TOP

1万円以上ご購入で送料無料!4月30日(火)まで!

イシバシ楽器

一人でも多くの人に
音楽に参加する楽しさを伝えたい

カテゴリーで検索

EFFECTOR
検索トップへ戻る →

検索を閉じる

OTHER INSTRUMENTS
検索トップへ戻る →

検索を閉じる

  • このページをはてなブックマークに追加

FTTペダルボード製作実習

雑誌などで掲載されているFREE THE TONE(以下、FTT)のシステムボードは、一体どのように組まれているのか。 どのようにすれば、あのように綺麗に配線が出来るのか?気になっている方も多いかと思います。
この度、イシバシ楽器店はその秘密 を探るためにフリーザトーン様を訪問し、実際にプロのボードを組んでいる FTTスタッフの方々直伝のボード組みのノウハウをレクチャーしていただき、1つのボードを完成させました! 普段見る事のできない音楽業界の最先端とも言えるFTTのボード製作現場、今回はその作業工程を詳しくご紹介致します!

エフェクターボード製作|下準備編

まず、作製するボードの下準備を行います。何にしても下準備の良し悪しで結果が大きく変わりますよね? FTTでは、エフェクターボードの掃除からスタートです。全面をアルコールを湿らせた紙製のウエスなどで拭きあげていきます。

この作業で、ボード上のゴミ、汚れをふき取り、マジックテープ等の接着面の張り付きをより強固なものとしていきます。

次に、使用するエフェクターの底面も同じようにアルコールで湿らせた紙製のウエスなどで拭いていきます。 この時にゴム足を外す作業が伴います。 ゴム足についている接着テープが底面に残ってしまった場合は、マジック テープの粘着性を高めるためにもきれいに落とします。

アルコールを使用する際には、エフェクターの機種によって、薄い塗装が施されているモデルは塗 膜を剥がしてしまう恐れがあるので注意が必要との事。 今回使用したFTT 製品では、RED JASPERの塗装が薄いため、そういった製品についてはアルコールを薄めたり、乾拭きにて対応します。

また、組み上げ作業に取り掛かる前に、エフェクターの動作確認の他、綿棒等を使ってジャック部 分の磨き上げや汚れ落としも行います。 配線後にエフェクターが動作しないトラブルや、ジャックのガリなどによるノイズを 予め防ぐ為には、非常に重要な作業になります。 特に、長らく愛用したペダルをボードに組み込む際には後々のトラブルを未 然に防ぐためにもこの作業が必須となります。

そして、エフェクターをセッティングする前に電池は抜いておく事も忘れずに。基本的にボード内ではパッチケーブルが接続されたままの状態となるため、 電池が入っていた場合にはOFF時でも電池を消耗してしまうた め、パワーサプライによる電源供給を行う事が基本となります。電池が入ったままだと 液漏れの原因ともなりますので、確実 に電池を抜いておきましょう。

エフェクターボード製作|レイアウト編

さて、いよいよボード上にエフェクター、その他機材をレイアウトしていきます。この時に、FTTで重視されているのは以下のポイントです。

◆プレイアビリティ

どんなに綺麗に組んだボードであっても、ユーザーが扱いにくくては本末転倒です。 FTTでは、「プレイヤーが求める操作性を最優先」した上で、「実際にON/OFFの切替えを踏みかえるものを手前側に」という部分を意識し、 どの機材をどのように使用するのか?ペダルは左右どちらの足で踏むのか?等も含めて確認した上で、操作しやすいレイアウトを考えます。

今回はLINE6 M5について、FTTから「TAPはどちらの足で踏まれますか?」との質問があり、左足でタップテンポを入力する事を想定してM5を ボードの左側に配置しました。こうした細かい部分まで徹底したケアが行われるのは、プレイヤー目線のFTTならではの強みですね! その他、 Bogner UberschallのboostコントロールはARC-53Mにてコントロールしますのでボードの奥へ配置をしております。

