
この記事は 2018年7月時点 の最新モデル解説記事となります。各グレードの傾向としてご参照下さい。最新モデルは 特設Fender ブランドサイト にて御覧いただけます。
諸説入り乱れる論争に終止符を打つ『Fender 徹底解剖』。

エントリーブランドである Squier by Fender や、お手頃ながら本格的な Mexico 製「Playerシリーズ」、更にはUSAメイド、Custom Shop などの一生モノと言える高価なものまで幅広いラインナップを誇るFender(フェンダー)ブランドのギター。
しかしながら、ストラトキャスターやテレキャスター等、パッと見は同じ形をしているのに、何でモノによっては桁が違う程価格が異なるのか?
これまで書籍やネット等では
「メキシコ製のものはパーツがUSA製のものと共用だからコスパ良いらしいよ」
「最近のUSA製はダメだよ。日本製のフェンダーは下手をするとUSA製よりも作りが良くてしっかりしてるよ」
「いやいやフェンダーといえばUSA製!他は別物だよ」
等々、色々な情報/噂が出ていましたが、実際のところはどうなのか!?
というわけで今回はイシバシ楽器名古屋栄店店頭にある4本の価格&製造国が異なる「Fender Stratocaster」を、細部や普段見る事のない内部まで分解してチェックしてみました!
論より証拠です。早速見ていきましょう。
「Squier by Fender / Bullet Strat with Tremolo」 製造地:インドネシア

フェンダーの弟分ブランドとして、昔からお手頃な価格のモデルを展開してきた「スクワイヤ」の1本。所謂「フェンダーのストラトキャスター」を名乗れるギターの中では、最もお手頃なモデルと言えます。
ソフトケース付属で税込2万円台と超・お手頃な価格ですが、実際どのくらいしっかり作ってあるのか!?気になる方も多いと思いますので、分解して普段中々見る事ができない内部まで見てみましょう。


直系ブランドである事を示すように、ヘッドストックにはしっかりとFenderのロゴが。トラスロッドの調整はヘッドストック側からで、ネックを外さなくても可能なのは嬉しいポイントですね。


ストラトが元祖と言える、シンクロナイズド・トレモロユニットもしっかり搭載。



ネックを外した所です。ボディ材はバスウッドで、センター部分で継いであります。ネックジョイント部分の接合は意外に…と言ったら失礼ですが、しっかりとタイトにフィットしており、隙間なくかっちりはまる印象です。

ピックガードを外しキャビティ内部を見た様子です。ノイズ対策の為、キャビティ内には導電塗料が塗られており、アース処理されています。また、当モデルはオーソドックスなシングルPU(x3)仕様なのですが、ボディを共用し生産効率を上げるため、ハムバッキングPUが搭載可能な所謂HSH配列のキャビティ加工となっている点にも注目です。


ピックアップやポット、スイッチ類の配線です。ポット(ボリュームやトーン等の可変抵抗)はALPHA社のものを使用。
この価格という事もあり、全体的にはコストを抑えるべきところは抑えられた仕上がりとなっていますが、ネックジョイント部分やトレモロユニット等、「ストラト」として外せないポイントはしっかり作ってある印象です。
それでは、もう少し価格の高いストラトと、どこが違うのか(あるいは違わないのか)、順番に見ていきましょう。
「Fender / Player Series Stratocaster」 製造地:メキシコ

新たに登場したばかりのMade in Mexicoの新シリーズ、「Player Series」の1本。
「本物のフェンダー・トーン」をこの価格で手に入れる事ができるという触れ込みのこのシリーズ。果たしてその実力は?作りはどうなのか?見ていくことにしましょう。


ネック自体はサテンフィニッシュ(艶消し)ですが、ヘッド表面はグロスフィニッシュ(艶有仕上げ)となっており、ぱっと見で高級感がありますね。ペグもFenderロゴ入りの良さげなルックスのものになっています。


ブリッジ周辺ですが、ブリッジサドルは所謂伝統的なフェンダーらしいスチールプレスのサドルですが、トレモロユニット自体は2点支持の近代的なタイプで、ヴィンテージ+モダンのハイブリッドと言える仕様です。トレモロブロックは先程のスクワイヤのものと比べてサイズが大きくがっしりしている印象ですね。


