スリンガーランド、その世界

ドラム史上に燦然と輝くビッグネーム、“スリンガーランド”。かつて世界最大を誇ったドラムメーカーであり、同時に今もその伝統が引き継がれる名門ブランドです。
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初めてその名前を目にするお客様も多くいらっしゃると思います。
“ラジオキング”という名前を聞かれたことがあるでしょうか。それはスリンガーランドの製品です。
内側に巻き込まれたような形状のフープをご覧になったことがあるでしょうか。そのルーツはスリンガーランドです。

石橋楽器新宿店ドラムフロアには、新旧のスリンガーランド製品が多数ございます。そこでこの場をお借りして、スリンガーランドをご紹介させていただきます。機材選びのご参考になれば、まことに幸いでございます。

※記事内容は随時、加筆・修正させていただきます。
※現在の当店取扱商品はこちらでご覧いただけます。


その歴史

■1920年代:バンジョーからドラムへ

スリンガーランドは、イリノイ州シカゴで誕生しました。
創業者はヘンリー・スリンガーランドという人物で、優秀なビジネスマンであったといわれています。1900年代に音楽の通信教育を始め、1920年代に入ると当時ブームとなっていたバンジョーの製造を開始しました。そしてバンジョーが下火になると、「ヘッド」という共通点のあるドラムの製造に乗り出しました。

スリンガーランド・ドラムの出発点は、“ドラムにおける完成の極致”と銘打たれた1928年版のカタログに見ることができます。
特に、「アーティスト」「プロフェッショナル」「ユニバーサル」の3グレードで構成されるスネアドラムは、クラシカルなフックタイプのフープとチューブラグの組み合わせが印象的な、戦前のスリンガーランドを代表するモデル群といえます。ビンテージ市場でも時折見かけるアイテムです。
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当時使用されていた雲型のエンブレム“クラウド・バッジ”です。1928年から1941年頃まで使用された、戦前のスリンガーランドを象徴するデザインです。(1990年代以降復刻されています)
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1929年の世界大恐慌により、ドラム業界は大きな変化を迎えます。当時の2大メーカーであったリーディーとラディックは共に打撃を受け、勢いを失いました。しかし新興のスリンガーランド社はこの事態を乗り切りました。

■1930年代:ラジオキング登場

スリンガーランド社は1930年代を通じて着実に成長を続け、トップの地位を占めるに至ります。
1936年のカタログで表紙を飾ったのは、“キング・オブ・スウィング”ジーン・クルーパでした。超人気ドラマーであり看板エンドーサーであったジーン・クルーパは、スリンガーランド社にとってかけがえのない存在であり、スリンガーランド・ドラムの評価を決定的なものにしました。
続く巻頭ページで新たなハイエンドモデルとして登場したのが、単板スネア“ラジオキング”です。ジーン・クルーパを含む大物ドラマー達の愛器として紹介され、とりわけ本人の発案とされる14×6.5インチ/ホワイトマリンパール・フィニッシュのバージョンは、“ジーン・クルーパモデル・ラジオキング”として同時に発売されています。
現在に至るまで別格の評価を受け続ける名器は、こうして誕生しました。
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■1950年代

戦時下を経て1950年、社長職はバド・スリンガーランド氏(当時29才)に引き継がれました。創業者の子息であり、その後20年に渡って経営に携わった人物です。
1955年には、現在まで引き継がれている2つの代表的なスペックが導入されました。
一つは内巻き形状の“スティックセイバー・フープ”。別名“リムショット・カウンターフープ”。
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もう一つは瓢箪型の“サウンドキング・ラグ”です。別名“1955”ラグ。(画像はスネアドラム用ダブルエンドタイプです)
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同じ年にかつてのビッグネーム“リーディ”を獲得し、ラインナップの強化も図っています。
1958年には、シンプルな内面当たり方式の“ラピッド”ストレイナーが登場。こちらもその後定番となりました。画像は1960年代のものです。
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■1960年代:ナイルズ移転