◆電源と信号ライン配置

こちらも、システムボードを組むにあたっては非常に大事なポイントです。電源はボードの中で一番ノイズ発生させる箇所となります。 軽量なスイッチングタイプのアダプターでも微量なノイズが起こっており、ACアダプター等の電源類は主要なノイズの発生源となります。 そして楽器からボードには、基本的にハイインピーダンス(外的ノイズに弱い信号)で入力されます。ノイズに弱い信号の近くに ノイズ発生元の電源があったらどうでしょう?どんなにローノイズなエフェクターでも入力されてくる信号にノイズがあるの で、ボード全体が ノイジーになってしまいます。そのため、FTTではボード内において「ハイインピーダンスのラインと電源系を可能な限り 遠ざける」事が意識され、 今回も右端に信号ラインの入力元であるジャンクションボックスJB-21を配置したので、そこから距離のある左端へ電源系をまとめました。

マジックテープ1

マジックテープ1を使用したのは下記機材です。 ・Free The Tone:ARC-53Mスイッチャーは両端と中心にテープを貼っています。ガチガチに固定してしまうと踏んだ時の衝撃が逃げるところがないので、多少ゆとりを持たせる為にマジックテープ1を採用しています。

・Free The Tone:RED JASPER
・Bogner:Uberschall
・LINE6:M5
上記3点は底面の面積もある為、2箇所にマジックテープ1を貼ります。

マジックテープ1:今回使用しているVelcro社製のボード固定テープはFREE THE TONEがいままでのノウハウを基にVelcro社に特別仕様にてオリジナルオーダーしている製品になります。

ここでのポイントが

①底面ネジにかからないようにすること

エフェクター自体にトラブルが起こった時に、裏蓋を外してメンテナンスを行う事を想定した際、 ネジ穴部にかかったマジックテープを剥がす作業が非常に手間になります。不測の事態となった場合でも、 可能な限り迅速に対処する事が求められるプロの現場においては、こうした細かい気配りも大切な部分です。

②シリアルシールを隠さないこと

ベルクロテープは粘着力が強い為、シールタイプのものだと、テープを剥がした時に一緒に剥がれてしまい、 メーカーでの保証が受けられない場合があります。また、将来的なシステム変更があった際のリセールバリューを損なう 原因ともなるため、しっかりと固定する事を優先としながらもシリアルを可能な限り隠さないように作業が行われます。

マジックテープ2

マジックテープ1に比べてより強力な固定力のあるマジックテープ2を電源など絶対に動いてはいけない機材や、 筐体が小さくしっかりと固定しないといけないエフェクターには使用します。 本ボードではXotic:EP BOOSTERにマジックテープ2を貼っております。

また、今回のボードではJB-21とPT-1D(電源)にも、このマジックテープ2が採用されております。 入力口であるJB-21にぐらつきが出ると、シールドのプラグとジャックの接点が動いた際のノイズや、その他トラブルの元となります。 電源も同様に、全体への電力供給をしているので、こちらもガッチリ固定し、プラグの外れなどのトラブル対策になります。

エフェクターボード製作|配線編

ここまでの作業を終えて、ようやく機材の配線作業が始まります。まず、動かすことの無い機材は先に固定をしていきます。 今回はARC-53M、JB-21、PT-1Dの3機種。底面に貼られたテープのメス側の台紙を剥がし、ゆっくり丁寧にボードへ固定します。
この時、その他の機材は敢えて固定をしません。理由については作業工程の中で順次ご説明いたします。
さて、配線といってもボード内には何種類かのケーブルが存在します。 今回は【リンクケーブル】【DCケーブ ル】【ACケーブル】【MIDIケーブル】の4種を使っております。

手順①|電源ラインの確保

まずは、PT-1DのDCアウトから各機材への電源接続。昨今、「なるべく省スペース設計で」というリクエストが多くのアーティストからあるようで、 FTTではDCケーブルはLLタイプ をメインで使用されております。そして、DCケーブルは基本的に長さが決まっているので、バッチリの長さを 見つけるのは なかなか難しいところです。この長さの見方ですが、イメージとしては各機材へ行く中で、直角を意識してケーブルを這わせていく事です。

