NO.1 SELMER SUPER BALANCED ACTION

SELMER SUPER BALANCED ACTION

スーパーバランスアクション。1948年から1953年位のモデルで、シリアル番号は35800から55200位までのモデルです。

もっと詳しく アメリカンセルマー アルトサックス スーパーバランスアクション1952年製モデルについて

主な特徴

特徴①

一つ前のモデルだった、BALANCED ACTION(バランスアクション)はテーブルキーが現代の原型となる形状となったものを採用し、低域のフィンガリングが格段に良くなりました。(当時のコーンやキングなどに比べて)。
トーンホールの開け方はインラインで若干、右手で操作するキーが内側に手が入る形となっていたのを、スーパーバランスアクションではオフセットなりFから下、Gから上あたりを境にキーに角度が付き、より自然な構えでフィンガリングが可能になりました。現代サックスの原型とも言えるモデルです。

主な特徴②

初期から中期のモデルはベルに付けたキーガードがセパレートになっており、彫刻模様も渦を巻いたような葉と花柄をあしらった豪華なものを多く見られます。
マーク6に移行する直前のモデルにはベルキーガードがマーク6同様の一体型のものに変更になり、彫刻模様もマーク6に多く見られる彫刻に変わっています。

主な特徴③

外見的な特長はオクターブキーの形状、テーブルキーのあたりですぐに見分ける事が出来ます。

サウンド

ジョンコルトレーンの愛用楽器としても有名です。

サウンドは明るく、甘い中にも渋みがあり、マーク6に比べれば、やや軽めと言った感じでしょうか。
コルトレーンは独特のサウンドを持っているので、あまりオーソドックスな、この楽器の音としては違うような気がします。
スコットハミルトンとか、あの辺りのサウンドをイメージしていただければスーパーバランスアクションのサウンド傾向が、お解り頂けると思います。
コルトレーンはオットーリンクのマウスピースのチェンバーをハイバッフル系(チェンバー容積を狭くして高域を出しやすくしたタイプ、極端に言えばデュコフのようなマウスピース)に改造するような使い方をした為、あのようなサウンドになっていると思います。

この楽器の味を引き出すマウスピースは、より渋さを追求するならば、マスターリンク(オットーリンクメタルの1940年代モデル、星が四つ刻印されており、フォースターモデルとも呼ばれる)、トーンマスター(オットーリンクメタルの1950年代のモデル、現在のスーパートーンマスターより小振り)を装備する事で非常にいい感じのサウンドが出せます。勿論、人それぞれですから、どんなマウスピースを使っていただいても全く問題ございません。

アメリカンセルマー アルトサックス スーパーバランスアクション1952年製モデルについて

アメリカンセルマー アルトサックス スーパーバランスアクション1952年製モデルについて
サックスの歴史の中で現代サックスの基礎となったセルマーのバランスアクションに更に改良を加えて現在のサックスが今も採用するkeyの配置やオフセット角度を付けた右手、左手で操作するトーンホールレイアウトなどを初めて採用したモデルが、このスーパーバランスアクションと呼ばれるモデルです。

本家フランスの正式名称はスーパーアクションでしたがアメリカで1945年頃から始められたフランスセルマーのパーツをアメリカに輸入して組み立てを行ったアメリカンセルマーは48年に登場したこのスーパーアクションですがバランスアクションをさらに改良した素晴らしいモデルだった事もありスーパーバランスアクションとアメリカでは呼ばれています。

バランスアクションが1936年から1947年まで作られたので12年間ほど続いていますが当時の工場規模や世界大戦などの影響で生産本数は1万4000本位です。
スーパーバランスアクションは1948年から1953年のわずか6年弱で生産本数は2万本弱とその後のマーク6が16万本ほどあるのに比べると本当に少ない本数です。フランスで組立たモデルとアメリカで組み立てた楽器の本数も資料が無いので不明ですが半々としてもアメリカンセルマーで1万本も無い事になり70年近く経過している現在にどの位実在するのかは分からないとてもレアなサックスになっています。

