サウンドと使用モデル別。おすすめとその理由。
求めるサウンドと使用モデルによって大きく変わる弦のチョイス
いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます。イシバシ楽器 名古屋栄店 店長 湊 です。
エレキギタープレイヤーなら必ず直面する弦選び。私も同じくこの弦にしよう、と決めるまでかなり試行錯誤しました。使用弦を決めた後もその時弾きたい音楽や、使用モデルによっていくつかの種類を使用しています。

そこで今回は、それぞれ異なるプレイスタイルや使用モデルに合わせた弦の選び方をおすすめ出来ればと思います。
エレキギター弦のスタンダードはニッケル弦
エレキギター弦は主にニッケル弦と呼ばれる種類のものが使用されます。基本的にピアノ線に用いられる炭素鋼線を使用し、それにメッキ加工などを加えた『プレーン弦』、同じく炭素鋼線を芯線とし、金属線を巻いた『ワウンド弦(巻き弦)』で構成されますと思います。(アコースティックギター弦はブロンズ弦が主に使用されている。)
ニッケルの他では、ヴィンテージサウンドに最適なピュア・ニッケルや、より明るいサウンドのステンレス、落ち着いた甘いサウンドのクロームなどがあります。
現在のエレキギター弦は1~3弦はプレーン弦、4~6弦はワウンド弦となりますが、細かな素材の配合で磁性などが変わりサウンドが変化します。
下の画像の様に『NICKEL WOUND』、『NICKEL ROUND WOUND』と書かれたものをお選び頂ければ、間違いありません。

エレキギター弦ゲージ(太さ)のスタンダードは 『09-42』 か 『10-46』 ゲージ
エレキギターの弦は弦の太さでサウンドも弾き心地も変わります。弦の太さ=ゲージといいます。エレキギター弦はアメリカから普及しましたので、太さは『0.009』などインチで表現されますが、分かりにくいのでパッケージ記載は 0.009インチ であれば『09』 などと表記される場合が多いです。
一般的なエレキギター弦のゲージは 1弦 09 ~ 6弦 42 の『09-42(ゼロキュー ヨンニー)』ゲージと、 1弦 10 ~ 6弦 46 の『10-46(イチゼロ ヨンロク)』ゲージとなります。
もっと略すると『09-42』を指してゼロキュー、とか『10-46』を指してイチゼロなんて呼んだりします。

何だか少し業界的な呼び方ですが、エレキギター弦を取り扱う所ではどこでも必ず通じますので臆せずご利用下さい。
同じ 『09』始まりでも、低音弦側だけ『46』の『09-46(ゼロキューヨンロク)』も存在しますので、楽器屋さんでは、例えば『ゼロキューヨンニーの〇〇〇〇(ブランド名など)』などとお声がけ頂くと購入時スムーズです。
『09-42』も『10-46』も各メーカーわかりやすい様に『~ゲージ』などと表記していますが、メーカーごとに異なるため、数値で覚えていただくのが良いと思います。
7弦ギターの弦を選ぶ際も、1~6弦のゲージを見ていただくと6弦セット+7弦の構成になっていますので、ゲージごとの特性を捉えやすいかと思います。
『LIGHT』や『REGULAR』の意味
パッケージには『LIGHT』や『REGULAR』の文字が主な弦メーカーのものには書かれています。
ライトはゲージが細め(LIGHT GAUGE)、レギュラーは(REGULAR GAUGE)で標準的という意味合いですが、メーカーにより異なります。
『09-42』『10-46』などいつも使っている弦の太さを覚えておきましょう。また購入時にもスタッフに尋ねたり、貼られている弦のPOP(紙)を取っておくなどすると
そのエレキギターにとって、ベストな弦がチョイスできます。
購入する弦の太さを安易に変えてしまうと、ブリッジやナットの溝切り幅の関係から、音質、響きに影響が出てしまうことがありますので、注意が必要です。
弦の太さを変えるかどうか検討する場合は、詳しい当店のスタッフにご相談ください。(リペアが必要となる場合、お預かりの上で、有償修理となる場合があります)
■ストラトキャスター、テレキャスター におすすめの弦
ストラトキャスターやテレキャスターはロングスケールのギターです。ロングスケールのギターはネックの長さが長く、弦の張りがしっかりしているのが特徴です。

