往年の人気ギター、グレン・キャンベルのシグネチャー・モデルをご紹介!

Harvest Guitarsの白井です。今回はオベーションのギターを紹介いたしましょう。アメリカの伝説的なミュージシャン、グレン・キャンベルのシグネチャー・モデル「1627」です。
実は私が人生で最初に購入したエレアコは、このグレン・キャンベル・モデルだったのです。そしてミュージシャンとして初めてギャラをいただく演奏で使用したギターでもありました。個人的に思い出深いギターです。

私がギターを始めた1970年代前半、日本ではオベーションを使用しているミュージシャンはほとんどいなかったと記憶しています。テレビ・ドラマ『パートリッジ・ファミリー』の中で、デイヴィッド・キャシディが弾いていた不思議な格好のギターが目に止まりました。それがオベーションでした。リラコードと呼ばれる樹脂で出来たラウンド・バックが視覚的にも斬新でした。
私自身がオベーションに強く興味を持つきっかけは、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドのジェフ・ハンナです。「コズミック・カウボーイ」のイントロの乾いたアコースティック・ギターの音色に惹かれました。発売になったばかりの彼らのアルバム『星条旗よ永遠なれ』(1974年)を購入したのですが、ジャケット写真を見るとジェフがオベーションを持っています。きっとあの乾いた音色はこのオベーションの音だろうと確信しました。
ほぼ同じ頃、グレン・キャンベルが歌うコカコーラのCMソング「カミング・ホーム」がテレビやラジオで流れていました。この曲も私のお気に入りでした。そしてグレンがオベーションの製品開発に寄与していたことを知るわけですが、NGDBのジェフ・ハンナとグレン・キャンベルこそが、中学生だった私に「オベーションのギターのイメージを刷り込んだ張本人」ということになります。学生時代にマーティンD-28を入手する私ですが、当時マーティンにピックアップを付ける考えがなかった私は、演奏活動を開始するにあたってエレアコの購入を決心。迷わずこのグレン・キャンベル・モデルを入手したのです。

ニッティ・グリッティ・ダート・バンドの『永遠の絆』。オベーションを弾いているのがジェフ・ハンナ。
「カミング・ホーム」シングル盤。私はこの曲でグレン・キャベルを知りました。

さて、一般的にグレン・キャンベル・モデルと呼ばれるこのギターですが、正式名称はグレン・キャンベル・アーティスト・バラディーアです。1968年にまずアコースティック・モデルの1127が登場。1971年にエレアコ・モデルの1627が追加されます。ちなみに、オベーションはエレアコを普及させた先駆者的存在ですが、初期の製品にはエレアコでない物も存在していたのです。
グレン・キャンベル・モデルにはシャロウ・ボウルと言う薄めの胴が採用されていました。当時のオベーションのスタンダード・モデルのひとつレジェンドにはディープ・ボウルが採用されており、グレン・キャンベル・モデルはそのシャロウ・ボウル・バージョンと言える製品でした。かつてはレジェンドとグレン・キャンベル・モデルがオベーションの代表選手だったのです。ちなみに、後年シャロウ・ボウルよりさらに薄いスーパー・シャロウ・ボウルが登場し、レジェンドなど多くの機種に採用されるようになりました。さらにアダマス同様のエポレット・ホールを持つエリートが登場し、次第に主流はそちらに移行します。残念ながらグレン・キャンベル・モデルは1990年に生産中止となりますが、2017年にリイシュー・モデル1771が発売されています。
グレン・キャンベル・モデルはディープ・ボウルのレジェンドような深いリバーブ感はありませんが、十分な生鳴りを感じさせながら、軽快さも持ち合わせています。グレンはカントリー・シンガー、エンターテイナーとして頭角を表す以前から、スタジオ・ミュージシャンとして活躍していました。伝説のレッキング・クルーの一員でもありました。長年のスタジオやステージでの経験がこのギターの設計に生かされていたのでしょう。またレジェンドやグレン・キャンベル・モデルなどのラウンド・サウンド・ホールの製品は、エリートのようなエポレット・ホールの製品と比較すると、中音域が豊かです。リード・ワークにも適しています。

リラコードを採用したボウル・バックがオベーションの一番の特徴。
インナー・ラベルにグレン・キャンベルのサインが印字されています。ヘッドストックにグレンのサイン入りのトラスロッド・カバーが付いた時期もありました。
イタリアのマンドリンにも似た独特のヘッド・ストック。ネックは5ピース構造で、シャーラー製ペグが採用されています。
往年の製品に採用されていたシンプルな二連のコントロール・ノブ。割れやすいのが難点。右のネジは電池ボックスを止める物。電池交換も少々厄介。

今回、画像でご紹介したグレン・キャンベル・モデルは現在販売中の1982年製の中古品です。二連のコントロール・ノブは割れやすかったのですが、残念ながら当個体もその例に漏れません(私の所有していたギターのノブも割れてしまいました)。しかしながら、トータルではこの当時の製品としては比較的良好な状態を維持しています。
指弾きの際のほどよいコンプレッション感、ピック弾きの際のダイナミック・レンジの広さを両立させています。無機質なようでしっかりと歌に寄り添ってくれるオベーションでしか出せないサウンドが、昔を知る世代には懐かしく、若い世代には新しく感じられるかもしれません。お勧めの一本です。

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<投稿者プロフィール>
白井英一郎:
1960年生まれ。吉田拓郎を聴いてギターを始め、間もなくイーグルスなどのアメリカンロックに傾倒。アコースティック&エレキ・ギターのほかルーツ系の楽器をも弾くマルチプレイヤー。現役の演奏家であり、音楽&楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代の音楽とファッションをこよなく愛し、音楽のあるスローライフを実践するロハスピープル。入門者からベテランの方まで、お客様のライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。2020年11月に定年を迎え、現在は嘱託社員として勤務。

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