懐かしのキーボード達
《懐かしのキーボード/電気・電子ピアノ編》

Fender Rhodes 1970年代、電気ピアノ(ここでは電気ピアノと表現し、現在一般的に使われているエレ ピ=電子ピアノとは区別)のスタンダードと言えばフェンダー社のローズ・ピアノ(Rhodes Piano) でした。ローズ・ピアノにはスピーカーシステム別売のステージ・ピアノ (Stage Piano)と、スピーカーシステム付きのスーツケース・ピアノ (Suitcase Piano)がありました。価格は何度か変更があったように思いますが、 1975年のカタログではステージ・ピアノの73鍵で\414,000/88鍵で\498,000、スー ツケース・ピアノの73鍵で\640,000/88鍵で\725,000というかなりの価格でした。 Rhodesピアノは何度かマイナー・チャンジ されていますが、後年、上部のラウンドした蓋の部分が大幅に変更されました。 Rhodesピアノの上にシンセや他のキーボードを重ねる必要性から、ラウンドしていた トップ板はフラットになり、強度を持たせるために波状のデザインになっています。 それまでのバージョン(マーク・ワン(MARK-I))と区別するため、 マーク・ツウ(MARK-II) と呼ばれるようになりました。 フェンダー社以外にもウィリッツアー社、ホーナー社(Pianet-Tという機種)など からも電気ピアノが出ていました。当時、まだポピュラーミュージックの世界では、 ピアノといえば生ピアノが主流で、それらの電気ピアノは、ツアーなどが多いアメ リカのミュージシャン達の間で、持ち運びが困難であった生ピアノの代用的なニュ アンスとしての使われ方が殆どでした。後年、ジャズ、フュージョン系のミュージ シャン達が電気ピアノを使った優れた演奏を披露することにより、エレピ・サウン ドは独立した地位を確立して行ったように思います。(また彼らはテクノ以前の優 れたシンセサイザー・プレイヤーでもありました。)

Tone Generator さて当時の電気ピアノの話を少し。電気ピアノは全て発信源となる ハード的な音源(トーンジェネレータと呼んでいた) を持っています。 有名なフェンダーのRhodesピアノは、硬い針金状の金属バーが鍵盤の数だけあり、それをハンマー で叩くことにより震動を発生させていました。トーンジェネレータはその長さによ って音階が変わり、更にその先にからめられた細いスプリング状のものをハンマー に近づけたり遠くしたりして微調節をしていました。このトーンジェネレータが、 硬いがために時々折れてしまうんですね。それで付属品として何本かオマケに付い ていましたが、別売りパーツとしても発売されていました。ちょっと長めのものを 大胆にもペンチかニッパーでブツッと切ってしまい、後はスプリング状のもので音 程を調節します。この頃はトラブルは全て自分で処理するのが当たり前で、本番で 痛い目に遭いたくないベテランプレイヤー達は、必ずペンチ、ニッパーも持参して いたものです。震動するトーンジェネレータの先には音を拾うためのピックアップ が各音階分ずらりと並んでおり、ピックアップを遠ざけたり近付けたりする事によ って音量バランスを調整していました。またピックアップに対してトーンジェネレータの 角度を変えることに寄って、音質も微妙に変化しました。 フェンダーRhodesピアノの鍵盤アクション は生ピアノに近いもので、材質も木の鍵盤の表面にプラスティックが貼られていま した。当然タッチによる強弱表現に優れ、音質は金属的なコロコロした甘い音質で したが、強く弾いたときの割れた音とソフトタッチの甘い音質とがきれいに出力さ され、ダンパーペダルも使用出来たことから、当時のプレーヤー達から絶大な支持 を受けていました。現在の電子ピアノやシンセサイザーにプリセットされている 「エレピ」という音色は、このRhodesピアノの音色が基になっていると言って良い でしょう。

