WEB兼自称ビザール担当の長谷川です。
完全に個人的な趣味の内容になってしまいますが、長年のピッキングによりネックエンド付近の塗装が大きく剥がれてるよりも少し剥げてるぐらいがVintageギターの渋さを際立たせるポイントではないかと考える今日この頃でございます。
今回も新宿店3Fより、癖のあるアコースティックをご紹介させて頂きます。
では、行ってみましょう!
National ナショナル / 1949年製 Model-1145 Archtop Sunburst

え?あの某電気機器メーカーのNational!?
ではありません。
1925年、ドペラ兄弟とジョージ・ビーチャムによってナショナル・ストリング・インストゥルメンツ・コーポレーション (National String Instrument Corporeation) として設立されたギターメーカーです。
バタヤンの愛称で歌手として活躍した田端 義夫さんが上記ブランドのエレキギターを永年使用されていましたね。
では、細部を見てみましょう。

実はこの当時、NationalはGibsonからボディを買い取り、自社でネックやブリッジを組み込み販売していました。
本器のボディも当時のGibson L-50(スプルーストップ、メイプルサイド&バック)のものをそのまま使用しており、Gibsonの他モデルのボディを使用した同様のコンセプトのモデルも幾つか見られます(J-45/50のボディを使用=Model 1155、L-7のボディを流用=Model 1135…などなど)。
しかしながらボディのサンバーストフィニッシュの色合いは同時期のGibsonとは異質の、やや淡い色合いの仕上げとなっています。
見る角度によっては同時期のEpiphoneのアーチトップにも近い印象の仕上げにも見えます。
EpiphoneがGibsonに買収されるのは1957年前後。その前の1952年前後にGuildの立ち上げに伴い、EpiphoneからGuildへの職人の出奔がありました。
ボディやfホール等の細部の形状から、ボディは当時のGibson L-50のものである事は間違いないのですが、そのボディを塗装まで含めて仕上げたのは何処の工場のどういった職人だったのか・・・?
そういった時代背景を含めて考察しても中々興味深くロマンがありますね。
ブリッジサドルのアジャスト用のダイヤルは通常のアーチトップとは逆向きとなるものが付いていますが、過去のオーナーが演奏性や使い勝手を考慮しブリッジごとリプレイスしたものと思われます。
ボディ以上に謎が多いのはネックです。
上記のセオリーでいけばネックはNational製…という事になるのですが、
本器はしっかりとセットネックで組み込みがなされています。

丁度このギターの年代、1949?1950年?を境にボルトオンネックの仕様へ移行し、ネックシェイプ自体も大きく変化します。
*ボルトオンネック仕様時代のNational(Model-1155)も現在新宿店に在庫がございます。
National ナショナル / 1954年製 Model-1155 Sunburst
上記の50年代に入ってからのModel-1155のようなボルトオン仕様のやや薄手のネックは(モデルによってはブリッジも)一般にNational自社で作って組み込んでいた…というのが定説ですが、本器のようなセットネック仕様の、ある意味伝統的なネックについてはどうなのでしょうか?
セットネックのジョイント部分はかなりの精度が要求されるため、ボディとネックを全く別の工場で製作するのは効率が悪そうな印象もあります。
それでも頑張ってNationalで作っていたのか、まさかGibsonがネックもこの時期は作っていたのか、はたまたEpiphoneや全く関係ないファクトリー/職人に委託していたのか?
こちらもロマンが膨らみますね。
*余談ですが、この時期の他ブランドのアーチトップ・ギターも、実は同じ工場で作られた同一ボディの兄弟器だった…という例はよくあります。
(GibsonとKalamazoo, Cromwell等のブランドとの関係や、KayやSilvertone、Stella、Harmonyなどの所謂ビザール・ヴィンテージ系ブランドなどなど…)
ロマンあふれるポイントが多い本器ですが、
何より渋いと私が感じたポイントはこちら!

過去のオーナーはこれで渋くブルーズを奏でていたのか、酒場でスウィングを弾いていたのか…はたまたフォーキーに弾き語りしていたのか?
その辺りは定かではありませんが、大きく剥がれてこそはないものの、長年弾かれてきたであろう本物のヴィンテージギターとしての勲章です。
ペグもビザール好きの私にはたまらない連結型のペグとなっております!

残念ながらヘッド表側のNationalロゴは剥がれてしまっていますが、同時に欠損している事の多いロゴ入りのペグカバーは両側ともしっかり残っています。
サウンド面に関しては同時期のGibson L-50と比較するとやや硬質でアタック感があり、パーカッシブな印象が強いです。
それでいてただパーカッシブなだけではなく、特に6、5弦はピッキングするとしっかり存在感を見せ、輪郭のはっきりした出音で鳴ってくれます。
泥臭いブルーズやジャズにももちろんマッチしますが、個人的にはマッカーティPUやディアルモンド等を別で用意してガレージロックっぽくガンガンライブなどで弾いてみるのも面白いかと思うギターですね。
※マッカーティピックアップとはギブソンが1950年代にオプションでピックガード一体式のフローティングピックアップとして販売されていた物です。
こちらのギターには付属しませんのでご注意ください。
アーチトップ・ギター群雄割拠だった時代の古きよきロマンを感じていただきたい。
そんな味わい深い1本でございます。
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