フロイドローズ等の「ロック式トレモロ搭載エレキギター」、初心者の方に薦めるのは有り!?無し!?

6月に入り、新入生・新生活をスタートさせた方も一旦落ち着いた感はある今日この頃ですが、まだまだ
「ギターを始めたい、最初の1本をどれにしようか迷っている!」
「これまで人から借りてるギターで練習してたけど、自分用をゲットしたい!」
「お手頃なギターで練習を続けていたが、せっかくなので1ランク上のギターに持ち替えたい!」

という方がいらっしゃるかとおもいます。

そんな方々にギターを薦める人からよく出るフレーズ、

「ああそのモデルはロック式トレモロだから止めた方がいいよー」
「初心者にはロック式トレモロが付いてるやつはあんまりお勧めできないねー」


これ、我々のような楽器店店員からも聞かれるフレーズなのではないでしょうか?

いやいやそもそもそんなに扱いにくい楽器なのか?
つまるところ何が理由でロック式トレモロは敬遠されるのか?

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今回は改めて「ロック式トレモロ搭載ギター」を考察し、果たして初心者に薦めるのは有りなのか無しなのか!?検証してみたいと思います。

まずトレモロアームについてです。
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トレモロアーム:ギターのブリッジ横に付いている棒のようなパーツで、これを動かすことにより音程を上げ下げし、所謂エレキギターらしい「ギュワーン」というサウンドを出したり、ビブラートをかける事ができます。
全てのエレキギターに付いているものではなく、レスポールやテレキャスター等非搭載のモデルもあります。
しかしながらトレモロアームを使用するとチューニングが狂いやすく、この問題を解決するために1970年代後半に登場したのがフロイドローズに代表される「ロック式トレモロユニット」です。


それでは、ロック式トレモロ搭載ギターについて、同じくトレモロアームを搭載しており、それでいて初心者の方にとっても定番モデルでありお薦めされる機会も多い「Stratocaster(ストラト)」と比較してみましょう。
↓一般的なストラト
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↓ロック式トレモロ搭載機の例
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まず、同じトレモロアームを搭載しているギターとして共通する面倒なポイントをまとめてみます。

【ストラトと共通するであろう面倒くさいポイント】
●弦が切れるとチューニングが狂う
トレモロアームが付いている多くのギターの宿命です。
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こちらはトレモロユニット付のギターの構造を凄く簡単に描いた図です。この手のギターは「弦の張力」と「ボディ裏のスプリングの引っ張る力」で綱引きのようにバランスを取りながら弦が張られています。1本でも弦が切れるとこのバランスが狂ってしまうため、全ての弦のチューニングが一気に狂ってしまいます。
トレモロユニットをボディにべた付けする(=アームアップできないようにする)セッティングにしたり、後述のトレモロのタイプの違いにより、ある程度狂いの程度を抑える事はできますが、基本的にはストラトにもロック式トレモロ搭載ギターにも共通するウィークポイントです。

●チューニング(調弦)や弦のゲージ(太さ)を変更する際面倒くさい(同時にトレモロのフローティング(浮き)量等を再調整しなくてはならない)
チューニング変更による弦の張力の変化や弦の太さの変更によっても、上記の弦とスプリングのバランス関係が変化しますので、基本的にはボディ裏のスプリングの張りの強さを調整したりといったセットアップ変更が必要になります。



次に、ロック式トレモロ搭載機特有の面倒なポイントを挙げてみます。

【ストラトに比べると面倒くさいポイント】
●弦交換がやや面倒
ロック式トレモロはその名の通りナット側とブリッジ側の両端で弦をロックする事でチューニングを安定させています。
弦交換の際はその2箇所のロックを解除し弦を外し、新しい弦を張った後はやはり2箇所でロックさせなければいけません。
対してストラトは弦交換の際はボディ裏のトレモロ・ブロックの穴から弦を通し、ペグに巻きつけるだけ。手軽さという面ではストラトに軍配が上がります。
しかしながらロックさせると言っても、作業としては六角レンチでネジを締めるだけではあります。この手間を面倒くさいと取るか、チューニングを安定させるためのプロセスと取るかは人それぞれではありますが・・・。

