
かつて“ジャズ・ギターの先駆者”として知られるニック・ルーカスの名を冠したモデルが、Gibson Custom Shopの最高峰、Murphy Labによって現代に甦りました。こちらは当社スタッフが直接GIBSON MONTANAファクトリーに訪問し現地で買い付けた個体です。

ニック・ルーカスは1920年代において、世界で最も注目を集めたアメリカ人エンターテイナーの一人でした。「囁くように歌う吟遊詩人(クルーニング・トルバドゥール)」という愛称で親しまれ、劇場を巡るツアーではソロパフォーマンスのみならず、ビッグバンドと共にジャズ演奏も行いました。ヨーロッパの王族向けに特別公演を行った経験もあり、ギターソロを録音・演奏した草分け的存在のひとりでもあります。また、ラジオを通じてギターを演奏した最初期のスターの一人としても知られており、彼の演奏は後のギタリストらに多大な影響を与えました。ニック・ルーカスの芸術性は、ギターがボーカルの伴奏に最適なだけでなく、独奏にも適した楽器であるという認識を広めることに大きく貢献したことが、現在高い評価を受けています。

当時ギブソン社の営業部長であったフランク・キャンベルはルーカスに接触し、同社のギターを使用してもらうよう働きかけました。ルーカスは、自身の細かい要望に応じた仕様でギターが作られるならば使用すると答え、それに対してギブソンは即座に了承します。こうして1926年、「Nick Lucas Special」が誕生しました。これはギブソンが初めて手がけたアーティスト・シグネチャーモデルでもあります。ルーカスが特にこだわった仕様のひとつは、コンパクトなボディサイズながらも、低音の鳴りを強化するためにボディの深さを増すというものでした。この「Nick Lucas Special」はその後、使用される木材やブリッジ、細部の仕様にさまざまなバリエーションが加えられましたが、どのモデルにも共通していたのが、深胴のボディ構造です。このユニークなボディ設計が、小ぶりなサイズながらも豊かで奥行きのある、複雑で印象的な音色を生み出す最大の要因となっていたのです。


Murphy Labによる”Light Aged”フィニッシュ。時間とともに自然に生じたかのようなウェザーチェックや塗装の風合いが、まるで90年以上前から存在するかのようなリアルなヴィンテージ感を演出します。色合いは、他に類を見ない”Argentine Grey”。独特の色味が、クラシカルでありながらどこかモダンな表情を与えています。さらに、ショートスケールのネックとヴィンテージスタイルのVシェイプにより、プレイアビリティも抜群。フィンガースタイルからジャズ、ブルースまで、プレイヤーの表現を余すところなく引き出します。








エンドピンのネジに至るまでサビ加工が施されています。ヘッドのロゴはヴィンテージスタイルのTHE GIBSONの筆記体ロゴ。そしてヘッド裏にシリアルナンバーの刻印はなく、ラベルとネックブロックに印字してあります。ラベルが当時と同じデザインになっている所もエモポイントです。




ゴールドスパークルの装飾も初期のカスタムギターらしく、ゴージャスでオールドな雰囲気です。現在の感覚からするととても新鮮に映ります。Murphy Labの見事なヴィンテージ加工も相まって、見ているだけでインスピレーションが湧いてきます。

大変気持ち良い音がします。ネックの握り心地は太めで振動のフィーリングも良く、深胴のギターにありがちな低音がボンボンする感じも全くありません。低音の鳴りは強いですが、輪郭が非常にはっきりしています。1920年代に作られたギターのような特有の親しみやすいポップさもあり、可愛げのある何とも気持ちの良い音です。

ニック・ルーカス・スペシャルはGibson Custom Shopにとって、大きなストーリーを持つギターです。物作りの立場でもその喜びはひとしおだったことでしょう。この特別なギターを是非店頭でご確認ください。
【イシバシ楽器御茶ノ水ハーベストギターズ】
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【現地買付品】Gibson Custom / Murphy Lab Acoustic Collection 1929 Nick Lucas Special Light Aged Argentine Grey