ギブソンフリークの方でも意外と知らないかも? ギブソンUSA現行ラインナップの中でも王道ベストセラーモデルである「レスポール・スタンダード」と「レスポール・トラディショナル」(いずれもTraditional Series)の2016年版最新スペックについて、イシバシ楽器店が細部まで比較検証を行い、徹底解説をまとめました!
2015年モデルのレスポール・スタンダードは、オートチューニングシステムであるthe new Gibson G Forceを搭載。新開発ゼロフレットナットが採用され、以前より幅広となったネック/フィンガーボード、エスカッションにピン留めされたピックガードなどをフィーチャーしています。
2016年モデルのレスポール・スタンダードは、従来通りのナット幅のため2015年モデルよりもネックグリップが細身に感じられます。2013年までのスタンダードと同様にロッキングタイプのキドニー・グローバーペグを採用。シルクスクリーンロゴのデザインも原点回帰しています。
2016年モデルのレスポール・トラディショナルは、2015年モデルと異なり、マニュアル(手動)のチューリップボタン・クルーソンタイプペグを採用。ボディの構造は2014年・2015年のみノン・ウエイトリリーフで製作されていましたが、トラディショナル・ウエイトリリーフに変更されました。
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ヘッド&ナット
Standard
レス・ポール氏生誕100周年ロゴ&ブラス製ゼロフレットナット(1.795インチ)
Standard
グラファイト製TekToidナット(1.695インチ)
Traditional
グラファイト製TekToidナット(1.695インチ)
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Les Paul Standard 2015のみ、レス・ポール氏の生誕100周年を記念したLes Paul 100表記のスペシャルロゴを採用。低温処理を施したブラス製のゼロフレットナットは1.795インチ幅(約45.59mm)と幅広な仕様になっています。Les Paul Standard 2016T とLes Paul Traditional 2016TはTekToidという名称の摩擦係数を軽減したグラファイト製ナットを採用。1.695インチ幅(約43.05mm)とギブソンの標準的なサイズです。
チューナー
Standard
G-FORCEチューナー
Standard
ロック式グローバーペグ
Traditional
クルーソンタイプペグ
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Les Paul Standard 2015はバッテリー駆動のG-FORCEチューナーにより簡単な操作でマルチチューニングが可能です(解説ページ)。Les Paul Standard 2016Tではロック式グローバーペグを採用しているため、弦交換が容易でサスティーンも良好。Les Paul Traditional 2016Tはグローバーペグに比較して軽量なクルーソンタイプペグを採用しており、美しい広がりのある音色が楽しめます。
ネック
Standard
.800インチ(1st)-.875インチ(12th) アシンメトリカル・スリムテーパーネック
Standard
.800インチ(1st)-.875インチ(12th) アシンメトリカル・スリムテーパーネック
Traditional
.828インチ(1st)-.973インチ(12th) ラウンデッドシェイプ
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Les Paul Standard 2015とLes Paul Standard 2016Tは、テクニカルなプレイスタイルにも対応しやすいアシンメトリカル(非対称)のスリムテーパーネック。薄さは.800インチ(1st)-.875インチ(12th)と共通のシェイプですが、2015年モデルはナット幅の分、太めに感じられます。Les Paul Traditional 2016Tは.828インチ(1st)-.973インチ(12th)で、1950年代風のラウンデッドシェイプをもとにしながら、従来より若干細身にアレンジされているのが2016年モデルの心憎いポイント。差し込み角は約5度、ヘッドアングルは約17度と共通です。
フィンガーボード
Standard
10インチ~16インチ・ラジアス
Standard
10インチ~16インチ・ラジアス
Traditional
12インチ・ラジアス
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2012年以降のレスポール・スタンダードは、コンパウンド・ラジアス指板を採用しており、それはLes Paul Standard 2015とLes Paul Standard 2016Tも共通。ハイポジションに向かうにしたがって、指板Rが10インチから16インチまで緩やかに変化するので、ローアクションなセットアップがしやすい設計で、プレイアビリティも向上されております。Les Paul Traditional 2016Tは12インチRとギブソンの伝統的なスペックを踏襲。
フレット
Standard
Standard
Traditional
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2014年モデルのレスポール・スタンダードからはフレット・オーバー・バインディングが採用され、2015年にはレスポール・トラディショナルでも同様の仕上げになりましたが、2016年モデルでは、フレットエンドまでバインディングが巻かれたオールドスタイルに戻りました。弦のテンションをかけた状態で、ネック周りやフレットの状態を高精度でスキャンできる最新機器プレック (Plek) マシンによって緻密にセットアップされております。
ボディ
Standard
