続・楽器屋さんに聞けシリーズ ・TAMA Dyna-Sync vs YAMAHA FP9D(SHIBUYA WESTアーカイブ)

ダイレクトドライブ戦国時代、最新型ダイレクトドライブはこう選べ!

2020-04-09 楽器屋さんに聞け!シリーズもアーカイブします。


御茶ノ水ドラム館 松岡です。
久しぶりのシリーズ連載、今回は「ダイレクトドライブ」

今年のNAMMにて発表され、話題となっていたペダルDyna-Sync と YAMAHA FP9D タマ、ヤマハ両社のフラッグシップとして生まれたこれらのペダル。どちらも「ダイレクトドライブ」という共通点を持っていますが、、、
どっちのペダルが自分に合うかわからない、、、
そんな方のために!
そんな両社の2機種を、実はダイレクトドライブが苦手な(爆)松岡が比較検証してみたいと思います。
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■TAMA Dyna-Sync
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《タマ ダイナシンクシリーズ》
シングルペダルの HPDS1 とツインペダルのHPDS1TWの2ラインナップ


TAMA初の「ダイレクトドライブ」として登場 これまでのアイアンコブラ/スピードコブラシリーズで培った技術を活かし、
TAMA独自のアクション、性能を追求した「ダイレクトドライブ」実にスムーズな運動性能を誇り、滑らかで自然なフィーリングが特徴。
豊富な調整機能も備わっており、プレイヤーの好みに合わせた調整も可能になっている。
TAMA / HPDS1

TAMA / HPDS1TW
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スピードコブラ同様の「ロングフットボード」を採用
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フットボードとカムをつなぐコネクティングリンクが特徴的。
パワーロスが少なく、滑らかなフィーリングを生み出す独自の形状。
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可動部にはベアリングが搭載されているようだ。
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おなじみコブラコイルはSync-Coilという従来の1.5倍の強さのものを採用。より素早い跳ね返りを実現している。

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カムとシャフトの回転半径を無段階調整できるため、細やかな踏み心地の調整も可能。
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ビーターアングルとは独立したフットボードアングルの角度調整も可能です。
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スプリングの可動部にもベアリングが搭載されるようになり、
よりスムーズでパワーロスの無いアクションを追求。


■YAMAHA FP9D
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《ヤマハ FP9シリーズ》
チェーンとダイレクトの2タイプ、それぞれのツインペダル2機種とチェーンのみ左利き用のツインペダルも設定。合計5機種のラインナップ。
今回はFP9D・ダイレクトについて解説してみたいと思います。
YAMAHA / FP9D

YAMAHA / DFP9D


ヤマハとしては3世代目のダイレクトドライブ初代はFP9410(9415)、FP9500D(現行機種)に次ぐモデルで、現在のフラッグシップ機として満を持して登場した機種。ヤマハのバイクで培った加工技術を活かした、精度の高いパーツを採用し、重厚感・安定感がありながらもライトなフィーリングを実現しています。
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かなりのワイドな大型フットボードを採用しています。
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FP9500Dと比較しても非常に大きいことがわかる。YAMAHAの中でも最もボードが長い機種でも有ります。
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ヤマハのコネクティングシャフト。かなりの太めでガッチリとしたパーツを使用している。回転半径は3段階での調整調整も可能。
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また、フレームも頑丈で重厚感があります。高精度分割フレーム構造を採用しており、踏んだときのたわみも少なく青いパーツの箇所のベアリングが、高精度で一列に並ぶ為、パワーロスの少ないアクションを実現します。
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フットボードとの接続部にもベアリングを装備しています。
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重さが選択できるウェイト付きの新開発ビーター装備。太いまとまったサウンドを実現しています。
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ヒール部に装備されたスパイクにより、横滑りによるずれを防止。従来よりも安定感の高い踏み心地を実現しています。
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非常に画期的な、上向きのスプリング調整機構。演奏者は座ったまま調整も可能な非常に便利なシステム。また、90度ごとにロックが掛かります。こちらも可動するようになっており、滑らかなアクションにも寄与します。


■アクションの傾向
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どちらの機種も、現在では珍しくなくなった超ロングボード&大型フットボードを採用しています。
それにより少ない動作でもパワーも出しやすく、より安定し た踏み心地を実現しております。また、どちらも強弱のコントロール性に優れた、「ダイレクトドライブ」を採用しております。しかしながら、カムの形状も大きく違いが有り、アクションの傾向にも相違があります。
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この2つのグラフをご覧ください。
厳密には全く同じ基準でのグラフではないんですが、どちらもペダルの「反発力」と思って見るとわかりやすいはずです。・ダイナシンクの場合最初踏み始めはごく軽く、次第に反発力が増していくイメージです。ダイレクトドライブにありがちな、急激すぎる変化が無いのが最大の特徴です。打面に近づくにつれ反発力は上がっていきますが、その変化が非常に滑らかなようです。
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この独特の湾曲したコネクティングリンクが特徴的、他社にはない構造で、これが滑らかな力の変化に寄与していると思われる。また、打面に近づくにつれ、ボード下の「コブラコイル」の効果も出てくる為、ボードからの反発力を強く感じ、自然と打面からビーターが離れます。よって自然と「オープン奏法」に近くなる気がします。
・FP9Dの場合
踏み始めが若干重めで、その後急激に加速するアクション。ダイレクト感は強めでダイナミクスはつけやすいタイプです。しかしベアリングの改良などでグラフほどの「急激」さはあまり感じず、パワー感とスピード感のバランスのとれたアクションです。既存のダイレクトドライブよりも動作が滑らかに感じられます。
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■共通点も数多くあるが、特徴の違う2機種

