楽器屋さんに聞けシリーズ ?ドラムのシェルを知っておこう「胴体の素材編」?

素材、今回は特に「木胴」シェルのそれぞれの特徴について解説!

2017-10-23 こんにちわ、渋谷WESTの松岡です。

前回では、ドラムシェルの歴史や構造について解説いたしましたが、
今回は「胴体の素材編(木胴)」をお送りします。

そもそも素材が違うとどう変わるのか?
にフォーカスしてみたいと思います。

ドラムの素材辞典的に活用していただければ幸いです。




■ドラムで使用するシェル材

たくさんありますが、、、
今回は木材で代表的なものとキャラクターを
動画を交えて解説してみたいと思います。

・メイプル(カエデ)
ドラムの材料のもっともメジャーな存在といえるでしょう。
非常に密度も高く、硬質な性質で木目も美しい。
ドラムのような音量が必要な楽器には最適だったのでしょう。
特に北米で採れる素材であったのも関係していると思います。

輪郭がはっきりしてシャープ、音の立ち上がりが良く、
繊細な音色からラウドなサウンドまで非常にレンジが広い。
ハイクラスのドラムはメイプルが採用されていることがほとんどです。

動画:SAKAE SD1455MA 14×5.5 Maple Mighty Halo Hoop
6plyのメイプル材の「もっともスタンダード」なメイプルスネア
明るく、張りがあり、ダイナミクスレンジも広いバランス型。

・バーチ(カバ)

特に日本、ヨーロッパ系のメーカー(YAMAHAやソナーで有名)で多用される素材です。
国内では北海道で採れるなど、安価に良い素材が採れたからでしょう。
とりわけYAMAHAのYD9000シリーズで採用され一躍有名になりました。
性質としてはメイプルに近いものの、若干色も濃く木目が目立ちます。
メイプルよりも中低域にレンジがあるようで(メイプルよりハイは弱い)
若干暗めで「ズドン」とした印象です。
特にマイク乗りも良いと言われており、根強いファンも多い歴史ある素材。


動画:YAMAHA SD-970G Birch 14×7 YD9000
YAMAHAのベストセラーといえる9000シリーズの7インチモデル
耳馴染みのよい芯の太い音色で歌モノにも良くマッチします。

・ビーチ(ブナ)
特にヨーロッパで多く採れる(ヨーロピアンビーチ)ようで、
SONORが伝統的に採用していた素材。国内でもYAMAHA、NEGIなどで採用例があります。
木材としてはやや重めで硬質、特にミッドレンジに特徴があり、
粒立ちがはっきりしたインパクトのある音色の傾向。


動画:SONOR VT15-14575SDW Vintage Series
重厚なビーチ材を薄目のシェルに仕上げ、繊細さと粒立ちを両立した、
60年代にソナーが生産していたドラムを現在に蘇らせたモデル。

・オーク(ナラ)

英語ではカシ・ナラの類はひとまとめにオークと呼ぶようですが、
ドラムに採用される場合は「ナラ」が使用されているようです。
2000年頃からYAMAHAが採用(オークカスタム・ライブカスタム)
重く硬めな素材でパワー・低域に優れる。
木目はやや粗く、独特の模様として生かされることも多い。
その「ドンシャリ」な特性からはどちらかというとロック向けな印象。

・マホガニー
伝統的に楽器全般で使用されていた赤みが強く美しい高級素材です。
実は種類が豊富で複雑、センダン科マホガニー属の木材を総称している。

ヴィンテージドラムでは「マホガニー」がよく使われていたようですが、
どの種のマホガニーが使われていたかは不明。
とりわけ今のドラムでは「アフリカンマホガニー」が使用されている。
性質としては柔らかくマイルドな中低域の豊かなサウンドが特徴である。

また、90年代の廉価版を中心に良く使用されていた
「フィリピンマホガニー」といった材も存在するが、
いわゆるラワン材で、上記のマホガニーとは似て非なるモノである。