モダン・ウエイトリリーフ
Standard
モダン・ウエイトリリーフ
Traditional
トラディショナル・ウエイトリリーフ
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Les Paul Standard 2015とLes Paul Standard 2016Tは、モダン・ウエイトリリーフを採用しております。2008年モデルのチェンバード仕様を経て、2012年にアップデートされたもので、軽量でかつ音響特性を熟慮した構造です。Les Paul Traditional 2016Tは9ホールのトラディショナル・ウエイトリリーフにより、その名前の通り、伝統的なレスポールサウンドのイメージを追求したものになっております。
メイプルトップは塗り潰しカラーを除き、Les Paul Standard 2016TがAAAグレード、 Les Paul Traditional 2016TがAAグレードの杢目のものから選定。個体差はあるものの、ゴージャスで華やかな印象を受けるスタンダードに比較して、トラディショナルの方は渋めで味のある顔付きの個体が多い印象です。塗装は90-Sheenのラッカーフィニッシュで、スムースな光沢のある上品な質感です。
ピックアップ
Standard
Alnico V Burstbucker Pro Rhythm / Lead
Standard
Alnico V Burstbucker Pro Rhythm / Lead
Traditional
Alnico II 57 Classic / 57 Classic Plus
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ピックアップはレスポール・スタンダードがアルニコ5マグネットによるBurstbucker Pro Rhythm, Burstbuker Pro Lead(直流抵抗は約7.64kオーム、約7.98kオーム)をマウントしており、心地良い音圧感と歪ませたときにもキレのあるサウンドが特徴。レスポール・トラディショナルがアルニコ2マグネットによる57 Classic, 57 Classic Plus(直流抵抗は約7.93kオーム、約8.14kオーム)をマウントしており、表現力豊かな素直で深みのあるサウンドが楽しめます。
Les Paul Standard
Les Paul Traditional
Les Paul Standard 2016Tは、音楽ジャンルや演奏スタイルを選ばないフレキシブルなサウンドを実現しているのに対して、Les Paul Traditional 2016Tは、名盤で聴き慣れているような憧れのヴィンテージフィールを再現することにコンセプトを据えております。プレイヤーの方々それぞれの嗜好に応じて、見事にキャラクターの差別化が図られているところでしょう。 配線は両モデル2ボリューム2トーンなのですが、Les Paul Standard 2016Tの場合は、それぞれのポットがプッシュプルできるようになっております。コイルタップしてシングルコイル風のエッジが効いたサウンドを出せる他に、フェイズアウト、バイパスアウトも可能でコンテンポラリーなアッセンブリになっております。
ブリッジとテイルピース
Standard
Standard
Traditional
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いずれも通称ナッシュビルタイプと呼ばれるチューン・オー・マチックブリッジを搭載しており、ザマックという亜鉛合金がベース(Les Paul Standard 2015ではチタンサドルが採用)になっております。2016年モデルのスタンダードでは、ブリッジとテイルピースに小さな穴が開いているのが見えるでしょうか。そこで、イモネジとスタッドが噛み合う事で余計な共振を防ぎ、サスティーンを向上。弦を外した時に脱落しないのもメリットです。
ハードウェア
Standard
Standard
Traditional
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スピードノブと呼ばれているバレル型のノブか、トップハットノブかの違いがあります。ジャックプレートはいずれもクロームメッキの金属製で耐久性もGOOD。ピックガードは、2015年モデルがエスカッションに差し込むピン留めタイプだったのですが、2016年からは従来通り、ネジ留めタイプに戻っております。ストラップピンは2014年以降、直径約15.5mmと少し大きなアルミボタンになっていますのでステージでも安心ですね。
ケース
Standard
Standard
Traditional
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2013年まで付属していたハードケースはギターシェイプのブラックカラーでしたが、2014年から往年のギブソンファンの要望に応える形でブラウンケースに変更されました。2015年モデルにはゴールドカラーの角型ケースが付属しておりましたが、今年からは再びブラウンケースに戻っております。デザイン自体は好み次第ではありますが、機材車などでの搬入が多い方には角型、電車移動や普段使いにはギターシェイプが便利かと思います。
さて、駆け足ではございましたが、「Gibson USA 2016年モデルのレスポールって去年と比べて何が変わったの?」という素朴な疑問に焦点をあてて概説してみました。また、今年は更に現代的なプレイヤーのニーズに応えた新機軸のモデルとしてHigh-Performance Seriesがラインナップされていますので、あわせてチェックしてみてください。
常にロックギターの象徴であり続けている魅惑のギブソン・レスポール。イシバシ楽器店では各店舗に専任の担当者が在籍しておりますので、もしご不明な点があればお気兼ねなくお問合せくださいませ。このページが、皆様にとって生涯愛用いただけるようなレスポール選びの一助となれば嬉しい限りでございます。