どちらもロングボードで、サイズ感や重量はほぼ同一
・TAMA HPDS1 重量:2460g シャフトからヒンジまでの距離 380mm
・YAMAHA FP9D 重量:2420g シャフトからヒンジまでの距離 350mm
(参考)YAMAHA FP9500D 重量:2100g シャフトからヒンジまでの距離 230mm

しかしながら、いざ踏んでみると結構違いを感じます。
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横から見るとお分かりいただけるであろう、カムの形状がかなり違う為、そもそものアクションに違いがある。


参考までに、、、今回比較の2機種を同時スタートでバネの力のみで振ってみました。
極力スプリングテンションは合わせるようにしましたが、TAMA HPDS1は下部にもコイルが付いていますので、このダブルスプリングの効果が結構効いているものと思います。とにかく滑らかでパワーロスが少ないのが窺えます。YAMAHA FP9Dも実に動きは滑らかで、ストロークの速さが非常に速い印象、ストロークの速さでパワーが稼げるペダルだと感じます。いずれにせよこれまでのペダルと比べても全体の精度が高く、
動きの滑らかさが既存の機種と比べても格段に上がっておりました。さすがはタマ・ヤマハ両社のフラッグシップモデルといったところでしょう。
ちなみにツインペダルの場合、、、
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秀逸なのがYAMAHA DFP9Dのボールベアリング搭載ユニバーサルジョイントかなり精度が高く、左足のアクションがとにかく軽い!既存のシャフトよりも遊びが少なく、滑らかで安定したアクション。パーツ売りされるのであれば、他機種でも試してみたい非常に高性能なシャフトです。
■どのようなドラマーにおススメか
松岡のトータルインプレッション
ここまで構造の違いを中心に分析してみましたが、あくまで個人的な感想ですが、2機種を実際に踏み比べてみた感想をまとめてみました。
○TAMA Dyna-Sync
《長所》
・とにかくバネの効果が強く発揮されるので、戻りが素早い。高速向き。
・スプリングテンションがはかなり強いので、バネ強め好きドラマーは好きなはずです。
・ダイレクトによくある「ピーキーなアクションの変化」は無いので、癖は少なめ。


《短所》
・バネのテンションが基本的に強いため、ビーターを押し付ける奏法は苦手に感じる。
・超ロングボードなので、好みは別れるかもしれません。
・打点が結構手前なので、バスドラのセッティングによっては踏み心地が結構変わりそうです。


《著者的感想》
ダイレクト苦手な私としてはやはり最初クセを感じましたが、比較的慣れやすいと感じました。
※古いタイプのドラマーなので真円カム+ベルトという真逆なものが大好き

某FP720と比べ、少しヘッドが当たるポイントが後ろなのが気になりましたが、下記のセッティングで解決。結構セッティングがイジれるので、好みの設定を探せるのでは??とにかく戻りが早く、高速プレイを信条とする方は好きなペダルだと思います。

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※タマ パワーストライクビーターで打点前に、フットボードリフトアップとカムをLONGポジションにしてます。

○YAMAHA FP9D
《長所 》
・既存のダイレクトドライブのアクションを限りなく洗練させた感じ。
・ボードサイズも程よく大きく、踏みやすい。
・単純に細かいコントロールはしやすいので、ダイナミクスなどの幅広い表現が可能。
・とにかく座りながらバネ調整が出来るのは画期的です。
・新開発のウェイト調整できるビーターが秀逸。

《短所》
・ダイレクトならではの出だしが一瞬重くなる癖があるので、ここが苦手な方もいるかも、、、
・カムの細かい調整は3段階のみなので、踏み心地の選択肢は少ない。
・パワー系な感じではないので、パワーを出したい方は「チェーン」かおススメ。

《著者的感想》
既存のダイレクトドライブの完成度を圧倒的に高めたような印象。動作も滑らかであり、全体的なバランスが非常に優秀な印象。強弱のコントロールがスムーズで、様々なスタイルに対応できそうです。ヤマハらしい、オールマイティさを兼ねそろえた印象のペダルです。

個人的見解を交えつつ解説してまいりま したが、
実際カタログスペックでは語れないのがペダル選びの難しいところ。合うか合わないかは個人の踏み方やプレイスタイルによって変わってきますので、どっちが絶対おススメということはありません。

もし試す機会があれば、同じ条件で試していただければとは思うのですが、なかなかチャンスがない方も多いはず、、、
という事で今回、ほぼ同時期にリリースされ、同じ「ダイレクトドライブ」であるこの2機種を比較してみました。

ちなみに、「ハイテクダイレクト」の先駆けである、PEARLのDEMON DRIVEからは、なんとブラックバージョンが限定発売!
PEARL DEMON DRIVE BLACK
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こちらの精悍なルックスも実に捨てがたい!!このように今年は、各社こぞって新商品がリリースされております。どのペダルが自分に合うのかな??なんて思っているドラマーの手助けが出来ればと思います。

それではまた!


MATSUOKA