歴史を感じるヴィンテージサックス
2018-12-03皆さん、こんにちは。
管楽器担当の川口です。
本日ご紹介するのはこちらの商品です。

H.SELMER A.Sax 「Cigar Cutter」
モデル名になっているシガーカッターとは葉巻の吸い口側をカットするためのものです。
葉巻は吸い口の部分が閉じられて販売されているため、
喫煙時には吸い口をカットする必要があります。
オクターブレバーの構造がそのシガーカッターに似ていることから、
このモデル名となりました。

「Cigar Cutter」は1930年から1933年まで製造されていたモデルで、
こちらは1931年製造のものになります。

セルマーのヴィンテージといえば「Mark VI」や「Mark VII」が有名ですが、
こちらも生産本数が約6000本と非常に貴重な楽器です。
いくつか特徴的な構造をご紹介します。
LowBキイやLowB♭キイは奏者から見てベルの左側になり、
現代楽器とは逆方向になります。
キイガードの形も独特ですね。

セルマーは「Cigar Cutter」より後継のモデルである「Balanced Action」より、
ベルの右側にキイを設置するようになりました。
サムレストやサイドキイ、テーブルキイなども現代楽器とは異なっており、
非常にシンプルな構造をしています。

サムレスト周辺

サイドキイ周辺

テーブルキイ周辺
テーブルキイは距離がある上に、押す力も必要なので操作には慣れが必要です。
こういった所はやはり現代楽器はよく改良されているのだとわかります。

実際に構えてみても距離を感じました。
押す際にもやや力をかける必要があります。
(参考までに私の手長はおよそ19センチです)
右手の主鍵についても違いがあります。
中古の「Super Action 80 SerieIII」と比較してみました。

向かって左「Cigar Cutter」、右「Super Action 80 SerieIII」
まずは「Cigar Cutter」を見てみましょう。

こちらは左手の主鍵と右手の主鍵が一直線に配置されています。
続いて「Super Action 80 SerieIII」です。

右手の主鍵がサイドキイの側に近付いています。
細かい違いではありますが、こういった部分も時代を経て改良された部分です。
E♭キイやLowCキイの形状や配置も違っており、
右手の操作にも慣れが必要です。

操作には慣れが必要でしたが、音程の面でもやはり現代楽器に比べると、
癖のある部分があります。こちらも慣れが必要です。
改めて比較してみるとやはり非常に「Cigar Cutter」はシンプルで、
現代楽器のような豪華さや派手さはないものの、
時を経た重みといいますか、趣のようなものがあります。
発売されたころはこの楽器も美しい外観で、多くの注目を浴びたのでしょう。
およそ製造から90年という時間がまた違った魅力を与えたと考えると、
感慨深いものがあります。
ヴィンテージならではの柔らかでナチュラルな音色を楽しめる逸品です。
また貴重な楽器でもありますので、コレクションとしてもいかがでしょうか。
商品ページはこちら
・H.SELMER A.Sax 「Cigar Cutter」
・H.SELMER A.Sax 「Super Action 80 SerieIII」