懐かしのキーボード達
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ROLAND SYSTEM 700 1975年当時、国内楽器メーカーでは電気・電子系、アナログ系共に、新機種の 開発意欲が豊富で、市場も大いにそれらを歓迎していました。特に電気・電子系 楽器は、新製品が発売される度に、機能、性能の向上に驚嘆し感激したものです。 電子楽器の代表格であるキーボード、特にシンセサイザーに於いては、ツマミ類の 多さや接続端子の多さで、誰の目から見ても明らかなる機能向上が分かりました。 それらの製品を市場に紹介する場として、国内では「楽器フェア」という見本市が 開催されており、一般の方の入場も可能なため、メーカーはもちろんのこと、問屋、 小売店などの流通業者、音楽雑誌社をはじめとするマスコミ、ミュージシャン、 そしていわゆる一般の楽器ユーザーが一堂に会し、会場(当時は科学技術館で 行われたと思う)は人ひとヒトでごった返していました。このショウで発表された一 台のプロトタイプのシンセサイザーに、多くの関係者、楽器ファンが驚愕させられま した。試作であったため音はともかく、そのパネル大きさとツマミ類に圧倒された のです。ローランドから発表されたそのシンセサイザーは、翌年の1976年、 SYSTEM 700として正式に 商品化され売り出される事になります。 (SYSTEM 700が全面に登場したROLAND 最初の 総合カタログ を欲しがるシンセ小僧達が店舗に押し寄せたものです =このサイトのトップページにも使わせて貰いました。)

ROLAND SYSTEM 700 SYTEM700は6つのモジュールとひとつのキーボードで構成された、システム型の シンセサイザーでした。システム型と言えば木製キャビネットのムーグ(MOOG) があまりに有名でしたが、SYTEM700は木製キャビネットに黒のレザー張りで、 蓋を被せるとケース一体型に出来る設計になっていました。フル・モジュールを 揃えるのが楽器的にも視覚的にもベストでしたが、MAIN CONSOLE SYSTEMとし て、メイン・コンソールとキーボードのセットで一応の音作りは可能になっていまし た。メイン・コンソールだけでも、充分な機能が装備されており、3VCO,2VCF, 2VCA,2EG,2LFOなどの基本機能に加え、リバーブ、フェイザーなどの音響装置も 装備していました。キーボード・コントローラーはシンセのキーボードとしては多め の61鍵を持ち、その左側に手動ベンダー、ピッチ・コントロール、ポルタメント・コ ントロールが付いていました。他のモジュールを紹介しましょう。6つのVCO、LFO、 S/H、ミキサーなどが装備されたVCOバンク・ユニット、2つのVCFと3つのVCA、 デュアルEGなどが装備されたVCF/VCAバンク・ユニット、12ステップ、3チャンネ ルのアナログ・シーケンサー・ユニット、外部信号をCV/GATE信号に変えることの 出来るインターフェイスと、9チャンネルのオーディオ・ミキサーを装備するインタ ーフェイス/ミキサー・ユニット、2チャンネルのフェイズシフターと2チャンネルの オーディオ・ディレイを装備するユニットの7つでトータル・スタジオ・システムと 呼ばれ、その価格は当時としては破格(高いと言う意味で)の\2,400,000と言う 価格でした(後年改訂)。今で言うと500万位の感じでしょうか。このシステムの 他に、LABORATORY SYSTEMと呼ばれるポータブルタイプも同時に発売されま した。ラボラトリー・コンソールと呼ばれるワン・ユニットの中に3つのVCO、 ノイズジェネレーター、リング・モジュレーター、1VCF、1VCA、デュアルEG、 S/H、ミキサーなどが凝縮されていました。

ROLAND SYNTHE STUDIO SYTEM700は国産シンセサイザーを代表する機種となり、ローランドの技術力の 高さと知名度を一気に跳ね上げるのに充分な機種となりましたが、この機種以 外にローランドはこの様な巨大なシンセを製造することはありませんでした。後 年の梯氏の著書には、商売としては成功したとは言えなかった大型シンセに対 する、作りたいという技術者の心と、商売上の問題を考えねばならない経営者と しての複雑な心情が書かれております。このシンセは、当時秋葉原にあったロー ランドのショウルームくらいでしかお目にかかることは出来ませんでしたが、私は ローランドの研修で神谷スタジオ(神谷重徳氏)を訪れた時に目にする機会があ りました。また楽器店では朝日無線(今のLAOX)に展示してあり、当時流行のイ ンベーダーゲームの音をシーケンサを使ってデモしていたのに感動したものです。 後にも先にも、このシンセが与えたインパクトは大きく、当時のシンセ小僧達の心 を捕らえて離しませんでした。オープンリールのマルチトラックデッキと並ぶ SYSTEM700は、多くの雑誌・パンフレットに登場し、その後シンセによる多重 録音ブームを生み出すきっかけとなって行きました。

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