全体の画像です。
このスーパーバランスアクションの形状は現在のサックスの基礎となっています。基礎となった部分はベルkeyを右側に配置しテーブルkeyを小指の自然な動きに合う下方向に作動するkeyアクションとした事。
この前のバランスアクションまではトーンホールがインライン(直線上)に空けられていたのが右手で操作するkeyのトーンホールを自然な構えが出来る角度にオフセットにしたことで格段に操作性が上がった事です。
この個体の管体重量は2284グラム(ネック112グラム)で現在のセルマージュビリーシリーズ2やシリーズ3が2500グラム位、ヤマハのYAS-62が2480グラム前後と比較するとかなりライトウェイトな楽器になります。
ベルの刻印です。
上から BRAVETE FRANCE & ETRANGER(フランスおよび海外で特許を取得) HENRI SELMER PARIS SOLE.AGENTS U.S&CAN(アメリカ、カナダ総代理店) SELMER NEWYORK.ELKHART MADE IN FRANCEの刻印が入っています。
2番管とU字管(1番管)の接合部付け根の刻印です。
生産国フランスと海外でのパテントナンバー、シリアルナンバーが刻印されています。
MADE IN FRANCEとあるようにアメリカンセルマーはフランスで作られた楽器を組み立て直したとされています。(部品のまま輸入してアメリカで組立、彫刻入れ、調整、塗装)
ネック裏側の拡大画像です。ネックと管体が同じシリアル番号で合すようにネックにもシリアル番号の刻印があります。マッチングネックと呼ばれており次のモデルとなったマーク6の途中まで引き継がれています。(13万番台位まで)
ネックとネックのオクターブkey形状です。ネック重量は112グラムあり現在のシリーズ2とあまり変わらない重量を持っています。
とてもシンプルな作りでマーク6から付けられたSのマークは無く、ボウガードは太いワイヤーを整形した作りです。
マーク6にも引き継がれたメタルプレートが付けられています。
管体上部の形状です。
ネックレシーバーは洋白製が採用されています。軽量な楽器ですが音ボケしない要素となっていてkeyポストも一体座を採用しているので音のコシもあります。
長い連絡keyには洋白素材を採用してタワミ、曲げの力に対して強度を持たせています。パームkey、フロントFの形状は現在のサックスのお手本となっていますが現在のサックスに比べるとパーツが小振りです。
テーブルkeyの形状です。
左手小指の自然な動きで作動するこの方式は現在のモデルでも採用されています。
この方式をさらに発展させて連動式(C#、B)(C#、Bb)も開発装備された楽器もありますが慣れてしまえばこれでも十分です。
下部の形状です。
現在のサックスがお手本とした見慣れた形状になっていますが全体にパーツは小振りになっています。
High F# key無しのモデルです。アメリカンセルマーはHigh F#無しを好んだようでF#key付きの比率は非常に低くなっています。
アメリカではジャズマーケット向けと言う事もあり音抜け、フラジオの当り、抜け等でHigh F# key無しが好まれたようです。
下部のサムフック、彫刻模様の形状です。
彫刻はとても凝っていて繊細なタッチで芸術的です。サムフックは管体に直付けされた小振りなメタルフック(真鍮製)になっています。
U字管の接合リングは縄目模様でマーク6のシリアル番号で13万番台まで踏襲されています。
ベルの支柱、ストラップフック用リングとサムレストの形状です。
ベル支柱は2点止めでリング形状です。ストラップフックを掛けるリングは真鍮製が採用されています。
サムレストは現在のサックスに比べるとかなり小振りで白蝶貝が埋め込まれています。
アルトのスーパーバランスアクションを普通にストラップをかけて構えるとマーク6以降の楽器が大体ベルが12時方向に向くのですがスーパーバランスアクションのベルは10時から11時方向に向きます。
トーンホールのオフセット角度が浅いのでこの構えの方が持ちやすい感じですが現在の楽器に慣れていると最初は違和感が少しありますがポールデスモンドの写真などを見るとやはりベルは10時方向を向いているのでスーパーバランスアクションの場合はこれが一番自然な構えた時の角度のようです。
オクターブkeyシステム、パームkeyの形状です。
芯金1本でまとめたシンプルなオクターブkeyシステムでパーツ点数が少ないので軽量化につながっています。
パームkeyは現在もこの形状が主流となっています。
ベルの彫刻形状です。
見事なアメリカンセルマーで施された彫刻です。
U字管(1番管)の補強板と彫刻形状です。
誤って楽器に尻餅を突かせたときに補強の山形の空洞部分のみ凹み管体の内径形状に影響が出ない作りになっています。
彫刻もしっかり入っています。
右手の操作key形状とベルkey形状です。全体に小振りなパーツ形状です。
中央部分の形状です。黒く見える針バネは硬質ニードルスプリングが使われています。
上部の形状です。
一体座のkeyポストやシンプルなオクターブkeyシステム、小振りなサムレスト形状になっているのが分かります。
ネックの横から見た連結形状です。
一見華奢に見えますが実際はしっかりした作りになっています。
ベルの朝顔形状です。
現在のセルマーモデルと比べるとゆるやかに開いていく形状です。ベルにつなぎ目が朝顔先端まで見えるので1枚取で整形されているのが分かります。

今回ご紹介した楽器は石橋楽器スタッフの楽器で撮影したものですがシリアル番号から1952年前半に作られた楽器です。
この年はアメリカでの販売促進活動を新たに展開した年と同じ時期の楽器です。
世界大戦も終わりセルマーも生産本数が回復して需要も増え研究開発も盛んに行えるようになった時期と言えます。この2年後の1954年ににマーク6が発売されています。


アメリカンセルマーのスーパーバランスアクションを愛用したプレイヤーはアルトではポール・デスモンド、テナーではジョン・コルトレーンがあまりにも有名ですが両名とも個性的すぎて普通の人が吹いたらアルト、テナーともあのような音はなかなか出ません。。。。。
但し普通の人が普通に吹いてもいい音だなーと言う音が出ます。現在のサックスには出ない枯れた感じでナチュラルで耳に痛くない心地良い音が出ます。


音程や音量、強弱の幅などは現在のサックスの方が研究が進み工作精度も上がったので向上していますが音色とか音色変化の様な観点で比べると古き良き時代の楽器の良さが際立ってきます。
この時期の楽器を使用している名プレイヤーの曲が好きで耳が肥えてしまった方々には垂涎の楽器となってしまうのは致し方ない事と思います。

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