レスポールを嗜む。Vol.2 ヒストリックモデルのセッティング

可動部は決して多くはない。Custom Shop Historic Les Paul のセッティングを楽しむポイント

いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます。イシバシ楽器 名古屋栄店 Gibson Custom Authlized Product Specialist 湊 です。前回に引き続きレスポールを思う存分楽しんでいただくべく今回も筆を取らせて頂きます。

木材をご自身で見極め、お選びいただいた後は思う存分プレイし、相棒との息を合わせていきたいところ。そこで今回は、しっかり選んだ相棒を、あなたと阿吽のコンビにするべく、 Historic Collection や Murphy Lab などヒストリックモデルのレスポールのセッティングについてご案内いたします。

レスポールはプレイヤーが動かせる部分が非常に少ないギターです。Gibson のエレキギターはほとんどそうですが、ペグ、ブリッジ高、テイルピースのスタッドボルト、トラスロッド4つのみ。その4つの調整だけで済みますので、好みに追い込みやすいモデルです。では順番に行ってみましょう。

通常より背の低いペグポストに注意して弦交換

まず良いプレイは安定したチューニングから。ヒストリックモデルをお買い上げのお客様で、「チューニングが安定しない」とのご相談を受けることがあります。何本もレスポールをお持ちで、慣れていらっしゃるはずなのですが、どうやらこれだけ変なんだ、と。ギターを拝見させていただくと、弦の巻き方に起因することがほとんどでした。

見ていただくと分かる通り、巻いた弦がブッシュ部に触れていますね。

さらに上から見てみると、巻終わりの部分がペグに巻き付けた部分に重なっています。弦の巻きにあるこうした遊び、落ち着かない状態がチューニングの不安定さの原因となります。

ヒストリックモデルに採用されているのは USAレギュラーラインのクルーソンタイプと違い、ブッシュタイプのクルーソンペグで、ペクポストが非常に低く、ライトゲージ10-46であれば 6弦1本分程の隙間しかありません。

弦の巻数には諸説ありますが、2巻きほどは確保したいところ。そこでペグポスト穴に対し「1回は上、もう1回は下」で巻き付けます。通称「ギブソン巻き」などと言われるペグにぐいっと結わえる巻き方も巻き数をあまり確保出来ないこういったタイプのペグに対応するためのものかと思います。

15年以上前になりますが、私も入社したての頃に練習しました…これがなかなか難しく、失敗することもしばしば。弦交換時も外しにくく、お客様がセルフで行うにも再現性が低いのがネックとなり、試行錯誤しながら「同等程度の強度を確保しつつ、誰でも出来る巻き方」を模索いたしました。今回はそれをご紹介します。

まず、巻きしろは 3.5cm 。巻きたいポスト、今は6弦なので一つ先の5弦ポストの外側が目安になります。

こんな感じで持っていただき、キュッと戻します。

ペグポストをつまんで巻き付けていくと、指に当たって自然にこの様に曲がります。ペグポストの対角線上でしっかり折り目をつけて固定します。これで巻きが緩んでくることはありません。

後は上に一巻き、下に一巻きするだけです。ギリギリで他の巻きに干渉せずまっすぐナットに伸びていますね。横から見るとE音に合った状態で、ブッシュにも当たらず、他の巻きにも干渉していません。遊びもほぼなく、これで安定したチューニングが得られます。

同様に他の弦も巻き付けます。高音弦は4cmほど巻きしろを作ると3巻きほどで巻きつけられます。

結わえる代わりに弦の硬さを利用し角2つで固定することでスムーズに弦交換が可能です。これぐらい巻いておけば弾いていてズレてくることはありません。これは同じくブッシュタイプのクルーソンペグを搭載したギター全てに応用することが出来、ペグ由来のチューニングの狂いを抑えてくれます。

