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Vol.8 Martin D-45

2021.02.19 [FRI]

Vol.8 Martin D-45

第8回は、アコースティックギターの最高峰「Martin D-45」をご紹介。

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今回登場するギターの紹介

Martin D-45 Standard 2018

Martin

D-45 Standard 2018

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Martin D-45

Martin D-45 の足跡

マーティンD-45は1933年に発売されました。最初の一本はシンギング・カウボーイ、ジーン・オートリーのために作られました。アバロンのインレイを施した贅沢かつ豪華なギターで、スターのステイタス・シンボルでした。91本が作られたところで第二次世界大戦が激化。戦争の影響を受けて1942年に製造が中止されてしまいます。しかしながら、復活を望む声の高まりを受けて1968年に再生産が開始されました。ちなみに、ジーン・オートリーのD-45は、スロッテド・ヘッド、12フレット・ジョイント、指板に彼の名前がインレイされていました。後にデザイン、仕様が変更されていきますが、私達が思い浮かべるマーティンD-45と言えば、やはり14フレット・ジョイントで指板に六角形のインレイが施されたものでしょう。

1970年代とD-45

再生産から間もなくして、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSNY)がD-45を使いました。彼らと共にD-45が一躍注目を浴びることになります。デイヴィッド・クロスビー、スティーヴン・スティルス、グレアム・ナッシュ、ニール・ヤング、CSNYの全員がバークレーの楽器店でD-45を買ったことは語り草となっています。

CSNYは当初はニール・ヤングがまだ参加しておらずCSNとしてスタート。彼らはアコースティック・サウンドとエレクトリック・サウンドを大胆に融合、そのダイナミックなコーラスと演奏のスタイルは以降のアメリカのウエスト・コースト・ロックの礎となったばかりか、1970年代の日本のフォーク・シーンにも多大な影響を与えました、この『4ウェイ・ストリート』のジャケットにもD-45を持つ彼らの写真が使われています。

アバロンのインレイを施したゴージャスなルックスだけではなく、ボリューム、サスティン、倍音豊かなリッチなトーン、そしてステイタス性、全てが最高峰と呼ぶに相応しいギターです。さすが世界のトップ・プレイヤーが惚れ込んだだけあります。

ところで、私達の世代が若かった頃は、こういったフォークの専門誌でさえ、楽器の情報は今ほど多くはありませんでした。むしろ、この『Made In U.S.A. Catalog』のようなカタログ本や『ポパイ』のようなファッション誌でマーティンなどの海外ブランドの製品に興味を持ったという方も少なくないでしょう。

『Made In U.S.A. Catalog』にはマーティンのカタログから複写された写真が紹介され、『ポパイ』の創刊号には、カリフォルニア州サンタバーバラの街を紹介する記事中にD-45と00-45が登場しています。私たちは、これらの本を通じて、ファッション、スポーツ、車、アウトドア・ライフ、楽器といった、ありとあらゆるアメリカ的なアイテムやライフスタイルへの憧れの気持ちを育んでいきました。マーティンD-45もターゲットの一つでした。ちなみにこの当時のD-45の定価は¥800,000。御茶ノ水の楽器店のショーケースに飾られたD-45を見てため息をついたものです。材料の違いや、楽器の構造の用語すら知りませんでしたが、スペックよりもステイタス性に惹かれました。

D-45で奏でられた名曲

数々の伝説を生んだマーティンD-45ですが、ここで、D-45で奏でられたナンバー、D-45で奏でたいナンバーから何小節か切り取って弾いてみましょう。まずは冒頭でも演奏した、クロスビー・スティルス・&ナッシュの「組曲:青い目のジュディ」です。

スティーヴン・スティルスが奏でる6弦からEEEEBEという変則チューニングの響きが独特です。実際にはファースト・アルバムのジャケットにはD-28が写っていますが、後年はD-45も使用していました。私が観た90年代の2度の来日公演でもD-45を使用していた記憶があります。深い低音、ダイナミックなコード・ワークは近年の音楽では聴くことができませんね。1970年代を象徴するサウンドと言えるでしょう。

さて、CSN、CSNYは解散、再結成を繰り返していますが、それぞれソロ活動も盛んです。特にニール・ヤングはソロ・アーティストとしての人気も絶大です。『ハーヴェスト』でもMartin D-45が使用されたと言われています。

