こちらの記事は以前あったサックス特集ページの再掲載です
2014-12-11リガチャーについて |

リガチャーとは、リードをマウスピースに固定する締め金の事をいいますが、
リガチャーの素材、止め方の違いなどによって、
音の芯、音色、吹奏感などに様々な影響を与えます。
楽器に付属で付いている真鍮のリガチャーが一般的で、
このサウンドを基本とすると、より柔らかく、幅のあるサウンドが出せるものとしては、
ロブナーが代表的です。
これは素材に合成布を使用し、リードをソフトに固定するタイプです。
音が硬すぎたり、息の抵抗がきつすぎるような時に、
このロブナーを使用すると、音が柔らかく、息の抵抗も楽になります。
ロブナーを使用しているケニーGを例に挙げると、
楽器はアメセルのマーク6ですが、サウンドはナチュラルで、
今のモデルに比べるとダークで渋めのサウンドを持っています。
マウスピースはデュコフで、
マウスピースの中では一番ブライトなトーンが出せるマウスピースですが、
ロブナーリガチャーを使用することにより、
キンキンした音の成分を押さえています。
リードはヘムケが多いようで中域が太い特長です。
ナチュラルでダークな楽器をマウスピースで明るくし、
リガチャーでソフトに仕上げると言う組み合わせになります。
もちろんケニーGの腕前とセンスがあって生まれるサウンドですが……。
この組み合わせで練習すればかなり近づきます。
上の例とは逆に、音が柔らかすぎる、開きすぎている、
コシがほしい、という場合に使用されるリガチャーの代表が、
ハリソンハーツです。
真鍮製で金メッキが施され、
リードを押さえる接触部分が厚くなっており、
ガッチリとマウスピースに固定するタイプです。
このため、芯のはっきりしたソリッドなサウンドが得られます。
使用例としては、
デュコフ・マウスピースとの組み合わせが最も多く見られます。
デヴィッド・サンボーンを例に挙げると、
まず、楽器はアメセルのマーク6のシリアル番号が14万番台を愛用しているようです。
この14万番台のアメセルのアルトはサウンドにエッジがある楽器が多く、
輪郭のはっきりした音が出ます。
マウスピースはデュコフで、ブライトでソリッドな要素を加味し、
リードはラボーズが多いようです。
このリードはジャージーで多少泥臭さみたいな音の成分が含まれますが、
ハリソンハーツ・リガチャーで、サウンドにコシを与え、
音の飛び散り・開きを押さえてバランスをまとめています。
またリガチャーの取り付け位置をかなりネック寄りにセットして、
より強い抵抗感と鳴りを得られるセッティングにしているようです。
マウスピースは8番と言う開きの広いものを使用しています。
けっして教科書的とは言えないマウスピースのくわえかた(アンブシュア)といい、
奏法は非常に個性的ですが、
オーソドックスなセルマー・マウスピースと同じような吹き方でデュコフをコントロールしようとすると
音がキーッとひっくり返ってしまったり、
なかなかくせ者のマウスピースです。
デュコフで上手くコントロールしているプレイヤーが
サンボーンのようなアンブシュアに近いのはそのためなのでは….なんて思います。
そういえば伊東タケシ氏も楽器以外は同じセッティングです。
キャンディー・ダルファーもそう言えば…..。
とにかくデュコフはデュコフの持っている癖や特長を克服してこそ
真のデュコフ・サウンドが得られるのです。
リガチャーの取り付け方
上記の例のなかでも少し説明しましたが、
リガチャーの取り付け位置と締め加減によっても
サウンドのニュアンスが変わってきます。
取り付け位置をマウスピースの先端側にもっていくと、
おとなしく、こじんまりした感じのサウンドになってきます。
その逆でネック側に位置を変えていくとワイルドでラウドなサウンドになってきます。
リガチャーの締め加減はきつく締めれば、
サウンドも締まってくる反面、音の幅は狭くなります。
緩く締めると音はふくよかになる反面、輪郭がぼけてきます。
例えば土岐氏は、ハリンハーツを使用しサウンドに輪郭を付ける反面、
緩く締めることによってソフトさも出せるようなセッティングをおこなっているようです。
さて、リード、マウスピース、リガチャーと説明してきましたが、それぞれが奥深く、
それだけに、サウンドバリエーションは、
いろいろな組み合わせと工夫によって得られることがお分かりになったと思います。
何と言ってもいろいろ試してみるのが一番良いと思います。
でもある程度、腕前が伴っての話ですから、日々の練習も怠らないようにしましょう。