真空管を使用したギターアンプは、特長である音の温かみや抜けの良さ、音量を上げたときに得られる音の艶や音圧感などによって多くのギタリストに愛用されています。ローランド/ボスでは、ギターからの入力信号に応じて反応する真空管回路と電気回路の動作や、パワーアンプ、スピーカー、パワーサプライなどの相互作用をはじめとして、真空管アンプを構成する各要素を詳細に解析。そこで得た技術やノウハウをもとにし、理想のアンプを設計する独自のコンセプト「Tube Logic」によって作り上げたギターアンプ「Blues Cube」「WAZA AMP」は、その音質とレスポンスの良さで高い評価を得ています。
GT-1000のアンプ・セクションは、「Tube Logic」をベースにして生まれた新技術「AIRD」によって設計。真空管をはじめとするギターアンプ内部の回路動作、スピーカーやキャビネットの周波数特性、さらには、それらがアンプの内部回路に及ぼす電気的な影響に至るまで最新のデジタル・プロセッシングで再現しています。実際のギターアンプでは、スピーカーがアンプ回路の動作に電気的にも影響を与えることにより、音質とレスポンスに変化が生まれますが、「AIRD」ではこのスピーカーとの相互作用までリアルに表現することが可能です。
フロア・タイプのギター用プロセッサーで、内部プロセッシングでアンプ・サウンドを得られるモデルは数多く存在しますが、これまでのモデルでは、接続先のギターアンプやスピーカーの特性によって音質とレスポンスに影響を受けるため、その性能をフルに発揮することができませんでした。
GT-1000は、ギターアンプに接続して使用する際に「AIRD OUTPUT SELECT」機能で接続するギターアンプのタイプを選ぶだけで、アンプ全体の挙動を最適に調整。接続する機器を問わず、どんな環境においても理想のアンプ・サウンドで演奏することができます。
アンプ・タイプには、ビンテージ・モデルとして人気の高いモデルや、ボスのノウハウで組み上げたオリジナル・アンプなど16タイプを搭載。特に、音を音域や強さなどの要素に分けて最適に処理する独自技術「MDP(Multi-Dimensional Processing)」で設計されたアンプは、実存するアンプでは得られないレスポンスの良さを実現しています。
AIRDの特長を簡単に言うならば「アンプっぽく聴かせる為のイコライジングの組み合わせ」 から「アンプそのものの動作の再現」に移行した、という所でしょうか。
旧来のアンプモデリングでは極端にいうと、「プリアンプ(+イコライザー)→パワーアンプ→ スピーカー」の各部の動作による音の変化を断片的に組み合わせて順々にそれらしいサウンドに仕立てていく一方通行的なサウンドプロセッシングを行っていましたが、GT-1000ではプリアンプやスピーカーの作動状況によりパワーアンプに流れる電圧量や負荷が変化し、パワーアンプの動作が変わることによる「プリアンプ⇔パワーアンプ⇔スピーカー」の相互作用を内部再現しながらサウンドを出力します。
プリセットの状態でもタッチレスポンスの良さは感じられると思いますが、アンプのエディット項目の「SAG」と「Resonance」を調整していくことで、他機種では調整が難しかった「弾き心地」の面でより自分のプレイにフィットしたセッティングをツメることができます。
手元でのコントロールに対する追従性が従来のモデリングアンプの比ではないので向き合っていて楽しい分、ダメな弾き方をすればそのままダメな音として出力される怖さもありますね。(笑)
GT-1000は、フラッグシップの名にふさわしい最高峰のBOSSエフェクトを内蔵しています。
定番のオーバードライブやディストーションをはじめ、スライサーやリングモジュレーターのような積極的な音作りができるエフェクトまで幅広く網羅。ハイエンド機種として評価が高いDD-500 Digital Delay、MD-500 Modulation、RV-500 Reverbから受け継いだ高度なアルゴリズムや、フレーズのダイナミクスや音域にインテリジェントに反応する最先端のMDPエフェクト、AD-10 Acoustic Preampから移植された、エレクトリック・アコースティック・ギター用のAcoustic Resonance機能など、最新のBOSSエフェクト技術を結集しています。
GT-1000のエフェクト・チェイン上では複数のディバイダーとミキサーを自由に配置することが可能で、搭載されたエフェクトとプリアンプを様々なパターンで直列/並列接続して自由な音作りができます。また、モノラル2系統(ステレオ1系統)のエフェクト・ループも搭載しており、内蔵エフェクトと一緒にメモリーすることができるので、こだわりの外部ペダルや外部プリアンプを組み合わせた音作りが可能です。
さらに、強力なDSPエンジンにより、今までにない超高速パッチ切り替えとディレイのキャリーオーバーを実現、シームレスなパフォーマンスを可能にしました。
BOSSエフェクターのすべてが詰まったGT-1000ではDD-500、MD-500、RV-500に収録されている最新アルゴリズムから、「SLOW GEAR」「VIBRATO」「DEFRETTER」など往年のBOSSオリジナルエフェクトまでを網羅しています。
エフェクトルーティングの面ではひとつのパッチ内に最大3つ差し込める「Divider/Mixer」がポイント。
ひとつの信号を二つに分けてそれぞれに別々のエフェクト処理を施した上で混ぜ合わせることができる機能で、基になるトーンの持ち味を生かしながら音作りを進めることができます。