ロングスケールは細い弦でも十分に弦のテンションが得られますので、一般的には『09-42』ゲージが張られることが多くなっています。
1950年代当時は『11-49』ゲージなど太めのゲージがスタンダードだったため、現在ヴィンテージを意識したモデルには一段太い『10-46』ゲージが使用されます。
ロングスケールのギターで『10-46』を使用すると、チョーキングやビブラートなどかなり硬くなります。
『10-46』ゲージを使用するストラト&テレキャスターのプレイヤーでリード主体の場合は、チューニングを半音下げて使用するアーティストも多く、演奏する曲のチューニングによってもチョイスが変わります。
シングルコイルは出力があまり高くないので、弦を太くしてパワーを補填する必要がある力強いバッキングサウンドなどでも『10-46』ゲージは使用されます。
ストラトキャスター、テレキャスター の弦を選ぶポイント
- リード主体なら『09-42』ゲージがおすすめ
- 力強いバッキングサウンドやヴィンテージサウンドなら『10-46』ゲージ
商品一覧:エレキギター弦(09-42)、エレキギター弦(10-46)

ストラト&テレにおすすめはコレ
私自身色々なゲージを試しましたが、レギュラーチューニングで使用し、なおかつ歪みも使用する場合は『09-42』ゲージを使用します。
ロングスケールの場合は細めのゲージの方が歪みのノリが良く、滑らかなリードプレイに向いています。
普段はクリーン、クランチでのプレイが多いので、より出力の得られる『10-46』ゲージを使用しますが、チョーキングをハーフにしたり、スライドなどを使用したりと自ずとプレイスタイルが変わってきます。
Gallistrings とは
その歴史は1890年にトマソ・ガリ(Tommaso Galli)が、ガット(gut:腸線)を用いた弦をハンドクラフト製作することから始まりました。1990年になるとコンピューターを用いた製造マシンを導入。上質な素材を用いてより高品質な様々な楽器の弦を世界中のプレイヤーに届けているイタリアの弦ブランド、それがGalli Strings(ガリ・ストリングス)です。
■レスポール、セミアコにおすすめの弦
レスポール、ES-335などGibson系のギターには多くミディアムスケールが採用されています。

ミディアムスケールは太めの弦を張っても弦のテンションがキツくなりすぎず、ハムバッカーピックアップと相まってパワフルなサウンドが魅力となっています。
弦のテンションが緩めになるため、ストラトなどロングスケールと同じ弦を張ると、比較してフレットバズなどが出やすくなりますので、レスポールなどには『10-46』ゲージがおすすめです。
ハードロックなど、なめらかなリードサウンドを求められる場合は高音弦のみ細くした『09-46』ゲージを使用することで低音弦のフレットバズを軽減しながら伸びやかなリードフィーリングが得られます。
レスポール、セミアコの弦を選ぶポイント
- 弦テンションを確保しフレットバズを防止。オールジャンル対応の『10-46』ゲージがおすすめ
- リフワークとリードプレイの両立には『09-46』をチョイス

レスポール、セミアコにおすすめはコレ
レスポール、セミアコなどGibson系にはまずこの『10-46』を使用してみましょう。ハードロック、ブルース、ジャズなど、色々なジャンルをまたがってプレイしてもあまり違和感なくサウンドメイクが出来ます。私は色んなジャンルをプレイするのが好きなので、基本的にはこのゲージを使用しています。
ハードロックやメタルサウンドを求めるときは『09-46』ゲージを使用すると、テクニカルなリードプレイもこなしやすくなります。
ジャズに特化する場合は『11-49』ゲージを使用することで、トラディショナルなジャズから、やや歪みやエフェクトを使用するコンテンポラリーなジャズにも対応出来ます。
■弦がすぐ錆びてしまう。そんな時は『コーティング弦』
これら通常の弦の寿命は1ヶ月ほどと言われますが、私はわりと手汗をかいてしまう方で、数時間ガッツリ弾くだけで弦表面が変色したり、演奏後きれいに拭き上げても2週間ほどで錆などが見られる様になってしまします。
ですので、私は弦表面に防錆のためのコーティングを施した『コーティング弦』を使用しています。コーティングされていることで錆や変色などによる劣化を防ぐことが出来、弦の錆によるフレット摩耗を防ぐことが出来ます。
やや割高の価格になりますが、サビも出にくく寿命は通常弦より長くなります。私は、弦のサビなどによるギターへのダメージを出来るだけ軽減したいので、基本的にはコーティング弦を使用しています。