冒頭の「アウト・オン・ザ・ウィークエンド」のズンズンチャラスカと聞こえるギター・ワークは日本のフォーク・ミュージシャンも真似ていました。ヒット曲「孤独の旅路」や「ダメージ・ダン」をコピーした方も多いでしょう。

日本のフォーク、ニュー・ミュージック・シーンをバックアップ・ミュージシャンとして支えてきている石川鷹彦氏もD-45の愛用者として良く知られています。以前、石川さんをお招きしてトーク&ライブのイベントを開催したことがあります。そのときうかがったお話しでは、D-45を入手してからしばらく、お仕事でほとんどD-45を使っていたそうです。伊勢正三がかぐや姫の作品として発表し、かぐや姫解散後に結成した風のヒット曲となった「22才の別れ」のリード・ギターを石川さんが弾いたことも良く知られています。

単音で弾いてもD-45らしく、ラグジュアリーで艶のあるトーンですね。センチメンタルな側面をも持ち合わせるD-45は日本のフォーク・ソングの叙情性にも良くマッチします。

このように多彩な表現力を持つD-45ですが、元々はカントリー・ミュージック向けのギターです。土の香りのする音楽を奏でるのが真骨頂と言えるかもしれません。

D-45現行モデルのご紹介

それでは最後にD-45の現行モデルの主な仕様をご案内いたしましょう。D-45は2018年に仕様変更がなされ、商品名がD-45スタンダードとなりました。

まず各部の木材ですが、スタイル45のモデルのトップにはプレミアム・グレードのシトカ・スプルースが採用されています。見た目が美しいばかりでなく、板の段階で叩いて良く響く部分を選んでいます。素晴らしい鳴りの理由はここにあります。サイドとバックにはイースト・インディアン・ローズウッドが採用されています。もちろん、トップ、サイド、バックともに単板を使用しています。ネックには今なおジェニュイン・マホガニーが採用されています。指板、ブリッジはエボニーです。ボディのトップのみならず、サイド、バックにも施されたアバロンのインレイもスタイル45を象徴しています。そして、このヴァーティカル・ロゴをフィーチャーしたヘッドストック、ヘキサゴンのポジション・マークに憧れました。

外観や力木の構造は戦前の製品を思わせる仕様に回帰しました。オープン・タイプのペグが採用され、トップのフィニッシュには経年による深い色味を再現するエイジング・トナーが採用されました。ヴィンテージ・ライクな雰囲気を醸し出しています。またトップの力木はフォーワード・シフトしたXブレースでスキャロップド加工が施されており、より明るく、広がりを感じさせるサウンドになっています。

このようにヴィンテージに回帰した部分が多いのですが、ネックは現代的な演奏スタイルにマッチした薄手のシェイプが採用されています。演奏性は抜群です。ヴィンテージ顔でありながら、今のニーズをしっかりと捉えています。

いかがでしょう。高価ではありますが、世代を超えて受け継がれていくことができるアイテムです。また、プロでもないのにD-45を持つのは気が引けるとおっしゃる方もいらっしゃいますが、贅沢はアマチュアの特権です。爪弾くだけで、音色に酔いしれたり、癒されたりするでしょう。

懐かしいレコードを引っ張り出して、一緒に演奏するのも楽しいです。男のロマンの極みと言えるギターです。休日に、最高のギターを奏でる幸せを味わってください。

DISCOGRAPHY

Crosby Stills & Nash

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Harvest / Neil Young

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22才の別れ / かぐや姫

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PROFILE

白井 英一郎 | Eiichiro Shirai

白井 英一郎

Eiichiro Shirai

1960年横須賀生まれ。米軍基地文化の下、母親の影響で幼少時よりジャズ、カントリー、ハワイアンに親しむ。吉田拓郎を聞いてフォーク・ギターを始め、石川鷹彦をきっかけにブルーグラスにも興味を抱く。そしてイーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンドなどに傾倒。アコースティック・ギター、エレキ・ギターのほか、スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線を弾くマルチ・プレイヤーとして演奏活動をするほか、音楽誌や楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代をこよなく愛し、音楽のあるスロー・ライフを実践するロハス・ピープル。2020年11月に定年を迎え、現在は嘱託社員として、お客様のライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。

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