1975年製D-35【Vintage】
2015-06-05 ***ちょっとしたコラム:サンバーストのMartinって…?***ライバルGibsonと比較すると、Martinのアコースティックギターは伝統的にナチュラルフィニッシュが基本です。しかしながら、戦前の1930年代、所謂「ゴールデン・エラ」期より、サンバーストのMartinは存在していました。
ただ、Martinに於いては「サンバースト」よりも「シェイデッド・トップ」や「ダーク・トップ」(こちらはあくまで一部の間での俗称)と呼ばれ基本的にはオプション扱い、面構えもGibsonの同心の楕円状に綺麗に広がるサンバーストとは異なる、境界線が四角形に近い独特の仕上げ方です。
仕上げ(色合い)については、個体によるばらつきもあり一概には断定できないものの、30年代の黎明期と40年代以降では若干異なるようで、30年代の初期はどちらかというと全体的に暗褐色で中心部にぼんやりと明るい部分が浮かび上がるような仕上げ(近年のモデルではOM-18 Authentic 1933がこのタイプに近いです。Martin本社のミュージアムには33年製のオリジナルがありますが、その個体も似た様な色合いです。)、それ以降は外周部の黒色部分と中心の黄色い部分がくっきりと分かれているような仕上げ(近年のモデルではD-28GE Sunburst等がこのタイプに近いです。)へと変化していくようです。
その後サンバーストの個体がよく見られるようになるのが約30年後の1975年。なぜかこの年にピンポイントでサンバーストの個体が非常に多いのです。
ここから先は筆者の憶測ですが…同様の現象が見られるのが2013年。レギュラーモデルではスタイル17がシェイデッド・トップ仕様で復活し、ファクトリーに視察に赴いた際もカスタムショップの完成品にやたらとサンバーストの個体が多かったのです。説明によると、日本製の塗装用の工作機器を新たに導入し、今までに無かったようなタイプのフィニッシュもできるようになったとか。
という事は1975年辺りにもファクトリーで塗装のシステムに何らかの変化があり、「こいつでカッコいいサンバースト作りまくってみようぜ!」のようなノリでサンバーストの個体が多く作られたのか・・・?
真相は謎です(笑)

さて、新宿店店頭のアメリカ買付品・D-35。この個体も正に”サンバースト・フィーバー”の1975年製です。程よくフェイドし、40年代に見られるような濃淡のくっきりした仕上げとはまた趣が異なり、グラデーションが穏やかに変化していきシックな印象です。
たまに「MartinはGibsonにくらべてサンバーストが下手だよねー」という声を耳にする事もありますが、全然そんな事はなく、何とも奥ゆかしい雰囲気の美しい仕上げだと感じるのは私だけでしょうか…?

サウンドもそんな感じでシックで奥ゆかしい感じなのか・・・と思えば、意外に芯の強い、骨太さをしっかりと持ったキャラクターです。Martinらしい煌びやかな倍音成分や、シャラシャラした鈴鳴りも持ち合わせていますが、第一印象としてはしっかりとコシのあるトーンです。主観ではありますが、D-35というよりは、どちらかというとD-28っぽい印象もあります。
本体もさることながら何よりこのブルー・ケース!!

特に日本では結構な値段で取引される事も多いオリジナル・ブルー・ケースですが、何とも気合の入ったペイントが施されています(前オーナー氏は「俺がやったんじゃないよ」と笑いながら仰ってました)。人によっては悲鳴を上げたくなるかもしれませんが(笑)、ペイント自体は図案のダイナミックさにも関わらず非常に緻密に塗り上げられており、明らかに看板などのペイント手法を「わかっている」人間が仕上げたようです。これはこれで一つの作品として見事な仕上がりです。
Martinドレッドノートのご他聞に漏れず、ピックでのストローク、繊細な指弾き、歌モノのバック、ソロ・ギターとシーンを選ばず活躍できる万能型です。お値段も現行D-35とほぼ同じくらいのお手頃プライス!それでいて現行品とは全く異なる鳴りを味わえる逸品です!
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