・ポプラ

木材としては柔らかく軽量なポプラ材。
近年で廉価モデルの素材として良く使用されるが、
いわゆる50-70年代のビンテージドラムの芯材として使用されることが多い。
単独ではソフトかつドライでやや頼りない芯の無い音色だが、
マホガニーやメイプルと混合すると、非常にバランスの良いサウンドとなる。


動画:SAKAE SD1465TR Trilogy 14×6.5
メイプルとポプラ混合シェルのトリロジー
適度にサステインを抑え、ソフトでマイルドなサウンドの要となっている。

・ブビンガ

いわゆるローズウッドの近縁ともいえる木材(別名アフリカンローズウッド)で
色が濃く、強度も強く非常に重厚な木材である。
音色の特徴としては、重さゆえの重低音、アタック感を持ち合わせます。
また、見た目通りの暗めのトーンで、非常に重みのある音質が際立つ。
2000年代より、タマをはじめ、サカエなどでも多用され定番化した素材。


動画:SAKAE SD1465BV 14×6.5 Bubinga
サカエを代表する機種でもある。
ブビンガらしい音色を生かすため、かなり肉厚に成型されており、
エネルギッシュでパワーとアタックが際立っている印象。

木胴で主なところはこんな感じですが、
組み合わせればそれぞれの特性を合わせることが出来ます。

近年ではそれぞれの弱点を補完する目的で
木材を組み合わせた「ハイブリッド」シェルが良く使われております。

また、木材の目の向きにより強度や特性も変化するため、
木目をあえて全て縦目に組んだり、パターンに変化を付けているメーカーもあります。

このように木材の特性により大きく音色は変化します。
前回の記事の中でも紹介した、
「単板」のスネアだと、今回解説した特性がより際立ってきます。

しかし、合板である「プライウッド」では、
厚みや組み合わせ次第で様々なタイプのキャラクターを生み出すことも可能です。


■エッジ角による音色の変化



シェルの素材のほかに、
上記のようなエッジの角度も非常に重要な要素です。

このエッジ角は、シェルがヘッドに接地する面積に繋がります。

エッジの角度が鋭い場合(要は頂点がとんがっている)は
レスポンスが早く、縦に抜けるシャープなサウンドになります。
特に肉厚なシェルとの相性が良く、ヘッドをスムーズに発音させることが出来ます。

反対にエッジの角度が緩やかな場合は、
ヘッドとシェルの接地面が大きくなるため、胴体へ伝わる振動が強く、
胴体全体が膨らんでいるかのような鳴り方をします。
よってシェル構造としては、
肉薄シェルとの組み合わせの方が相性が良いようです。

また、ラウンドエッジといって、
頂点を丸めたかなり緩い角度のエッジもあり、
さらにヘッドとの接地面がより大きくなり、太く甘い音色を特徴とします。
ラディックのヴィンテージシェル等で良く使用されていたパターンです。

基本的にシェルとヘッドの接地面が大きくなるほど、
胴体へのヘッドからの振動伝達が強くなり、
膨らみ感のある音色になる反面、レスポンスはやや遅くなります。

また、エッジの切り方もメーカーによっての違いがあり、
エッジの頂点の位置でも音が変わり、非常に複雑ですが実に奥が深いものです。

シェル素材と、これらエッジの形状の組み合わせにより、
キャラクターの異なったサウンドが生まれていくのです。


これらの知識を持っていれば、
素材や構造からある程度の音色を想像できます。

ドラム選びの知識として活用して頂ければ幸いです。

ではまた!


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■この記事を書いた人

松岡 武 Takeshi Matsuoka

中学生の頃突然ドラムに目覚め、そのままのテンションで音楽の専門学校に入学。卒業後よりお茶の水イシバシに勤務し13年、2016年6月より渋谷WEST勤務。20代のころはジョン・ボーナムにあこがれすぎて24インチのライドをバカバカ打ち鳴らしてました。豊富な現場経験を生かしたその人に合った楽器のチョイス、チューニングやメンテナンスポリシーで、様々なタイプのドラマーをサポート致します!


MATSUOKA