どうも皆様こんにちは!
イシバシ楽器 御茶ノ水本店 PRSフロア担当 フクダです!
今回はPaul Reed Smithが誇る定番モデル「Custom 24」の歴史について深堀りしていこうかと思います!
第1回目はバードインレイをフィーチャーしましたが、第2回目としてチューナーを深堀りしていこうかと思います!
ぜひ最後までご覧くださいませ!

1985~96年 ウィングロック・チューナー



1985年にポール・リード・スミスとハードウェア担当のエリック・プリチャードによって設計された独自のロッキング・チューナーが搭載されています。このチューナーは、画期的なウィングロック機構を採用しており、弦の交換を飛躍的に簡単かつ迅速にする革新的な設計となっています。
チューナーのノブを回すだけで弦が確実にロックされるため、従来のように弦をストリングポストに何重にも巻き付ける必要がなく、そのため、弦同士の摩擦によるチューニングの狂いを最小限に抑えることができます。
また、弦の交換時にはウィング部分(爪の部分)を回すだけで簡単に弦を取り外すことができ、素早い弦交換が可能です。
このウィングロック・チューナーは、ドイツのシャーラー社によって製造されており、耐久性と信頼性にも優れています。
1996~2001年 ウィングロック・チューナー 2nd Ver (Phase I Locking Tuner)



初代のモデルからさらなる改良が加えられ、軽量化が図られたバージョンとなっています。
弦をロックする基本構造は初代のデザインを継承しつつ、ギヤ部分をコンパクトに設計することで、全体の重量を削減。
これにより、ヘッド部分の重量バランスが向上し、演奏時の取り回しがより快適になっています。軽量化を実現しながらも、ロック機構の精度や耐久性はそのまま維持されており、安定したチューニングとスムーズな弦交換を可能にしています。
2002年~2011年 Phase II Low Mass Locking Tuner



2002年頃より採用されている「Phase II Low Mass Locking Tuner」は、従来のPhase Iモデルからさらに改良が施され、軽量化とチューニング精度の向上を実現したロッキング・チューナーです。
このモデルでは、ペグの回転がよりスムーズになり、細かな調整が容易になったことで、演奏時のストレスを軽減。特に繊細なチューニングが求められるプレイヤーにとって、大きなメリットとなります。
弦のロック機構は、ストリングポスト上部に配置されたスクリューを回すことで固定するシンプルな構造を採用。これにより、弦交換がより直感的かつ迅速に行えるようになり、ライブやスタジオワークでの利便性が向上しました。
また、ギヤ部分の設計は、先述のウィングロック・チューナー 2nd Verの構造を踏襲しており、高い精度と耐久性を維持しながら、さらなる軽量化を実現しました。



さらに、2010年頃より、弦振動の伝達効率を向上させるため、ストリングポスト部分にはメッキを施さず、ブラス(真鍮)を採用。この素材変更により、弦の振動がよりダイレクトに伝わるようになり、豊かで伸びのあるサスティンを実現しました。
ブラスは、その質量と共鳴特性により、倍音成分を損なうことなく自然な響きを引き出す特性を持っています。そのため、クリアで輪郭のはっきりしたトーンが得られ、特に高音域の煌びやかさや、低音域の芯の太さが際立ちます。
この改良は、ロッキング・チューナーの利便性を維持しながら、トーン面でも妥協しない設計思想の表れであり、プレイヤーの演奏表現の幅を広げる重要な要素となっています。
2011年~2020年 Phase III Locking Tuner



2011年頃より採用された「Phase III Locking Tuner」は、従来のPhase IIモデルをさらに進化させ、チューニングの精度、操作性、デザイン性のすべてにおいて改良が施されたロッキング・チューナーです。
Phase IIとの主な違いとして、ギア比がより精密になり、微細なチューニング調整が可能になりました。これにより、より滑らかで安定したチューニングが実現し、演奏中のピッチの狂いを最小限に抑えることができます。
さらに、軽量化とともに、美しいヴィンテージスタイルのデザインが採用され、クラシックな雰囲気を持ちながらもモダンで高級感のあるルックスに仕上げられています。ギターのヘッドストックとの調和を考慮したデザインにより、楽器全体のビジュアル的な完成度も向上しました。
Phase IIIでは、ギア部分が従来のクローズドタイプからオープン・ギア構造に変更されました。これにより、より滑らかな回転を実現しつつ、メンテナンス性も向上。オープン・ギアならではのクラシックな雰囲気も加わり、見た目の美しさにも寄与しています。
また、ストリングポスト部分には、Phase IIに引き続きメッキを施さず、ブラス(真鍮)を採用。ブラス特有の豊かな倍音成分とサスティンを活かし、クリアでレスポンスの良いトーンを提供します。
2020年~ Phase III Locking “Tweaked” Tuner



「Phase III Locking “Tweaked” Tuner」は、当初McCarty 594に搭載され、高い評価を得たモデルであり、従来のPhase IIIをさらに改良し、より優れたパフォーマンスを実現しています。
この最新モデルでは、チューナーのギアとウォーム・ギアの両方を引っ張ることで、ウォーム・ギアの滑りを防止する新たなセット・スクリューを追加。これにより、従来のロッキング・チューナーで起こりがちだった弦振動のロスを最小限に抑え、可能な限り振動をボディへ伝達することが可能になりました。結果として、ギター全体の共鳴が向上し、より豊かでダイナミックなトーンが得られます。
(このセット・スクリューは極めて精密な調整が求められるため、PRSファクトリー以外での調整は絶対に行わないようにしてください。 独自の判断で調整を行った場合、チューナー全体の機能が損なわれる可能性があるため、慎重な取り扱いが推奨されます。)



そして2024年にはペグボタンのペグ・ボタンのアップデートが行われ、12フレットのバード・インレイに用いられているクーパーズホークを模したデザインのウイング・ペグを採用。
このウイング・ペグは1982年当時にポールがデザインしていたものを元に再現され、旧仕様のメタルペグに比べて軽量化されたことにより、中音域やサスティーンの減衰を抑え、より長いロングトーンと更なる音楽的なサウンドを実現します。
いかがでしたでしょうか。
様々な時代と共に歩んできたチューナーについてまとめましたが、参考になれば幸いでございます。
これからも不定期更新ではありますが、Custom 24の歴史を深堀りしていく予定でございます。
それではまた次回お会いしましょう!