弦のサビや変色を防ぐコーティング弦
定番中の定番、アーニーボールのエレキギター弦のコーティング仕様です。
ワウンド弦には巻き線にエナメルを焼き付けることで超極薄のエナメル・コーティングが施されています。
もちろんプレーン弦にもコーティングが施されていますが、それだけでなく、ボールエンドのロックツイスト部にチタニウムワイヤーを巻いたRPSレインフォースド・テクノロジーが採用され、ボールエンド部でのズレや切れを防ぎ、安定したチューニングが実現されています。
■グローバルスタンダードなブランド
これまでのおすすめ弦、Gallistrings や Black Smith は当社イシバシ楽器が輸入代理店となっているブランドです。
どこの楽器店でも、またはスタジオなどでも取り扱っている定番ブランドとしては『D’Addario(ダダリオ)』『Ernie Ball(アーニーボール)』が挙げられます。どちらも世界的に高いシェアを持っているブランドです。
コーティング弦は現在各社リリースしていますが、コーティング弦を普及させたのは『Elixir(エリクサー)』ブランドでしょう。それぞれご紹介致します。
ブライトかつワイルドなサウンド『D’Addario(ダダリオ)』

ダダリオは17世紀イタリアでの弦製造にルーツを持ち、非常に歴史の深いブランドです。1905年にダダリオ・ファミリーがアメリカに移民として渡ります。1950年代に入るとエレキギター弦の需要が高まりエレキギター/ベース弦製造を始めました。
60年代にダダリオがリリースした『ニッケル・メッキ・スティール弦』がそのブライトなサウンドから大ヒットし、現在のエレキギター弦のスタンダードとなりました。
画像の商品:EXL110 10-46
サウンドインプレッション
元祖現代エレキ弦のダダリオのスタンダードがこのXLシリーズ。ブライトなサウンドキャラクターで、ピッキング次第で少し暴れる様なワイルドさも持ち合わせています。
トラディショナルなジャンル、ジャズやブルースなどにフィットします。ロックでもサウンドにガッツやワイルドなニュアンスを足したい時にチョイスしたいブランドです。
ヴェルヴェットフィールの伸びの良さとまとまり『Ernie Ball(アーニーボール)』

プロギタリストとして活躍後、1958年カリフォルニアにギター専門店をオープンしたアーニー・ボール。1960年代、当時スタンダードだった『11-49』ミディアムゲージ弦ではFenderをプレイするのに硬すぎると感じたアーニーは、さらに細い弦を開発、『10-46』ゲージの『レギュラースリンキー(REGULAR SLINKY)』を販売します。プロアーティストにも話題となり、ダダリオと同等のスタンダードになりました。
写真の商品:REGULAR SLINKY 2221
サウンドインプレッション
開発の経緯もあり、サウンドは非常になめらかでまとまりのあるサウンドです。チョーキング時のストレッチ性も高い印象で、きめ細かなリードサウンドや、音を引き締めたい場合に使用します。
歪みのノリがよく、ヴェルヴェットフィールのリードサウンドといえばアーニーボールという印象です。
コーティング弦のスタンダード 『Elixir(エリクサー)』

防錆のため弦をコーティングするというアイディアは比較的新しく、今や定番弦となった1995年創業の『Elixir(エリクサー)』が初めてコーティング弦との出会いでした。
当初はコーティング被膜のためこもったサウンドがするという印象でしたが、『NANOWEB(ナノウェブ)』コーティングの開発から一気にブレイク。ブライドながら整った絶妙なトーンバランスでエレキギター弦市場を席巻しました。
近年ではブライトさを押さえたより自然な『OPTIWEB(オプティウェブ)』もリリースされています。
サウンドインプレッション
ナノウェブのトーンバランスは本当に絶妙で、ひとつ膜が剥がれた様なクリアなサウンドです。クリーン、クランチ、オーバードライブ、ディストーションと全てのサウンドにおいて鮮明な音像を残してくれます。
他のブランドを試しても、また戻って来てしまうクセになるトーンバランスです。私はOPTIWEBの落ち着いたサウンドも好きでどちらも使用しています。
弦の種類はまだまだたくさん
この他にもまだまだ弦の種類はたくさんありますが、基本は今回お話させていただいたニッケル弦で使用ギターのスケールと、好みのサウンド、プレイスタイルによってゲージをお選び頂くのが一番いいと思います。
各社工夫を凝らして、プレイヤーのサウンドメイクのために様々なバリエーションを用意してくれていますので、たくさん試してみて下さい。エフェクターやアンプを変えるより、意外と早く理想のサウンドに近付けることも多いポイントですよ。
それぞれの弦素材やゲージの特性を感じながら、楽しんでサウンドメイクしてみて下さい。
こんなセットもあります
こっそり教える弦購入の裏技:年に何回か”ボーナスパック“と呼ばれる期間限定の+1セットが出たら、買いです!
弦を買ったら・・・交換
初めて弦を交換する方は動画を見ながらやってみましょう!イシバシ楽器で紹介している弦交換方法の動画はこちら。
【初心者向け】エレキギター 弦交換の方法、ギター弦の張り方を動画でお教えします!【ストラトキャスター タイプ / レスポール タイプ】
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