個人的に一番驚いた点がピックガードやパネルを固定しているネジです。ネジ穴にあたる部分がテーパー加工されているのはもちろんの事、締めこんでいくとうまくネジが沈み込み、演奏時に指や服に引っかからないような形状となっています。
この後紹介させて頂く日本製やUSA製も同じような形状なのですが、正直Playerシリーズが一番沈み込み具合が深く、ネジ周辺がまるでPRSのような仕上がり/手触りです。
ネジ頭の+ドライバーのサイズも、スクワイヤは作業効率を考慮したためか、ネックジョイントを固定している木ネジと共通だったのが、Playerシリーズは見栄えや演奏性を考慮し1サイズ小さくなっています。



ネックを取り外した所です。ジョイント部はやはりしっかり隙間なくはまる印象です。
また、22フレット仕様のため、指板が延長されています。
本モデルはパーフェロー指板仕様なのですが、ネック裏に所謂スカンク・ストライプ(本来トラスロッドを仕込んだ後に蓋の役割をする濃い茶色部分の木材)がある点に注目です。
ネック材のジョイント部の真裏部分に円柱状の金属パーツが埋め込まれています(スクワイヤの場合は同じ個所に木ダボが埋め込まれています)。70s系のマイクロティルト機構入りのモデル等、他モデルとネックを共用できるよう生産効率を考慮しての仕様でしょうか?



キャビティ内の様子です。ネックジョイント部もそうなのですが、第一印象としては「ちょい前のAmerican Standardそっくり」!お値段を考えると驚くほど本格的な作りと言えます。
ポットは安心と信頼のCTS製。導電塗料もしっかり塗られており、その塗り方や配線の引き回し方もスクワイヤのものと比べると明らかに丁寧です。
一方でやはり生産効率を考慮し、ピックアップキャビティはHSHパターンとなっている点にも注目です。
サウンドもスクワイヤと比較すると明らかに「フェンダーのストラトらしいトーン」です。キレが良いながらも独特の甘みを感じるハーフトーンのサウンドや、チャキチャキと軽快なリアのサウンド等など、「本物のフェンダートーンに少しだけエッジを加えた」という触れ込みのこのシリーズですが、まさにその印象です。
…ではこれ以上高価なモデルだと、何が違うのか!?
「Fender / 2017 Made in Japan Traditional 60s Stratocaster」 製造地:日本

80年代のスタートからプロ・アマ問わず、多くのプレイヤーの愛器として活躍してきた日本製フェンダー。その最新シリーズのうちのひとつ、トラディショナル・シリーズの1本。「日本製らしくしっかりした作り」とよく言われますが、果たして実際のところはどうなのか?順番に見てみましょう!


ネックの塗装はフルグロス(全面艶有り)。ヴィンテージライクなボタンペグと相まって高級感のある仕上げです。


まずトレモロブロックがゴツい!先程のPlayerシリーズのものと比べてもさらに大型化しています。



ネックを外した様子です。やはりジョイント部はしっかりしており、段差が無くプレーンな印象です。また、本器はローズウッド指板仕様ですが先程のPlayerシリーズとは異なりスカンク・ストライプ無しで、トラスロッドの調整はネックを外してドライバーで行う伝統的なタイプとなっています。



キャビティ内部やパーツ類です。まずキャビティ内の塗装の塗りこみ方。「塗り残しは許さん」と言わんばかりにしっかり塗られています。この辺りは如何にも国産ギターらしい作りと言えるでしょう。
一方で導電塗料は塗られておらず、アーシングも積極的には施されていないのは意外なポイントです。ポットやピックアップも一見すると先程のPlayerシリーズのものと比べると華奢な印象なのですが….
肝心のサウンドです。まずとにかく図太い!良くも悪くも先程のPlayerシリーズとは別物かつ好対照なキャラクターで、あの華奢なルックスのピックアップからは想像できないサウンドです。
ネックやブリッジ等外見のルックスはその名の通りトラディショナルなストラトなのですが、ピックアップの特性や、あのごついトレモロブロック等の影響もあるのか無いのか、実際は非常にがっちりした現代的な楽器で、今回の4本のストラトの中では一番異端と言えるかもしれません。
それでは最後にここから10万円程高価な本家USA製を見てみましょう。
果たして高価な故の違いはあるのか?
「Fender / American Professional Stratocaster」 製造地:アメリカ

長年続いたAmerican Standardシリーズからバトンタッチする形で登場した「アメプロ」の1本。「進化を遂げた真のオリジナルモデル」との触れ込みですが、果たしてその作りはどうなっているのか?