●調整用工具(六角レンチ)を持ち歩かなければならない
上記の作業の為、ロック式トレモロ搭載ギターの弦交換等の作業において、六角レンチは必須アイテムです。弦を交換しないまでも、レギュラーチューニング→半音下げ等大きく音程を変更する際にも同様にロックを解除しなくてはならない為、ギターを弾く際には常に持ち歩いていた方が安全でしょう。
ただ、サイズ的には指でつまめる程度の小さい工具の為、持ち歩く事に対してはそれ程ストレスを感じる方はいらっしゃらないかと思います。モデルによっては、レンチを取り付けておくパーツがヘッド裏に付いている場合もあります。



それでは、逆にこういった面倒くさいポイントのあるユニットを搭載しているがためのメリットも同時に見てみましょう。

【ロック式トレモロユニットならではのメリットとなるポイント】
●派手なアーミング等色々な奏法が可能
何と言ってもこれです。エレキギターならではの「ギュワーン!」「ギャイーン!」というド派手なアーミングのサウンド、やりたくてもレスポールのようなトレモロ非搭載のギターにはできない芸当です。
アームの可動域が広く、かつチューニングも安定しているため、ストラトでは行うのにやや抵抗があるような派手な奏法も臆することなくガンガンできます。
単純に楽器としての表現の幅が広がるというのが面白く楽しめる点ですね。

●弦をロックするためチューニングが安定している
正しくセットアップした状態のロック式トレモロユニットは、本当にチューニングが安定しています。
ナットとブリッジ部分で弦をロックする構造の為、前述の派手なアーミングはもちろん、アームを使わない場合であっても、チョーキングやビブラート等のプレイを行ってもチューニングが狂いにくくなっているのはありがたいポイントです。

●ファインチューナーを使ってシビアにチューニングが可能
特にヴィンテージタイプのペグを搭載したギターの場合、ちょっとペグを回しただけで音程が高くなりすぎて、さらにそれをもう一度戻して・・・という事を繰り返し、中々チューニングが合わせづらいという場面を経験した方もいらっしゃるかもしれません。
ロック式トレモロユニットには各弦ごとにファインチューナーというものが搭載されており、大まかに調弦して弦をロックした後の細かい調弦(微調整)はこのファインチューナーで行います。大きなチューニング変更等は面倒くさい性質がありますが、細かい調弦の微調整等は、むしろロック式トレモロの方がやりやすいのではないでしょうか?
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簡単にまとめてみましたが如何でしょうか?
ロック式特有の手間となるポイントはありますが、率直に言って多くの面倒くさいポイントやデメリットはストラトと共通している事が分かります。
ストラトがあれ程「初心者にお薦めの王道モデル」としての地位を築いており、実際に最初の1本として選ばれる方が多い楽器ですので、ロック式トレモロ搭載モデルであっても実はそれ程初心者の方にとって扱いにくい楽器ではないと言えます。
ストラトにも言える事なのですが、要は「正しい使い方」を分かっていれば、全く怖い楽器ではないのです。


さらに、一言にロック式トレモロといっても、実に色々なタイプが存在します。
もちろんタイプによって得意分野やメリット・デメリット、前述の「正しい使い方」が異なるため、今回は簡単に3種類に大別し紹介させて頂きます。

タイプ1:
「オーソドックスなフロイドローズタイプ」

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本家フロイドローズ等、一般的なロック式トレモロユニットです。
ストラトに付いているシンクロナイズド・トレモロと比べてもアームの可動域が広く、よりダイナミックかつ派手なアーミングが可能になっています。
アームを使用しない場合でも、前述の通り弦をナットとブリッジ部分の2箇所で締め付けロックしている設計によりチューニングが非常に狂いにくくなっており、チョーキングや激しいピッキングを行ってもチューニングが安定している点も強みです。
逆にデメリットとしては、お伝えしてきた通り弦をロックしている構造であるが故の手間がかかる点に加え、フローティング状態(ブリッジが浮いており、弦の張力とボディ裏のスプリングの張力でバランスを取っている状態)でしか使用できない為、演奏中にブリッジに強く手が触れてしまうとそのはずみに音程が変化したり・・・といった現象が起こる場合があるという点でしょうか。しかしこの辺りは通常の使用においてはそれ程気にならないかと思います。プレイヤーの「慣れ」で解決できるポイントでもあります。
また、サウンドに関してですが、トレモロユニット=ブリッジが直接ボディに接しない構造の為、弾いた際の「ボディの生鳴り感」はそれ程無く、独特の金属的な鳴りになる傾向があります。この辺りはデメリットというよりは好みにもよるポイントなので一概にどちらが良い/悪いとは言い切れない所でもあります。

「タイプ1」搭載の例
Washburn / N24 Alder Natural Satin
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Schecter / Banshee-6 FR Extreme
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タイプ2:
「所謂EVHタイプ」

