと、打面に当てる角度により音色を変えることが出来、
熟練したドラマーだと1つのスティックで様々な音色を操ることが出来ます。
その反面、リバウンドは安定しづらくなり、より高い精度のスティックコントロールが必要になります。
極端なトンガリチップはビギナーには少し演奏しづらい側面もあります。
■Vic Firth Signature Series STANTON MOORE VIC-SM
※途中で当てる角度を変化させつつ演奏しています。
・ナイロンチップ
基本的にはスティック本体と同じ「木製」チップが主流ですが、
チップのみ「ナイロン」で出来たものも存在します。
この「ナイロンチップ」は耐久性に優れる点と、
独特の硬質な音色が特徴で、好んで使用するプレイヤーも多くいらっしゃいます。
弱点としては、摩擦が大きく、ヘッドの消耗がやや早くなるというデメリットがあります。
このようにチップの形状は、
音色、叩き心地を左右する重要なファクターで、
スティック選びにおいても非常に重要なポイントです。
一般的にチップが大きいものはより大きな音量・音圧が稼げ、
逆に小さいものだと音量がセーブしやすく繊細なタッチに強い利点があります。
極端な例としては
PROMARKのロックノッカーシリーズなど
チップそのものが無いスティックもあり、とにかく音量・音圧を重視したスティックといえます。

また、スティックそのものの重心もモデルによる違いがあり、
先述のZILDJIAN 3Aなどの「3A」タイプはかなり前に重心があり、
他の同じサイズ感のスティックに比べ音量が大きく、
より遠心力の掛かる重い叩き心地になります。
一例としてPromark select balanceシリーズは、その重心の差を差別化したモデルで、
最近では重心による音の差、叩き心地の差も重要視されて来ているようです。
このようなスティックの形状による特性の差を生かし、
自分の好みやプレイするジャンルによって選択してみてください。
■仕上げの特徴

通常、スティックは軽く塗装してありますが、
メーカー、シリーズなどにより、以下のような違いがあります。
・無塗装のもの
・カラー塗装のもの
・ニスが分厚いテカテカしたもの
・グリップを予め装着したもの
無塗装のものは一般的に汗を吸収し、滑りづらい一面がありますが、
メーカーの使用している塗料との相性は人それぞれ、
実際に手にしてみてしっくりくるものがよりベターでしょう。
このようにざっと説明して参りましたが、
スティックにはさまざまな特徴があり、
各メーカー数多くの種類が販売されております。
それぞれに得意な面、不得意な面がありますが、
その特性を生かしてプレイヤーの趣向に沿ったチョイスが出来るはずです。
いかんせん種類が多すぎて迷ってしまいそうですが、
ぜひ近くの店舗でいろいろなスティックを握ってみて下さい。
きっとあなたにベストマッチのモデルが見つかるはずです!
■最後にとりあえずはじめてのモデルに迷った方へ
これを買っておけば間違いなし!ファーストチョイスのアドバイス
・Pearl Classic Series Hickory 110HC
超が付くほどのベストセラー
日本人体形にベストマッチしたやや短め、標準の太さ。
チップ形状もバランスよく、とにかく使いやすいモデルです。
耐久性、バランスのよい「ヒッコリー」製がおススメ。また、仮に折れたり失くしたりしても、
どこの楽器店、スタジオにも置いてある確立が高いので困りにくいです。
・各社の「5A」タイプ
世界的な標準ですので、やはり使いやすいです。
日本人にはほんの少し長めですが、
トータルバランスがよく、ジャンルも選びません。
各社、少しづつ規格は違うものの、ほぼ共通スペックです。
・好きなアーティストのモデル
そのアーティストになりきりたいなら、まずは「アーティストモデル」
やはり憧れのサウンド、プレイを目指すならば、同じスティックを使うべし!
■この記事を書いた人
松岡 武 Takeshi Matsuoka中学生の頃突然ドラムに目覚め、そのままのテンションで音楽の専門学校に入学。卒業後よりお茶の水イシバシに勤務し13年、2016年6月より渋谷WEST勤務。20代のころはジョン・ボーナムにあこがれすぎて24インチのライドをバカバカ打ち鳴らしてました。豊富な現場経験を生かしたその人に合った楽器のチョイス、チューニングやメンテナンスポリシーで、様々なタイプのドラマーをサポート致します! |