知れば変わる、レスポールのトップ材メイプルの見方。
いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます。イシバシ楽器 名古屋栄店 店長 Gibson Custom Authlized Product Specialist 湊 です。レスポールといえば、ボディトップに施されたメイプル材の杢目が大きな魅力の一つです。
レスポールはギタープレイヤーの憧れの一つのモデルであり、いつか手にしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。杢目を見ても、それを自信を持って所有、プレイするためには、フィギュアド・メイプルという木材への価値観をインストールする必要があるのではないかと思います。
そこで今回は、1959 Les Paul のトップ材としての木材、フィギュアド・メイプルの見方をご案内出来ればと思います。
木目と杢、モクメとモク
木目(もくめ)は濃い線と薄い部分で1年
まずレスポールをみて、縦に走っている線を『木目(もくめ)』といいます。これはメイプル材の年輪です。濃い線(冬目)と薄い部分(春目、夏目)で一年と言われています。美しく細かく入った木目を見ながら、時の流れに思いを馳せつつ自然の恵みに感謝せざるを得ません。
まっすぐ入っていたり、曲がりくねっていたりしますが、それは木材の個性であり、品質の良し悪しには当たりません。私はより有機的なラインを描く木目が好きで、自然のランダムさに美しさを感じますが、これは好みですね。
木は年輪を重ねだんだん大きくなっていきますが、基本的に冬目の方が硬く、夏目は柔らかいと言われますので、冬目の間隔が狭ければ、つまり木目の密度が高ければ硬度は高くなると考えられます。
角材、板材に加工された木材の、木目が切断面に対し垂直に入っているものをクオーターソーン(柾目)、斜めに入っているものをリフトソーン(追柾目)、平行に入っているものをフラットソーン(板目)と呼びます。この中で通常の加工方法で1本の木から採れる量の少ないものはクオーターソーン(柾目)、次にリフトソーン(追柾目)となります。
杢(もく)の種類
メイプルについては、この画像の様に通常プレーントップに見られる様に揺れるような模様である『杢(もく)』は有りませんが、比較的杢の出やすい木材で、様々なフィギュアドメイプルがあります。
やや大きめの揺れる杢 フレイムメイプル、細く連続して見られるタイガーストライプ、そして希少なキルト、バーズアイなどがあります。先述したクオーターソーン(柾目)では杢は出やすく、フラットソーン(板目)では出にくい傾向があり、ちょうど中間のリフトソーン(追柾目)では動きのある杢が出やすい傾向にあります。
こちらの個体であれば、木目はほぼ均等にまっすぐ走っていますので柾目といって良いのではないでしょうか。杢も非常に整った出方をしています。そして柾目特有のリボン杢が縦に出ています。フロントボリューム、トーンノブあたりがわかりやすいでしょうか。先程のプレーントップにはかなりたくさんに出ていましたね。
ハードメイプル、ソフトメイプル、ハードロックメイプル
メイプル材はアメリカ北部、カナダで採れる木材で、その中でも東部で採れるもの(イースタンメイプル)はハードメイプル、西部で採れるもの(ウェスタンメイプル)はソフトメイプルと分類されています。
これは以前Gibson社に質問した際に頂いた回答ですが、Gibson Custom Shop Les Paul には基本的にハードメイプルを使用し、その中でも、Gibson社の基準でのアッパーグレードを選定し、ハードロックメイプルとしてトップ材に使用するとのことでした。
フィギュアドメイプルの中でも杢の間隔が広いもの、狭いものがありますが、間隔が広いものに関してはソフトメイプルになるのかもしれません。見ただけで判断するのは不可能ですが、木材は密度が高ければ硬度は高くなる傾向にありますので、一つの目安にはなるのではないでしょうか。
バック材マホガニーとのマッチング
メイプルばかり見ていると、もうミッチミチに詰まった硬いメイプルが良い様に思いますが、私見ではレスポールが持っているアタック感、トレブル帯域はテイルピースのアルミやブリッジサドルのブラス、後はチューブレスとなったトラスロッドによるものが大きいと感じます。
トップのメイプルとバックのマホガニーのバランスで木材としての鳴りのバランスを取っていますので、いたずらにメイプルの硬度を追いかけなくても良いような気がします。
実際に、レスポール開発時にテッドマッカーティはじめ開発陣は、トップのメイプルとバックのマホガニーの比率に関しては音響的にかなり試行錯誤の末に決定した経緯がありますので、そのバランスの上での個性と捉えて個体を選んでいただくのが一番良いと思います。
フレックについて
メイプル材に出てくるフレック(Fleck)は英語では斑点という意味で、トップのメイプルに出ている茶色い点々です。
建築材や家具材などの木材関係のお話ではあまり出てきませんので、おそらくギター業界での通称かと思われますが、入り皮(成長過程で外皮に傷がついた跡)、髄線、それから更に樹脂の硬化したもの、など諸説あります。お調べした限り(10年以上断続的に気になると調べていました)どれもあるんじゃないかと思っています。
フレックが多いほど硬い木材、と言われていますが、これにも諸説あります。私見としては、こういったしるしは生息域の環境変化によるものかと推測出来ますので、生育にあたって厳しい環境に耐えた、ということではないかと思っています。
私個人の好みとしては、より有機的に木材を彩る自然の紋様として、フレックがたくさん出ているメイプルが私は美しいと思ってしまいます。
ブランドが変わりますが、私の15年以上愛用しているFender のストラトのネック(メイプル材)には何年か使用したのちにフレックの様な茶色い模様が浮き出てきたことがあります。経年変化で何らかの変化が木材にあったのかもしれませんね。
あなただけの美しさの基準を作る要素はまだ他にも
木材を見る場合には、この様に様々な観点が合わさって来ます。単純にこれが良い、これはダメが存在しないことを感じて頂けましたでしょうか。さらに、憧れのアーティストが使っていたのと似た杢が良い、なども大きな基準となるはずです。ここに上げた以外にもまだまだ基準になり得る要素は人それぞれあるでしょう。
杢には整ったもの、有機的な変化に富んだもの様々ありますが、それぞれに別の美しさが有り、唯一無二のものなのです。木材の伐採されてからの寿命は 2000年 とも言われており、湿度管理され塗装で守られたギターは、あなたの手の中で生き続けます。
そのこと自体が素晴らしい体験であり、そのことを強く感じられることがレスポールが愛され続けている大きな理由の一つなのだと思います。杢が妖しく揺らめく様は魔性すら感じるとともに、自然の一部としてとても神聖なものだと感じませんか。
今回の記事を手がかりに、どうかあなただけの1本をあなたの目で探してみてください。
素敵な出会いがありますように。
→次の記事『レスポールを嗜む。Vol.2 ヒストリックモデルのセッティング』
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