トラスロッドとブリッジでの弦高調整

Gibson Custom のファクトリーセッティング

プレイアビリティに最も関わる弦高(げんこう)ですが、Gibson Custom Shop のファクトリーセッティングは 6弦12フレット上にて2.0mm、1弦12フレット上にて1.2mm(許容差+0.2mmほど)となっております。入荷個体のネック調整をするとだいたいこの数値に落ち着きます。6弦側が高くなっているのは、ミディアムスケールのため弦の張り、テンションがストラトなどのロングスケールよりゆるく、フレットバズ(フレットに当たって鳴る金属音)が出やすいからです。フレットバズも適量であればハードロック系のサウンドではトーンの一つですので、出したい音と弾きやすさのバランスを取りながら決めて行きます。

弦高調整はネックコンディションを見てから

弦高調整に当たっては、まずネックコンディションからみるのがセオリーです。ブリッジをいじってもネック調整不足であれば音づまりやビビリの原因となります。

トラスロッドの締め方で変わるトーン

本来はネックをストレートに調整するためのトラスロッドですが、出荷時のセッティングは完全にストレートではありません。それは季節を通してネックコンディションは変わるからです。これはどんな高価なギターでも、ヴィンテージでも、木材で出来ている以上、環境の変化でネックコンディションは必ず動きます。完全にストレートにしてしまうと、逆反り方向にネックが動いた場合、開放弦が鳴らない状態にもなってしまうのです。

トラスロッド調整は慣れれば簡単ですが、なかなか触るのは怖い、という方も多いですよね。ですので、頻繁に調整しなくても良いように許容範囲として少し順反り気味にセッティングするのがセオリーとなります。「1フレットと最終フレットを押さえて真ん中あたりにわずかに隙間が出来るくらい」、というのがよく言われますが、ここの加減でサウンドが変化します。

トラスロッドは弦の張力へのアゲインストとして働いていますので、弦振動により揺れるネックの復元力に関わってきます。つまり、少しキツめに締めるとより細かく振動し、緩めにすると大きく振動するようになります。微妙な差ですが、聴感上はもちろん、ネックを握った手に感じる振動の仕方がはっきり変わります。加えて、ボディ他、ブリッジ、テイルピースへの振動伝達の仕方が変わり、全体のトーンを決定付けます。

細かい振動ですとトーンも繊細に、大きな振動ですと力強くなる傾向にありますので、ここで好みに合わせていきます。

ライトウェイト・アルミニウム・テイルピースのサウンドを引き出す

テイルピースを固定するスタッドアンカーをなんとなく一番下まで締めていませんか?もうひと味、ブライトさがほしい時はスタッドボルトを緩めてみます。さらに、アップで見るとスタッドボルトとテイルピースの間に遊びがありますね。「完全に遊びなく固定されていない」、ここがテイルピースのサウンドを得る際に重要なのです。

スタッドボルトをやや緩めると、弦のブリッジへの侵入角が浅くなります。このことで、ブリッジにかかる圧が減り、テイルピースの固定にもわずかながら遊びが生まれます。このことで、アルミテイルピースのブライトな金属的倍音がトーンにプラスされると同時に、ブリッジサドルのブラスの倍音もやや開放され、全体的に明るめのきらびやかなサウンドになります。

テイルピースを爪で弾いてみるとサウンドが変化しているのがわかります。

逆にスタッドボルトを締め込むと、金属的な倍音が抑えられ、落ち着いた締りのあるサウンドになります。どれが正解はありません。全て好みでセッティングして良いのです。こうやって様々なバランスを見ながら理想のトーンへ近づけていきます。

トラスロッド調整はなかなか勘所が難しいのですが、その他はどれも作業的には難しくないものになりますので、是非試してみて下さい。こういったセッティングのプロセスを経て、各パーツのサウンド構成上の役割を体感することが、あなたの相棒を深く知る手がかりになりましたら幸いです。

お客様とお話をしながら、お買い上げのギターのセッティングをこうして仕上げるのもまた、私の喜びの一つでもあります。是非ご来店の際はご相談下さいませ。名古屋栄店 湊 でした。

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