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ギターヒーロー、エディ・ヴァン・ヘイレンが使用してきた愛器に搭載されていたトレモロ・ユニットの仕様に準じたものです。
ぱっと見はタイプ1と変わらないように見えるのですが、ボディエンド側から見ると違いが分かります。
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ボディエンド側から見える箇所に、タイプ1はザグリ加工がある(深く段差になっている箇所がある)のに対し、タイプ2は加工が無く、ボディに段差が無いのがわかります。
このタイプのトレモロユニットは、ボディに接するようべた付でセッティングするのがセオリー。つまり、アームアップ(音程を上げる方向へのアーミング)ができない構造です(あえてフローティングさせることもできますが・・・)。
その為、タイプ1と比べるとアームの可動域は狭く、表現の幅では一歩譲る事になるのですが、代わりにユニットが宙ぶらりんになっていないため、演奏中に手が当たった際に音程が動いたり、1弦をチョーキングした際に6弦側がその反動で音程が下がる・・・といった現象は起こりにくくなっています。チューニングもタイプ1よりはやりやすいのではないでしょうか?
音質的にもブリッジとボディが接している為、タイプ1とは対照的にボディ鳴りが強調され、かっちりしたサウンドになりやすい傾向があります。

「タイプ2」搭載の例
Sterling by MUSIC MAN / SUB Series AX4
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EVH / Wolfgang USA Ebony Fingerboard Stealth Gray
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タイプ3:
「Ibanezタイプ(Edge-Zero系)」

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国産ブランドの雄、アイバニーズが開発した独自のロック式トレモロシステム。
こちらも外見上はタイプ1と似ており、さらにボディエンド側にはザグリ加工があるため、タイプ1同様アームアップ可能でアームの可動域が広いタイプです。
しかしながらボディ裏のパネルを開けて内部を見てみると、タイプ1やタイプ2とは異質である事が見てとれます。
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*参考までに、こちらがタイプ1の内部です。
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「ゼロポイント・システム」と名付けられたこの機構。
トレモロユニットを基準となる位置(ゼロポイント)に保とうとする強力なバネとストップ・バーが仕込んであり、アームの操作以外でブリッジが極力動かない+ブリッジが動いた場合もバネの力でゼロポイントにスムーズに戻るような設計になっています。
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これにより、「タイプ1」のようにアームアップも可能で可動域が広いながらも、演奏中に手が当たった際に音程が動いたり、1弦をチョーキングした際に6弦側がその反動で音程が下がる・・・といった現象は起こりにくくなっています。やはりチューニングも合わせやすく、ドロップD程度のチューニング変更にもある程度対応できます。
基準となるゼロポイント位置の変更・調整(=スプリングの張りの強さの調整)は工具いらずでダイヤルを回すだけという親切設計なのもありがたいポイントです。調整が難しいイメージのあるロック式トレモロユニットですがこれなら初心者の方でも抵抗なく扱えそうですね。

一方、デメリットも存在し、どうしてもトレモロ自体がゼロポイントに戻ろうとする力が強く働くため、アーミングのスムーズさはタイプ1に1歩譲る印象です。また、その性質上クリケット奏法(アームやブリッジを軽く叩いたりはじいたりして非常に細かいビブラートをかける奏法)が難しい一面もあり、表現の自在さ・ダイナミックさという点ではやはりタイプ1のような王道のフロイドローズタイプが優勢でしょうか?

「タイプ3」搭載の例
Ibanez / Premium Series RG1070PBZ
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*尚、Ibanezはトレモロ非搭載モデルも多くラインナップしています。
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まとめると、
・慣れるまで手間はかかるが表現の自由さでは他の追従を許さない「タイプ1=王道のフロイドローズタイプ」
・タイプ1より扱いやすいが奏法や表現力等「できること」に制限がかかる「タイプ2=EVH風」
・タイプ1と2の良い所取りのハイブリッドな「タイプ3=Ibanez独自のユニット」

といった特徴ですね。


お伝えしてきたように、ロック式トレモロ搭載ギターは決して扱いづらい楽器ではありません。正しい使い方を知った上で演奏すれば、その表現力の高さとチューニングの安定度で非常に心強い味方となってくれるでしょう。

不安があったり、「正しい使い方」が分からない場合等あれば、お気軽にイシバシ楽器名古屋栄店でお尋ね下さい。
是非これぞという1本に出会えるよう、お手伝いさせて頂きます。


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