ヘッド周りです。パッと見はパーツや塗装等も含めPlayerシリーズと同じように見えるのですが細部を見ていくとグレードアップされている事がわかります。
ナットは牛骨で非常に滑らかな形状で仕上げられており、ストリングリテイナーも異なるパーツが使用されています。
ペグは一見同じに見えるのですが、実はスタガード仕様となっており、穴の位置が6弦から1弦にかけてなだらかに下降し、無駄な力がかからないような作りとなっています。


ブリッジ(2点止め)はPlayerシリーズと似ているのですが、スプリングの素材が異なっています。



ネックジョイント部。プレーンな日本製と比べると検品用のステッカーやサインがたくさんあるのが何ともアメリカンですが、形状はPlayerシリーズと比べてもかなり洗練されている印象です。マイクロティルト機構(ネック仕込角を調整できる機構)搭載なのも嬉しいポイントです。
また、ジョイントの木ネジ穴にはワックスが染み込ませてあり、木部を傷つけずスムーズにネジが締まるようになっています。今回の4モデルの中ではネックジョイントを外す際一番スムーズにネジの開け閉めができた感触です。



キャビティ内の様子です。先程の日本製とは対照的かつPlayerシリーズと同様に導電塗料がしっかり塗られ、塗り方もPlayerシリーズよりさらに丁寧な印象です。Playerシリーズ同様のHSHレイアウトにも対応したキャビティですが、Playerシリーズに確認できた大きなサイズの治具穴はこちらには開いていません。
ポットはCTS、さらにトレブルブリード(ボリュームを絞った際にも高音が潰れずしっかり出るように働く回路)用のパーツが組み込まれている点や、トーンキャパシタの配置がPlayerシリーズと異なる点、新開発のV-MODピックアップにも注目です。
このようにPlayerシリーズと共通点が多いアメプロですが、実際のサウンドは意外にも日本製に近く、かなり図太い印象です。しかし図太いながらもしっかりストラトらしいキレの良さを感じさせる辺りが本家らしい所以でしょうか?プレイアビリティ面も精度が高く、単純に弾きやすいです。
つくづくギターのサウンドはトータルバランスで決まるという事がわかります。
4本の価格が異なる「フェンダーのストラト」を見てきましたが、如何でしたでしょうか?
まとめると、
・安いけど抑えるべきポイントは外してない「Squier」
・この値段からすると信じられないくらい本格派でそれらしいサウンドの「Player Series」
・やっぱり日本製らしい作り、しかし意外に異端派の「Made in Japan Traditional Series」
・高いだけの理由はあった、正常進化系の本家「American Professional Series」
といった印象でしょうか?
個人的には特にPlayerシリーズのしっかりした作りとコストパフォーマンスの良さに改めて驚きました。
サウンドは日本製やアメプロと比べるとともすると弱々しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、お手頃なご予算で「わかりやすいフェンダーの音」「ストラトらしさ」を求めるプレイヤーの方には是非試して頂きたいモデルで、正に↓のプロモーション動画のイメージそのままのキャラクターです。
こちらの記事もおすすめ
初心者向け Fender / Squier おすすめギターと選ぶポイント
Fender Custom Shopとは?レギュラー品との違い
※当ページに掲載されている画像、文章等の転載、二次使用等はご遠慮下さい。また、当ページをご紹介いただく場合は、画像、動画等に直接リンクをしないようにお願いします。
※商品情報や価格、在庫などは投稿時点の情報です。既に在庫切れ、販売終了となっている場合がございます。現在の正しい状況については下記店舗へ直接お問い合わせください。また、当ページに掲載されている画像、文章等の転載、二次使用等はご遠慮下さい。