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序章ではローランドの創始者である梯郁太郎氏の紹介を交えて、ローランド社の
設立までをお届けしましたが、興味深く読んで頂けましたでしょうか。今回からは
ローランドの懐かしシンセサイザー達を年代順に紹介していきたいと思います。
ローランド最初のシンセは1973年に発売され、国産初(?)の称号を受けることに
なったプリセット型のSH-1000(\165,000)でした。奇しくも同年、コルグ初の
シンセサイザーminiKorg700も発売された事から、700こそが「国産初」である
との主張もあります。事情は良く知らないのですが、発表日と発売日、どちらをも
って国産初とするかという点で見解の相違でもあるのでしょうか。SH-1000も700
同様、エレクトーンの第3鍵盤的コンセプトで開発されていましたから、操作性から
鍵盤の下手前に、音色切り替えのための赤や黄色、緑や白などカラフルなカラーの
タブレット・キーが付いていました。37の鍵盤左側には、ダイヤル式とスライドバ
ー式のツマミ類が装備され、VCFやEGをコントロールすることにより音作りも可能
になっています。プリセット音色を紹介しますとピアノ、ハープシコード、ベース
ギター、バイオリン、オーボエ、クラリネット、フルート、サキソホン、トランペ
ット、チューバの10種類が設定されていました。設定音色にも時代が感じられま
すね。翌年の1974年にはプリセット数を30に増やした後継機SH-2000(\185,000)
が発売されます。プリセット音色の中にウインド、ファニーキャット、プラネット、
ポップコーンなど、シンセならではの特殊な音色が9種類追加されています。パネル
面はダイヤル式のツマミが減り、あっさりした印象ですが、タッチ・エフェクトコ
ントロール機能を装備し、音量や音色、ビブラートなどがコントロール可能で、演
奏性を重視したものと思われます。
同年(1974年)には、プリセットが一切無い、フル・コントロールタイプのSH-3
(\185,000)が発売されました。SH-3はその後内蔵フィルターとツマミ類のデザイン
に若干変更が加えられ、SH-3Aとして発売されています。後年のカタログは全てSH-3A
になっていますので、ここではSH-3Aとして紹介させて頂きます。SH-3Aはケース一体
型、プリセット無しと言うことで、明らかにバンド向き、音作りを楽しむ方向きに製
作されています。VCOは一つですが、32、16、8、4、2フィートの各音量レベルを
コントロールできる様になっており、音に厚みを付けることが出来ました。ハモンド・
オルガンのドローバーの様な意味合いです。但し基本的には1VCOなので、複数VCO
の様なサウンドは期待出来ませんでした。各フィート毎に波形を変えることが可能で、
音作りの可能性を広げています。8フィートの音にのみ、パルス・ワイズを利用した
コーラス機能が付いていました。ピンク、ホワイト、2種類のノイズを出せるノイズ・
ジェネレータを装備し、VCF、もしくはVCAに送り込むことが出来たまし。サンプル&
ホールド機能が付いており、自動演奏の様な効果やオート・リズム効果を楽しむこと
も可能でした。昨年、当社の町田店へ行ったら中古のSH-3Aが展示されていて感激。
古い友人に偶然逢ったようで暫く遊んでしまいました。小室哲哉氏が以前所有されて
いたモノと聞いたのですが本当でしょうか。
1975年に発売された2VCOシンセ、SH-5(\260,000)を紹介して、今月の最後とし
たいと思います。SH-5はローランドが初めて世に送り出した2VCOシンセです。
同年にはライバルのコルグからデュアルボイス(2和音同時発音可能)の800DV
が発売されていますから、国内における熾烈な開発競争が始まっていた時期でし
た。SH-5は一見するとそのツマミ類の多さに圧倒されますが、前述のSH-3Aを知
る方にとっては、決してコントロール不可能なシンセではありませんでした。
但しSH-3Aでの音作りに満足できない方には、2VCOによる音の厚さや、通常のVCF
以外に設けられたBPF(バンド・パス・フィルター)、ADSRコントロールの他に
AR(アタックとレリース)コントローラーが装備されたり、SH-3Aには無かった
リング・モジュレータが装備されたりと、かなりの満足を与える機能になってい
ました。またこの機種から、シンセでは普通に装備されることとなるCV、GATE
のインプットが装備されています。残念ながら、当時はシーケンサーなどの接続
できる外部機器が無く、折角の機能も宝の持ち腐れと言った感も無きにしにあら
ずでしたが、後年発売されて来る機種との接続を可能にし、システムに強いロー
ランドを印象づけるのに先鞭を付けた機種となりました。余談ですが、SH-5は
私がイシバシに入社当時、必死(?)にシンセを勉強した機種として、懐かしく
想い出されます。因みにSH-5もケース一体型で持ち運びが可能でした。22Kg
という重さをモロともしない人にはですが...。
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