ストラトを嗜む。-使用木材の変遷から見るサウンドバリエーション

製造年代と使用木材による驚くべきサウンドキャラクターの変化

いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます。イシバシ楽器 名古屋栄店 店長 湊 です。

Fender 社の代表モデル、1954年に発売されたストラトキャスターは、製造年代により大きく異なったサウンドキャラクターを持つギターです。

それは製造年代により使用する木材やその組み合わせ、その他仕様に変化があるためですが、人によってストラトキャスターのサウンドイメージが異なる要因のひとつとなっています。

皆さんは『ストラトキャスター』と言えばどんなサウンドイメージをお持ちでしょうか。

ブルースやロック、近年ではジャズでもストラトキャスターを使用するアーティストも見られますが、ほぼ全てのジャンルで使用されていると言っても過言ではないかと思います。

そこで今回は製造年代と仕様変遷を追いかけながらストラトキャスターの多彩なキャラクターをご案内させていただきます。

■1954~1956年中期のストラトキャスター

アッシュボディとメイプルネックのブライトなサウンド

Fender Custom Shop Team Built 60th Anniversary 1954 Heavy Relic Stratocaster Tobacco Sunburst

ストラトキャスターは1954年に発売が開始されましたが、ネックシェイプや細かな仕様変更はあるもののボディ材にアッシュ材、ネックはワンピースのメイプル材を使用しています。

アッシュ材は北米に棲息していた木材ですが、Fender社で採用されたのは北米南部のスワンプアッシュで、美しい木目と軽量さが特徴です。

比重(水1に対して、で木材の比重は測られます。数値が小さくなるほど同体積で軽くなります。)は0.5ほどとなっており、ブライトなサウンドが特徴です。

ネック材はワンピースのメイプル材で、トラスロッドはネック裏側のスカンク・ストライプ部から挿入します。

メイプル材も比較的比重が軽い木材で 比重0.7 となっており、アッシュボディとメイプルネックの組み合わせは全体的にブライトになる傾向です。

北米産のアッシュ材は2019年春のミシシッピ川流域の洪水と長期にわたる増水、温暖化による害虫の発生などにより多大な被害を受け、現在はFenderにおいても限られた機種にしか使用出来ない木材となりました。

また、気孔が大きくまばらなことから比重にばらつきが多く、個体重量差が大きくなる傾向にあり、ハイエンドモデルに使用される木材表記としては『ライトウェイトアッシュ』と記載されることが多いという特徴もあります。

■1956年中期~1959年のストラトキャスター

アルダーボディとメイプルネックでブライトながら落ち着いたサウンドに

Fender American Vintage II 1957 Stratocaster Maple 2-Color Sunburst

1956年中期~1959年のストラトキャスターはボディ材にアルダー材、ネックはワンピースのメイプル材を使用しているのが特徴です。

アッシュ材はその比重の軽さから、気孔などの目止めなどのため加工に手間がかかることなどコスト面から1956年中頃から、当時は比較的安価で、加工も容易な北米産のアルダー材に変更となりました。

アルダー材の比重は0.4~0.5でアッシュ材とほど同程度の比重ですが、アッシュに比べて密度のばらつきが少なく、バランスの取れたサウンド特性があります。

このボディ材の変更によりブライトながらミッドレンジも豊かなサウンドになり、ストラトキャスターのサウンドバリエーションの中でアイコニックな仕様のひとつとなりました。

現在のAmerican Vintage II シリーズでも1957年の仕様がフィーチャーされています。

エリック・クラプトンの使用で一躍人気モデルとなりましたが、ワンピースネックメイプルは単一素材、単一整形の性格上ネックの強度がやや弱い傾向にあります。

指板面の仕上げも防汚の観点から塗装されてはいるものの酷使により摩耗や剥離が起きるなどデメリットがありますが、そういった特徴も含めて愛されている仕様です。

■1959年中期~1962年中期のストラトキャスター

アルダーボディとローズウッド指板による艶のある甘いトーン

Fender American Vintage II 1961 Stratocaster Rosewood 3-Color Sunburst

1959年中期~1962年中期のストラトキャスターはボディ材にアルダー材、ネックはメイプル材を使用しているのが特徴ですが、指板材にローズウッドが採用される様になりました。

特にこの期間のネックのメイプル材と指板のローズウッド材の貼り合わせ面がフラットとなっており、指板面にRがあることから中央部が厚く両端は薄くなっています。

この仕様を指して日本語でいうところの厚板、『スラブボード』と呼ばれます。

後年はサウンドの各弦のバラつきをなくし接着時の精度を向上させるため、均等な厚みのローズウッドをRを付けたメイプル材に貼り付ける『ラウンドボード』と呼ばれる仕様に変更となりました。

異なる木材、メイプルとローズウッドを貼り合わせることで強度向上を狙ったこの仕様変更は、サウンド面でも大きな影響をもたらすことになります。

ローズウッドは比重0.8ほどと重く硬度の高い木材で、ストラトキャスターのサウンドに落ち着いた艶のある甘いアタック感をもたらしました。

アルダーボディとメイプルネック、ローズウッド指板の組み合わせは、ストラトキャスターのみならずエレキギターとしてもっともポピュラーな仕様のひとつとなり、様々なジャンルにフィットするサウンドを手に入れました。

その後も続く仕様の変化、そして現在のFenderへ。

Fender American Vintage II 1973 Stratocaster Maple Mocha

1970年代に入りボディ材にアッシュ材が再び使われることとなりますが、時代と共に求められるサウンドも変わり比較的重たいホワイトアッシュが使用されるようになりました。

木目の美しさは同じですが、スワンプアッシュと比べてサウンドにまとまりがあるのが特徴で以前よりエフェクティブでディストーション傾向も強まった当時のサウンドにフィットします。

その後も様々な試みが行われましたが、基本的には木材の視点からはこれまでご紹介した3タイプの発展となります。

現在では同一モデルでローズウッド指板とメイプル指板仕様がどちらも選べるよう展開されており、好みに応じた選択肢が用意されています。

それぞれの木材の特徴を知ることで、求めているサウンドのストラトキャスターに近づくことが出来るのではないでしょうか。ギターのサウンドキャラクターを大きく左右する木材の奥深さもエレキギターの面白さのひとつと言えるでしょう。

現在Fenderが展開しているシリーズとして、USAメイドのAmerican Vintage II シリーズや、JapanメイドのMade in Japan Heritage シリーズが各製造年代の仕様を再現しており、それぞれの時代の求めに応じたFenderの足跡と、様々なFenderトーンが感じられる仕上がりとなっています。

是非手に取ってそのサウンドバリエーションを感じてみて下さい。

→次の記事『ストラトを嗜む。Vol.2 ネック材メイプルの木目を読む。』

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イシバシ楽器Fender American Vintage II 特設ページ

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