単体エフェクトの設定項目にある「Direct Mix」を使って原音を混ぜていくだけでは求めるサウンドが得られない場合などに、Dividerを使って片方をドライに保ち、片方だけエフェクトを強く掛けたパラレルセッティングを試してみると良い結果が得られると思います。
シンプルな使い方の例としては、クリーントーンを作る際にA/Bラインに振り分け、片方に「Transparent」のアンプモデルと「AC.Guitar Simulator」「AC Resonance」を通したサウンド、もう片方に「JC-120」のアンプモデルと「Chorus」を通したサウンドを設定し、混ぜ合わせることでひと味違う煌びやかさを持ったクリーントーンを作り出すことができます。
ある程度複雑なルーティングを設定してもパッチ切り替え時のラグや音切れなどでまごつくことのない処理能力の高さはさすが最新機種といった感じですね。
GT-1000は、操作性にも優れています。本体上の6つのつまみには、歪(ひず)みの度合いや、ディレイ(エコー)の深さなど、調整したい値を自由に設定することが可能。10個のフットスイッチも、音色の切り替えや、特定のエフェクトのオン/オフ切り替えなど、ユーザーの用途に応じた機能をフレキシブルに設定できます。また、各スイッチに対応するLEDインジケーターも、視認性の良い色を選んでカスタマイズすることが可能です。
Bluetooth®でスマートフォン/タブレットと接続し、専用アプリ「BOSS TONE STUDIO」(iOS/Android対応)を使って緻密な音作りをスムーズに行うことが可能。USBケーブルで接続したパソコンでも専用ソフト「BOSS TONE STUDIO」(Windows/Mac対応)を使用できます(2018年5月公開予定)。さらに、『GT-1000』のUSBオーディオ機能を使えば、32bit/96kHzの高音質ギターサウンドでデジタル・レコーディングを行えます。
専用アプリ/ソフト「BOSS TONE STUDIO」は、ウェブサイト「BOSS TONE CENTRAL」(https://bosstonecentral.com/)から無料でダウンロードできます。同サイトにはさまざまなスタイルの音色も用意され、好みの音色を選んで、GT-1000で演奏を楽しめます。
操作性の面では、上部のツマミや10個あるフットスイッチの役割をカスタマイズしたり、フットスイッチ上部のLEDの色を変更できるので、GT-1000を自分好みのマシンに仕上げていくことができるのがうれしいですね。
Bluetoothを使ったアプリによるワイヤレスサウンドエディットは大変便利に使えます。本体のディスプレイも大柄なのですが、いかんせん表示されている情報量が多いので、使い慣れるまではどこを見たらいいのか迷ってしまうこともありますから、アプリの分かりやすさは嬉しいところ。
特に単画面式のマルチエフェクターでは項目の階層化は避け難い部分があるので、視覚的に把握しやすいというのは大きなメリットです。
スタジオやライブハウスでの使用時に、聴く位置によるサウンドの微調整がしやすいというのも、より良い音をリスナーに届けたいと思うギタリストにとってはありがたい機能だと思います。
落合/WEBSHOP
AIRDテクノロジーを用いたアンプシミュレーション部分は各アンプモデルがPCベースのアンプシミュレータープラグインと比肩する綿密なサウンドとリニアなレスポンスを併せ持ち、もはやチューブアンプそのものと言えるレベルの完成度。MDPを使ったX系の歪みエフェクターやコンプレッサーなどと組み合わせれば、かなり幅広い音作りができそうです。
また、ノイズリダクションの精度も高く、ヴィンテージチューブアンプのトーンとリアクションをノイズレスで扱えるのは大きなメリット。
エフェクター部分は最大5基掛けできるディレイもユニークですが、リバーブが特に良く、リバーブテイルがキレイに残り自然なエンベロープを描いて消えていく、音の解像度が高いGT-1000ならではの美しい響きが楽しめます。
MD、DD、RVの500シリーズをそれぞれ個別に買うのとほぼ同等の予算で手が届くプライスもニクい所。
個人的には「TWEED」アンプモデルにプレートリバーブを薄く掛けただけのシンプルなパッチで、AIRDアンプのサウンドとリバーブの質感を味わってほしいですね。
従来の「アンプの代替機能も入っているマルチエフェクター」から「アンプそのものが入ったマルチエフェクター」へと進化した一台です。
浅野/新宿店
この機種の注目点は、まずAIRDという新しいテクノロジーです。チューブアンプ全体の相互作用によって生まれる動作を忠実に再現したサウンドは、聴く人を魅了するものがあります。勿論大きい音で聴いてこそ、その真価を発揮するというものですが、優秀な『Output Select』機能によって、様々な出力先で最適なサウンドを得ることができます。
操作面においては、“BOSSらしさ”を随所に感じられ、歴代のBOSSマルチエフェクターのように、GT-1000でも想い描くサウンドを作り出すのに比較的迷うことは少ないかと思います。
またフットスイッチ上部のLEDが好みのカラーを10色から選べる点も個人的には魅力的です。「自分好みにカスタムする」という面で、見た目にもそれが分かり易く表れるのが良いですね。
他社の製品が軒並みカラーディスプレイを採用している中、あえて単一カラーの画面を採用した理由は「ステージ上での強い光の中では、カラーディスプレイだと反射して画面が見えづらくなってしまう」といったことを避ける為だと思います。様々な環境下でも使いやすく、高いパフォーマンスを発揮できるようにしているBOSSのこだわりが感じられます。
GT-1000の先進の機能をブログでもご紹介しています。