【レジェンダリーな俺たち Vol.18】

当店に入荷したギターたちはどれも大切なNice My Friendsに変わりありません。
その中でもヴィンテージギターについては大半が文献や巷に溢れるネット情報などを頼りに日々知見を深める訳ですが、直接触れる事が出来るまたとない機会が時折降臨します。

Martin 000-18 War time 1944年製

本日はこちらのヴィンテージギターの紹介を中心に、Martinの黄金期と言われるギターたちの素晴らしさ、またマホガニースペックの魅力に現在絶賛取り憑かれ中💦の担当者の独断をふんだんに交えてお送りします。

遡ればMartin社は1983年前後に創業150周年を記念して何パターンかのVitageシリーズをリリースしています。
それぞれモデル名末尾にVと付き、やはり人気のブラジリアン物から長年生産されていなかったD-21などの玄人モデルも復刻。
また、当時の日本国内代理店であった東海楽器リクエストのHD-28モデルなど、Vと付かなくてもかなりイイ線でヴィンテージスペックを踏襲したモデルも生まれました。
このHD-28は日本向けだっただけあり時折中古市場に出てきますね。
個人的にはこの時期に採用された透明度の高いアセテート製の赤味の強いピックガードは最強スペックだと感じています、、、

さて、これらが目指したものの大枠は何だったのか、ロングサドル、ヘリンボーン、Vシェイプネック、ハカランダの積極採用、、、
これらはひとえに第二次世界大戦以前(WWⅡ)のスペックへの回帰モデルと捉えられます。
90年代に入るとレギュラー化される以前のD-18GEに発しGolden Eraモデルを発表、その究極形態とも言えるD-28GEからOM-45GEまで幅をもたせたハイグレードモデルとしてシリーズ化されていきました。

しかし、コレクションとしては十二分に満足させるギターだったこのモデルたちも生粋のオールドファンからはやや敬遠される傾向にありました。
そこに台頭してきたのがプリウォーマーティン「サウンド」をひたむきに追い求めた新興勢力たちでした。
Collings、Santa Cruz、Bourgeois、、、もうすっかりお馴染みのこれらのブランドは今でも規模は拡大しつつも大量生産に傾倒せずHnad Craftへの拘りを貫き続けています。
(余談ですが、ここにTaylorは入りません。たしかに当時のムック本には新御三家としてノミネートされていましたが、当時から未来へ向かうスタンスは他とは全く異なるアプローチでした。また、Merrillなどのより少数精鋭ブランドは日本で広く認知されるのはもう少し後になります。)

これらのブランドはもちろん希少材やアバロンをふんだんに用いてハイクラスもラインナップとして存在しますが、多くのファンに支持されたのはオーソドックスな18や28スタイルであり、それらが紡ぎ出す「サウンド」でした。

一番親しみがある例としてはCollingsがよいでしょうか。
今では各社コストダウンではなくサウンド作りの為に積極的にトライアルするボルトオンネックの採用(直近ではYAMAHA FG9シリーズ)、ネックの総質量を正確にコントロールする為に挿入されているスティールバーなどは「あの頃のサウンド」を追求した代表的な一例です。
故Bill Collings曰く「強度を出すためだけならウチのギターに補強材なんて必要ないよ、サウンドを形成しているんだ」との事。

このように新たに支持されるようになった新興ブランドがプリウォー/ゴールデンエラ期の「サウンド」を求めたのに対し、本家Martinは外観から入ったところで遅れをとった感が否めず、これが他ブランドへのファンの流出に繋がったと考えます。

さて、そのような事態を指を咥えて傍観するだけの王者ではありません。
その後のマーケティング、試行錯誤を経て、遂にAuthenticシリーズの発表へ至るのでした。

ここでようやく近年Martinに懐疑的だった生粋のフリーク達をも唸らせ「なんだ、やればメッチャ出来るじゃんMartin!」となったのでした。
すると各ブランドの微妙な、ホントにビミョーなウィークポイントを議論するような機運も高まり「やはりボルトオンは音が硬すぎて長時間演奏時に耳につく」とか「洗練され過ぎている」とか、もはや褒めてるのか批判しているのか、まぁいつもそんな感じですが、、、なにはともあれ、そういう議論の輪にMartinも対等に入り込むようになったのは大変喜ばしいはこびだったと思います。


はい、これら全て前文で、まだ本題に入っていませんね、、、

で、じゃあ本家Martin自身が「本物」「正真正銘」と謳ってしまった(?)認めてしまった(www)その大元となるギターとは何なのか?と、そう思わずにはいられなくなる訳です。

