1967年製と1969年製のD-28を比べてみましょう!

1969年製D-28(左)と1967年製D-28(右)

Harvest Guitarsの白井です。今回は1960年代のMartin D-28二本をご紹介したいと思います。

D-28と言えばアコースティック・ギターを代表する名器。ここで取り上げるのは1967年製(シリアル・ナンバー225510)と1969年製(同245610)の物です。いずれもサイド&バックにブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)が使用されています。近年、同じタイミングに60年代のD-28が2本並ぶことは滅多にございません。製造年度は2年しか変わらないのですが、キャラクターはずいぶんと異なります。良い機会ですので、比較しながらご紹介してまいりましょう。

S/N225510(1967年)
S/N245610(1969年)

外観上の相違はさほどありませんが、構造面で大きく違うポイントが二箇所あります。
ひとつはネックの反りを抑えるロッドです。1967年の途中までTバー・ロッドと呼ばれる断面がT時をしたロッドを採用されていましたが、その後1985年までスクエア・ロッドと呼ばれる四角い断面で中が空洞のロッドが採用されました。どちらもアジャスト機能はありません。今回入荷した1967年製のD-28はTバー期の物です。1969年製の方はスクエアとなります。

Tバー・ロッドの断面のイメージ(左)とスクエア・ロッドの断面のイメージ(右)

もうひとつはブリッジ・プレートです。1967年当時は小型のメイプルのブリッジ・プレートでしたが、1968年に材がローズウッドに変更され、1969年に大型化されます。

S/N225510(1967年)のブリッジ・プレート。小型のメイプルです。弦のボール・エンドが当たる部分が劣化したため補修してあるのが分かります。
S/N245610(1969年)のブリッジ・プレート。大型のローズウッドです。

その他のポイントも比べていきましょう。
まずヘッドストックから。
下の二つの画像を見比べていただくと分かる通り、1967年製より1969年製の方が角の丸みが大きいです。ヘッドストックの丸みは治具の劣化によるものと言われておりますが、この二本のギターに同じ治具が使用されたかどうかは不明です。使用した治具の個体差によるものかもしれません。
なおナット幅の実測値は、1967年製は約43mm、1969年製は約42mmでした。

S/N225510(1967年)の個体のヘッドストック
S/N245610(1969年)の個体のヘッドストック

次にペグを見てみましょう。どちらもGrover 102が使用されていますが、筐体の裏のPAT PEND USAの刻印が異なります。1967年製の方が薄く、1969年製の方がはっきりとしています。

S/N225510(1967年)のGrover 102。PAT PEND USAの文字が薄く見えづらいです。
S/N245610(1969年)の個体のGrover 102。PAT PEND USAの文字がはっきりしています。

次にサイドとバックのハカランダの木目を比較してみましょう。

S/N225510(1967年)のバック。いかにもブラジリアン・ローズウッドらしいコントラストがはっきりとした縞の出方です。
S/N245610(1969年)のバック。ボディ中央の色が濃く、縞のコントラストは淡めです。なおセンターのストリップのデザインはどちらもチェッカーと呼ばれるタイプです。
S/N225510(1967年)のサイド。板目ですが、バック同樣縞ははっきりしています。
S/N245610(1969年)のサイド。比較的きめ細かい縦縞がでています。

木目のキャラクターの違いは年式による差ではなく、単純な個体差と言えるでしょう。しかしながら、ロッド、ブリッジ・プレートの構造の違いは特定の年代特有の特徴で、しかも鳴り方に大きく影響を与えるポイントです。実際、S/N225510(1967年)はレスポンスが早く明るいトーンですが、S/N245610(1969年)は粘りと重厚感があります。いずれもノン・スキャロップド、ノン・フォワード・シフトのブレーシングで、サイド&バック以外の材も同一です。この音色の違いはなかなか興味深いものがあります。

どちらも魅力的なギターでございます。高価ではございますが、これぞまさに一生物。お近くにお住まいであれば、弾き比べてその違いを実感いただければと存じます。
S/N225510(1967年)の商品ページはこちら
S/N245610(1969年)の商品ページはこちら

<投稿者プロフィール>
白井英一郎:1960年生まれ。吉田拓郎を聴いてギターを始め、間もなくイーグルスなどのアメリカンロックに傾倒。アコースティック&エレキギターのほかルーツ系の楽器をも弾くマルチプレイヤー。現役の演奏家であり、音楽&楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代の音楽とファッションをこよなく愛し、音楽のあるスローライフを実践するロハスピープル。入門者からベテランの方まで、お客様のライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。2020年11月に定年を迎え、現在は嘱託社員として勤務。

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