レスポールを嗜む。Vol.3 バック&ネック材 マホガニーの神秘

レスポールの重量を決定付ける『赤い宝石』、マホガニー材を知る

いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます。イシバシ楽器 名古屋栄店 店長 Gibson Custom Authlized Product Specialist 湊 です。前々回 『レスポールを嗜む。トップ材メイプルの魔性。』 ではレスポールのトップ材、メイプルについてご案内させていただきましたが、今回はバック材、ネック材に用いられる木材、マホガニーについてご案内いたします。

オリジナルレスポールのバック材『ホンジュラス・マホガニー』

ヴィンテージレスポール関係のテキストを読むと出てきます『ホンジュラス・マホガニー』。これは産地を指す呼び方で、正式にはビッグリーフマホガニー(オオバマホガニー)、分類学上では Swietenia macrophylla(スウィーテニア・マクロフィラ)という木材です。

マホガニーとはホンジュラスの現地語で『黄金色』という意味で、主にカリブ海周辺で発見され『カリブの黄金』と呼ばれた木材です。

1700年代にフランスがウォルナットの輸出規制を行った際、木材調達に困窮したイギリスで、ウォルナットの代替材として取り入れられ、独特の柔らかな色合いや、木目の繊細な美しさ、強度や加工のしやすさなどから高級家具材などとして使用され普及しました。

現在では乱獲から希少となったホンジュラス・マホガニーはワシントン条約で保護されており、新たな伐採は出来ません。

そこで、分類学上は同種であるビッグリーフマホガニーを、カリブ海の気候と似た地域で植林して合法的に伐採したマホガニーを指して Genuine Mahogany (真正のマホガニー) Pure Mahogany として使用しており、現在ではインドネシアやフィジーなど、カリブ海の気候と似た地域で盛んに植林が進んでいます。

分類学上のマホガニー、木工業界でのマホガニー

様々なマホガニー材がありますが、例えばビッグリーフマホガニーが分類学上では『マホガニー属』であるのに対し、アフリカン・マホガニーは『カヤ属』であるなど分類学上は厳密にはマホガニーではないと言えるものもあります。しかしながら全く別のキャラクターを持っているわけではありません。

木工の世界では木目の特徴や強度、楽器業界では特に重要なサウンドキャラクターも似ており大きな分類ではマホガニーと呼べるもの、マホガニーと言って差し支えないものは全て便宜上マホガニーと分類されています。

以前はマホガニーの代替材として出てきたサペリも、現在ではサペリマホガニーと呼ばれることもあり、サスティナブルな観点から見れば今後もそういった動きは進むと考えられます。

Gibson Custom Shop のマホガニー

Gibson Custom Shop で使用されるマホガニーですが、10年ほど前にGibson社にヒアリングした際はフィジー産のビッグリーフマホガニーを使用しているとのことでした。

旧イギリス領のフィジーには、昔イギリスが植林したビッグリーフマホガニーが根付いていた様で、主幹産業である観光産業とは別に、産業の柱としてフィジー政府がビッグリーフマホガニーの植林、伐採事業を推進。ホンジュラスとは緯度も近く、ホンジュラス産マホガニーと同等の品質が期待出来るため、注目を浴びました。

2011年にフィジー政府とGibson社のマホガニー取引独占契約が話題となりました。下記は当時のフィジーのニュースサイト記事です。

Gibson Guitar Company to be exclusive buyer of Fiji Pure Mahogany Friday 23/09/2011 By fijivillage.com

この辺りからGibson Custom Shop のスペック表記に『Genuine Mahogany』と記載されるようになったと記憶しています。

現在のGibson Custom のスペック表記は『1-Piece Lightweight Mahogany』となっており、『Genuine Mahogany』から変化が見られますが、使用木材にどういった変化があったのか、変化はなく表記が変わっただけなのかはオープンにされていません。

フィジー産マホガニーは現在Taylor社なども使用しており、Genuine Mahoganyがより一般的になったことから、あえてうたう必要がなくなったのか、と想像しております。

マホガニーの重量を決定付ける生息域

低地より高地が重量的に有利な理由とGibson社のこだわり

『1-Piece Lightweight Mahogany』との表記通り、Gibson Custom Shop のレスポールは非常にウェイトバランスが取れた個体が多く、概ね全体重量が 約3.70kgから約4.20kg まで の重量となるように選定されています。