Clavinet D6 電気ピアノ変わった方式の電気ピアノでは、ホーナー社から出ていたクラビネットD6と云う機 種がありました。これは内部に張られたピアノ線(と言っても殆どギター弦)を硬 質ゴムでひっかく方式だったのですが、ギターの弦を指で強くはじいた時の様な独 特の響きを持っていました。アタックも強く歯切れも良かったことから、その特徴 を上手く使ったファンキーな音楽で良く使われていました。ホーナーからは上述のPianet-T と言う機種も出ていました。Pianet-Tは平板をゴムで吸い上げると言う独特の(変わった)方式で したが、その機能上、ダンパーが使えないと言うのが難点でした。 その後、上記の二つの機種を合体したものも発売されています。(機種名、価格等忘れてしまいました。)

ROLAND EP-30 この当時国内では、ローランドから2機種の電子発振式のピアノが出ていました。 タッチセンス無しのEP-10(\135,000)と、ケース一体型タッチセンス付きのEP-30 (\180,000)で、EP-30はプラスチック鍵盤でしたが、鍵盤のタッチの強弱で音量 が変わるタッチセンスという今では当たり前の機能も、当時としては非常に凄いこ とでした。ローランドは後(1980年頃)に、鍵盤のタッチを生ピアノに近づけたコ ンボ・ピアノMP-600(\195,000)を発売しました。

KORG PE-1000 コルグからは既にポリフォニック・アンサンブルと呼ばれるキーボードが2機種発 売されており、プリセット型でしたがピアノやオルガンの音が組み込まれていまし た。また、コルグ独特のシンセサイザーのVCFに相当する様なフィルターコントロ ールが付いており、幅広い音質の変化が可能でした。コルグの2機種はどちらもケ ース一体型で持ち運び可能だったのですが、軽い方のPE-1000(\256,000)でさえ 18kgくらいありましたから、電車で配達した際など大汗をかいたものです。上位 機種のPE-2000(\270,000)はさらに重かったのですが、当時のキーボード・プレ イヤー達は、手で運んでいらっしゃった方も多かったですから結構パワフルだった んですよね(PE-1000/2000に付きましては、コルグ編をご参照下さい)。 他にはヒルウッドというメーカーから何機種か出ていた様に記憶して いるのですが、手元に資料が無くうろ覚えです。

Columbia EP-61C 電気ピアノでは、日本コロムビアから金属版(平版だったと思う)を音源にしたRhodes 方式の電気ピアノELEPIAN CEP-6110(\190,000)が発売されています。詳細は不明ですが、 アンプ、スピーカー内蔵だった様です。その後CEP-6170、EP-601T、EP-61Cとモデルチェンジされ ています。鍵盤数が75鍵、プリアンプを装備したEP-7C(\285,000)も発売されました。 比較的音色がRhodesピアノに近かったのと、値段の安さ(それでもEP-601Tは61鍵 で27万/EP-61Cは185,000もしたのです)もあって人気機種となりました。

YAMAHA CP-80 ヤマハからは、電子的なピアノでしたが、鍵盤に木を使い、ピアノのタッチに近 かったCP-30が発売されました。この電子ピアノには当然タッチセンスが付いていました。 CP-30は\285,000という価格ながら、上記の様な性能の良さ、ケースの蓋の部分が スタンドになるなどのデザインの良さも相まって、やはり人気機種となりました。 CPシリーズはその後、打弦方式音の電気ピアノCP-70B(\660,000)とCP-80(\800, 000)へと受け継がれて行くことになります。CP-70B/80は殆どグランドピアノを小 さくした様なもので、鍵盤のタッチから音色まで生ピアノそのものでした。その構 造も画期的で、弦長を短くすることによりボディのコンパクト化を実現し、 更にグランドピアノに近いアクションを可能にしたのは、ヤマハの持つ長年のピアノ技 術の結晶だと思います。また、鍵盤部分と音源部分の切り離しが可能で、持ち運び を容易に出来る構造も画期的でした。CP-70B/80の生ピアノと同質の音色は、最新の サンプリング方式の電子ピアノが登場するまで、長い間世界中のミュージシャン御 用達となりました。
その頃、生ピアノの一方の雄であるカワイからも、KP-608とい う打弦式の電気ピアノが発売されます。価格も\350,000と安価で、ケース一体型で コンパクトな設計でしたが、ヤマハの上記の機種に比べ人気は今ひとつ(失礼!)だった様に 思います。

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