それが今回ご紹介するような第二次世界大戦以前の奇跡的なギターたち、時として「Holy Grail」とも呼ばれる楽器になります。

「なぜ、過去に造れた物が今現在の技術を駆使してもいまだに作れないのか?」
これはもう、本当に永遠のテーマですね。

「当時のほうが超良質な木材を躊躇せずに贅沢に使えた」「何十年も使い続けられてエイジングが圧倒的に進んだ」「優れた職人が少数精鋭で小規模で作っていた」などなど、様々な推論、ある程度の根拠をもった仮説が立てられますが、各社トップグレードモデルや、ましてや世界に名だたる名ルシアーが一本作るのなら、これらの諸問題を十分クリア、カバーできるだろうと想像するのですが、そうでもない。
やはり「何か」が居る、ある、、だからプリウォーヴィンテージに向いていくのです。
理屈ではない、その「何か」は本当に一度手に触れると抜け出せなくなる魅力、いや魔力をもっています。

その中でもマホガニーにフォーカスします。
理由はいくつかありますが、大きなところでは「良質なローズウッド(もちろんEIRではなくBrazilian)ヴィンテージに出会える確率、手に取れる場所が極めて稀である事、仮にネットの現時点で販売されている個体たちを見ても年代ごとの系譜をまだ辛うじて追える事、今回一例として挙げた実機のように当店への入荷実績もある事から頭だけの知識でなく体感している事をお伝えできる事、があります。
評価についても年代を遡るほどに対等に扱われ、30年代後半までのものは18であろうが28であろうが、特に希少なDサイズのワールドスタンダードプライスは同等です。

そして何と言っても「マホガニーこそが真のマーチンサウンドである」という、よく言われるフレーズは、決してハカランダモデルを買えない者の戯言ではない、という事を近年レジェンダリーなギターたちに出逢えば出逢うほどに強く感じ取るようになっているからです。

偉そうな事を述べながらも筆者も本当にマホガニーの良いギターが欲しい!と思い始めたのはここ数年で、それまでは例に漏れず「いつかはハカランダを持ってこそ全てを語れる」と思い込んでいた一人です。
冷静に考えるとマホガニーが近年まで最も継続して使用されているギター材なのです。
ハカランダに関してはMartinとしては1969年前後を境にレギュラー使用が中止され、以降EIRに移行していきます。
EIRなんて使い出されてからまだ50年経ったくらいのヒヨッコなんですよ。
これくらい経てばMHかEIRかの議論が成り立っても然るべきかと思いますが、90年代にMHをこき下ろして「やっぱ28のほうが、、、」なんて言っていたとしたら非常にナンセンスに感じるのです。

まずプリウォーギター全般に言える事ですが、持った瞬間「軽っ!」という感触です。
大型小型関わらず、アコギの重量差なんてLP等に比べれば極々僅かな差の筈ですが、それでも明らかに軽い!と感じるウェイトです。
これは000以下だともうホントに空気を掴むようなウルトラライトです。

そして構えます。
鳴らします。

瞬発力が半端ないです!

こんなに軽いギターからこんなにジューシーなサウンドが一気に飛び出すのか!と驚かされます。

もう、ただただ笑うしか無い、というのが本音、本当にこういう伝説的なギターを一度弾くと戻れなくなりますから、安易な気持ちで触るのは止めましょうwww(いや、ぜひ沼って下さい)

今回の44年製は戦中モデルという事もありペグブッシュがありません。
欠損しているのではなく初めから無いのです。
トラスロッドはスティールではなく強度を保てる代用としてエボニー材が使用されており、結果後世にこの年代のサウンドキャラクターを決定付ける要素として認識されています。
ペグ本体が金属である事、更には弦自体が金属である事は絶対に必要な部分であり、これ以外は本当に削ぎ落としながらも名器が次々に生み出されていきます。
本来必要なものであるから適切なパーツ、木材が存在するのですが、各ブランドが本当に涙ぐましい創意工夫を繰り返しながら大禍の中をくぐり抜けてきた、その渦中でも製造数こそ激減するものの決して歩みを止めなかった、その姿勢には尊敬なんて言葉では軽過ぎるほどの素晴らしさがあります。

ちょっと前半に力点を置き過ぎて肝心の本ギターについて、マホガニーついての考察はいささか淡白になりました。
これについては今後も折をみては触れていく内容になると思います。

さぁ、2023-2024もまだまだ若輩者としてはマホガニー探しの旅、引き続き駆け出します!!!

過去のレジェンダリーはこちら

店舗情報

イシバシ楽器心斎橋店

SHINSAIBASHI STORE

〒542-0086

大阪府大阪市中央区西心斎橋1-9-13 AH御堂清水町ビル 1F / 2F

TEL:06-6241-1484

営業時間:12:00 ~ 20:00

アクセス:【市営地下鉄】心斎橋駅 出口7 [心斎橋OPA出口] (徒歩3分)

SNS:
Twitter
Facebook
Instagram