アメリカンセルマー テナーサックス MARK6 1961年製モデルについて

アメリカンセルマー テナーサックス MARK6 1961年製モデルについて

2021-04-27 サックスの歴史の中で現在も絶大な支持を得ている名器MARK6(マークシックス)の中でも特に評価の高い楽器があり、アルトサックスでは14万番台のモデル(1966年前後)、そしてテナーでは9万番台(1960~61年頃)の楽器がそれにあたります。

全体の画像です。
現在のサックスもほぼこのマーク6をお手本として作られたものが多く均整のとれた美しい形状です。アメセルはhjghF#key無しが多く、この楽器もF#key無しモデルになります。
この楽器の管体重量は3203グラム、ネックは160グラムでシリーズ2モデルが3400グラム前後の楽器が多いので若干軽くなっています。




マーク6のネック形状です。このモデルから現在も引き継がれているオクターブkeyにSのマークが入るようになりました。



ネック正面に三角のプレートが貼ってありひまわりの花の中心の様な図柄のまわりにH.SELMER PARISの刻印が施されています。
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ネックジョイント部分裏側には楽器本体と同じシリアル番号が刻印されておりマッチングネックと呼ばれています。(シリアルはぼかしてあります。)
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横から見たネックのシルエットです。均整のとれた美しい形状でほぼ現在の様々なテナーサックスはこの形をお手本としています。アメセルのコルク巻の長さはフランスセルマーに比べるとかなり長くなっています。
アメリカに買い付けに行っていたときに聞いた話ではkeyのセッティングが低めでベントチューブの穴も音抜けを良くする為に広げてあるのでピッチが低くなるので長く巻いていると聞きましたがジャズのアンブシュアがクラシックに比べるとルーズなので深めにマウスピースをセットする必要もあるので長くなったと思われます。
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ネックジョイントのレシーバーは洋白が採用されています。ブラス(真鍮)より強度と硬さがあるので丈夫にするのと音には輪郭が明確になる効果があります。
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左手で操作するkey形状です。現在のサックスもほぼこの形状をお手本にしています。
左手薬指で操作する白蝶貝のkeyを支える長い横棒は強度を付ける為、洋白が採用されています。白っぽく見えるのが洋白パーツです。
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左手小指で操作するテーブルkeyの形状です。
このマーク6から初めて採用された連動式(シーソー式)でC#-Bbが手を浮かせずに滑らせて操作出来ます。テーブルkeyで出せる低音域は手を滑らせてkeyを押す事が出来るのでフィンガリングが楽でスピードも速く出来るようになりました。
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下部の画像です。
非常に均整のとれたルックスで殆どのメーカーがこのデザイン、レイアウトを模倣しています。
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ベル(1番管)、U字管(2番管)、3番管の接合リングは縄目模様が採用されていています。多くのアメセルは息漏れ防止、強度UPの為にハンダ付された楽器が多くあります。
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右手の操作keyのポストの台座は一体座を採用して強度と音にコシを与える役割を担っています。
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サムフックはオリジナルのメタルフックが付いています。
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ベル支柱は2点止めの丸形状が採用されています。ヤマハの楽器もジャズに寄せたサックスのベル支柱は2点止めになっています。多くのメーカーが参考にしているのが分かります。
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マーク6から採用されたオクターブkeyシステムです。
直前のモデルだったスーパーバランスアクションはインライン的な形状でサムレストもかなり小さく少し慣れが必要な感じでしたがマーク6からはとても安定した操作感が得られます。
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ベル彫刻は代表的なアメリカンセルマーの花が咲いたデザインのものです。この彫刻デザインは1980年のマーク7のアメリカンセルマー終了モデルまで踏襲されました。
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U字管の接合リングに手彫りでマーク6(MARKVIが入れてあります。手作り感満載です。
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タンポ皿の形状ですが9万番台は角のエッジが他の年代と比較すると立っている印象があります。くっきり見えるのはこの影響と思われます。
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keyポストの一体座取付の画像です。
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一枚取で作られるベルで繋ぎ目を写したつもりでしたが上手く写っていませんでした。。。。
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今回ご紹介した楽器は以前に購入して頂いたオーナー様の楽器を撮影させていただきました。
アメセルテナーサックス9万番台の楽器の音の特長としては吹いてみて音の芯がとてもあり上手く吹けた時はすごく良い音が出てテキトウに吹いたり調子の悪い時に吹いたりすると言う事を聞いてくれない楽器と言う印象です。

元々のポテンシャルが高くて引き出せるきちんとした吹き方が出来ないとちゃんと反応してくれない感じで吹き手の力量を求めてくるような楽器なのですが本人の調子の良い時に吹いた時はこの9万番台の楽器でしか出せない太くナチュラルな何とも言えない良い音を出してくれます。

9万番台の楽器と言う事はソプラノからバリトンまでで1万台でその内のテナーサックスが30%で3000本、アメセルが半分あったとして1500本、60年経過した現在、何本残っているのだろうと考えると大変に貴重な楽器です。(30%とかアメセル半分とかはあくまで空想の世界です。。。)

ちゃんと吹いたらいい音出してあげるよと楽器が言ってくる大変素晴らしいサックスでございました。ちゃんと練習しなければと思わせてくれる楽器でございました。

サックスは調整がとても大切な楽器です。
サックスの音程を変える仕組みは沢山の穴を楽器に空けて閉じたり開いたりして音程を変えているので閉じた時に少しでも隙間が開いてしまうと音が出しにくくなったり、本来の音色が出なかったりしてしまいます。
SHIBUYA_EAST店は専属のリペアマンが常駐していますのできっちり調整、点検したサックスをお届け、お渡ししております。ご購入後の調整も保証期間中は無料で行なっておりますので是非お買い求めはSHIBUYA_EAST店をお選びください。スタッフ一同お待ち申し上げます。