一方Gibson USA レギュラーラインのレスポールはそれ以上、約4.20kg~約4.70kg までの重量があります。

以前Gibson社からヒアリングした際にライトウェイトのマホガニーについて色々お話をお伺いする機会があったのですが、マホガニーの重量はその生息域によって大きく変化するとのことでした。

河川付近では、川底で洗われた石や砂の影響で水質に多くミネラル分が含まれ、その水を吸い上げたマホガニーは重くなってしまいます。一方丘の上など高台では降雨によって地表、地中のミネラル分は低地へ流されて行きます。

結果、高台のマホガニーは吸い上げ蓄積したミネラル分が少なく、ライトウェイトなものになるとのこと。

Gibson社は、こうしたマホガニーを選定して仕入れているとのことでした。Gibson社のこだわりが垣間見られるエピソードですね。現在でもウェイトの軽さは保たれていますので、こうした取り組みは継続して行われていると思います。

ボディ・ウェイトで分かれるサウンドキャラクター

レスポールのボディ・ウェイトは軽い方がより良いわけではありません。それぞれ音響特性があり、求めるサウンドによって最適なウェイトが全く違ったものになります。

■3.60kg~3.70kg台のレスポールのサウンド

3.60kg~3.70kg台のレスポールは比較的明るいサウンドキャラクターが多いのが特徴で、軽い分ボディの振動を倍音化する傾向にあり、一般的に『枯れたサウンド』と言われるブルースや70年代ハードロックなどのサウンドに向いています。

ピッキングのタッチには少しセンシティブで、加えてローエンドは出にくい傾向にありますが、口径の大きいアンプキャビネットなどと組み合わせれば、ファットながら鋭さもある往年のレスポールサウンドが得られます。

■3.80kg~3.90kg台のレスポールのサウンド

3.70kg~3.90kg台のレスポールのサウンドは、レンジ的にも倍音構成的にもバランスの取れたサウンドで、重量由来の程よいローエンドが期待できます。

小さめのコンボアンプなどと組み合わせて弾くクランチ、オーバードライブトーンはピッキングニュアンスなどのコントロールもしやすく、重量的にも持ちやすい重量ですので、私はこのあたりの重量感が好みです。

■4.00kg~4.20kg台のレスポールサウンド

4.00kg~4.20kg台のレスポールサウンドは、力強いローエンドと、引き締まった倍音構成が特徴で比較的ゲインの高いディストーションサウンドでもまとまりのあるサウンドメイクが可能です。

強めのピッキングでも受け止めてくれる許容力があり、エフェクティブな現代のロックサウンドにはこれくらいの重量があったほうが、ミックスなどの馴染みもいいのではないでしょうか。

これからも続く Gibson の取り組み

いかがでしたでしょうか。マホガニーについては様々な見解があり、議論が活発になる木材です。ギター好きが集まると色んな意見や情報が出てきます。

しかしながら、現在可能な限り良質な木材を確保し、オリジナルにより近いレスポールを作ろうとしてくれているGibson社の取り組みは、今後も続いていくのだと思いますし、様々な技術革新もあり、今後もより良いものを届けてくれると信じて止みません。

最後に、当店在庫からおすすめの個体をご紹介します。

Gibson Custom / Murphy Lab 1959 Les Paul Standard Reissue Light Aged Washed Cherry PSL 【S/N 932873】

日本ディーラー限定 材選定を行ったPSL(Pre Sold Limited)オーダーのMurphy Lab 1959 Les Paul Standard Reissue Light Aged!

見る角度により端正な杢を覗かせてくれるリアルなトップ、カラーリングは経年により褪せた様子を再現した『Washed Cherry』を纏っています。また仕上げは『Light Aged』となっており、高密度なウェザーチェックとライトエイジド・ハードウェアにより、ホームで弾かれてきたギターの経時変化、演奏による摩耗を再現しております。

ネックシェイプは、レスポールの中でも最も愛されている59年特有の、細すぎず、太すぎない人気のAuthentic ’59 Medium C-Shapeにロールドバインディングを合わせ、手馴染みの良いグリップ感を再現しております。
PUは名器『Custom Bucker Alnico III』を搭載。タイトな低域にスムースな高域でリフプレイでも、もたつきを感じさせない即応性で意外とハードドライヴィンなサウンドでもイケており、2013年以降のヒスコレの高評価を決定付けた一つの要素を持つベストなチョイスともいえます。

続けてお送りしてまいりました『レスポールを嗜む。』ですが、あなたの相棒選びの一助になりましたら幸いです。心よりご来店お持ち申し上げております。

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