1960年、スリンガーランド社は生産体制を強化すべく、創業の地シカゴを離れ、州内の新天地ナイルズに移転します。60年代はドラムの生産量が増大した時期であり、それを見越しての移転といえます。ゴールド地にNiles, Illinoisと記された楕円形の“ゴールド・ナイルズバッジ”がこの時期の目印です。
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1963年頃からは、シリアルナンバーの記入も始まっています。(画像はナンバー部分を削除済みです)
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メタルスネアが本格的に再導入され、ブラスシェルの定番“サウンドキング”が誕生しています(1963年カタログ)。
内巻きフープと瓢箪ラグの組み合わせはこの時期完全に定着し、スリンガーランドスネアの顔となりました。
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■1970年代:シルバーバッジ

1970年、バド・スリンガーランド氏が社長職を引退し、経営権は複合企業CCMに引き継がれます。エンブレムもそれまでのゴールドからシルバーへと、カラーが変更されました。
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定番モデルが出揃い、充実したラインナップのもと、生産数も着実に増大していった時期です。

1980年代には他のアメリカ国内メーカーと同様、苦しい局面を迎えています。CCM社が経営権を手放し、所有者が変遷しました。

■1990年代:ブランド復活

1990年代は、ブランド復活の時期となりました。ギター製造の王者ギブソン社のもとで製造が再開され、テネシー州ナッシュビルの製造拠点から高いクォリティを備えたハイエンドモデルが生まれています。戦前のクラウドバッジも復活。国内でも短期的に正規輸入が実現しています。
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2003年には、製造地をアーカンサス州コンウェイに移し、2度目の復活が果たされました。国内輸入も単発的に行われました。
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主要モデル
()内の年次はおおよその製造期間です

■デラックス・スチューデント・モデルDELUXE STUDENT MODEL(1963-76)
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1960-70年代を通じての定番といえる、エントリークラスのモデル。10年以上に渡り製造されたロングセラーです。1963年に登場し、1976年まで製造されています。
特徴:6テンション、ウッドシェル、内巻きフープ
仕様:レインフォースメント付き3プライ・ウッドシェル。“スティックセイバー”フープ、“サウンドキング”ラグ、“ラピッド”ストレイナー。
サイズ:14×5.5インチのみ。ワンサイズのモデルです。
フィニッシュの違いにより、2型番で展開されています。カバリングのほうが高額でした。1976年にはNo.161に一本化されています。
No.161 パール・フィニッシュ(カバリング)
No.162 ラッカー・フィニッシュ(ニス塗り)
当時のエントリースネアの標準といえる、6テンションモデル。シンプルなスネアですが、現行品にはない魅力を持っています。
薄く軽量なシェルによる、ローピッチでウォーム、かつライトなリアルビンテージ・サウンド。内巻フープがサウンドに奥行きを加えています。
関連モデル:
□ハリウッド・エースHOLLYWOOD ACE(1958-1976)
同時期の8テンションモデル。仕様的に共通しており、上級モデルといえます。
□パイオニアPIONEER(1960-74)
ライバルメーカー、ラディック社の6テンションモデル。デラックス・スチューデントと並ぶ、6テンションの代表的なモデルといえます。

主要スペック

■ラピッドストレイナ―
シンプルな内面当たり方式のストレイナー。1958年に登場。仕様変更を重ね、2003年の再生産時にもラジオキングその他に使用されています。
ラディック社の定番ストレイナー“P-85”とは、取付穴位置がほぼ同じであるようです。
1962年頃のものです。
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1963年から67年頃のものです。12穴から2穴へ仕様変更されています。
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1970年代。
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2000年代。大きく“S”の文字が入っています。
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知れば知るほど知りたくなるスリンガーランド。新宿店のみならず、石橋楽器各店にも在庫がございます。
また、新宿店ではスリンガーランド製品の買取も、大歓迎中でございます。査定額など、ご相談いただけますと、まことに幸いでございます。

《参照》
◎ウェブ
公式サイト
“Vintage Drum Guide”
◎刊行物
“The Slingerland Book” by Rob Cook
“Guide To Vintage Drums” by John Aldridge
『ヴィンテージ・ドラム・リ・ビュー』リットーミュージック


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