最短距離で配線してしまうと、ケーブルを固定していく工程の中でケーブルがつっぱってしまい、最終的には全く余裕がない 配線になって抜けやすくなったり、 ケーブル、DCジャックへの負荷となります。
こうした作業においては、「ケーブルの長さは可能な限り短く、最短配線で」という意識がどうしても働いてしまいがちですが、僅かに長さが余ってしまっても 問題ありません。ケーブルをくるっと回してあげて、画像のよ うな接続をしてあげると、後の結束作業等の時の余裕となります。

また、FTTではDCケーブルの挿し方についても拘っております。プラグから抜いた時にそのDCケーブルのケーブル部分 のしなりやテンションによって、 エフェクターのDCプラグ方向へユックリと動く向きとなっているのを確認してから差していただくと、ケーブル自体の力が エフェクターの方へと向きますので 抜けにくい配線になる・・・との事で、これを全てのエフェクターに対して徹底。まさに「匠の技」とも言えるポイントです。

続きましてはACアダプタ?から伸びる長いコード。これもボードを作っていく上で悩むポイント の一つですが、写真のように一度まとめ、多少余裕のある長さを残し、 両端を結束バンドで固定します。この「両端」をとめ るのがポイントです。ケーブル内には電流が流れますのでクルクルと輪を作っていくと、ギターのピックアップの コイルのような状態となり、ノイズを拾いやすい環境を生み出 してしまいます。この輪を小さくする為に、両端をバッチリ止めてノイズを乗り難くします。

ここまでで、電源ラインの確保が出来ました。

手順②|信号ラインの配線

電源ラインが確保できたので、今度はリンクケーブルを使って各機材を接続していきます。今回使用したはFTTのソルダーレスケーブル(ハンダを使わない ケーブル)CU-416を 使って配線しました。流れとしては、信号入力側からアンプへの出力方面へと順に配線をして行きます。

◎CU-416の信号ラインの向きについて

シールドケーブルには、その能力をフルに発揮するために信号ラインの方向性が予め定められたものもございますが、 今回のCU-416はどちらの向きで使っていただいても問題の無い製品です。しかし、FTTのボード組みの現場では CU-416は被覆に書かれている Free The Toneの文字を逆読みする方向が信号の流れになるようレイアウトされており、 FTT曰く「この方が音質面で良い作用をもたらす事が多い」との事。

パッチケーブルの長さの合わせ方としては、これもDCケーブルと同じで、画像のように通り道を 直角に意識していくと、結線の際に必要なゆとりが確保できます。 長さを決めていざ切り出し!さぁニッパー・・・とはいかずに、フリーザトーンでは剪定ばさみ(盆栽とかで使うやつですね)を使っていました。

理由としては、ニッパーでは圧を加えてケーブルをカットする為、切り口が楕円形になってしまい、各プラグへ差し込む時にうまく入らなかったり、 接触トラブルの原因になるそうです。その点、剪定ばさみ等で切り出すと、しっかりと円形を保ったままケーブルのカットが 出来るのでプラグへ差し込む時も ストレス無く、またトラブル無く差し込めました。

両端のプラグを差込み、さぁエフェクター接続!!・・・の前にまだやることがあります。それは 作成したケーブルがきちんと導通しているかの確認です。 この確認を省略して配線を進め、最終的に音が出ない・・・等の事態になると、不具合を起こしている部分を調べるために膨大な時間を費やす事になってしまいます。

そうしたトラブルを防ぐため、導通の確認にはテスターを使います。チップ同士・スリーブ同士、 そしてチップとスリーブで確認をし、問題がなければ両端を綺麗に拭く、 これもポイントです。手でベタベタと触って汚れたままでは、後々汚れが原因として、プラグ、ジャック のガリの原因となります。

以上の作業を全てのリンクケーブルで繰り返します。これがなかなか神経をつかいます。しかし、ここで集中力を切らしてはいいボードが出来ないので、 ひたすら集中してケーブルを作っていきます・・・今回は12本作製しました。

ソルダーレスケーブルの作り方はこちら↓

エフェクターボード製作|サウンドチェック編

ここまでで、ようやくシステムボードの形が見えてきました。完成まであと少し!だからと言って焦ってはいけません。

ここでサウンドチェックを行います。チェック方法も2段階。まずは、通常の音が出るかどうか。これが出なかったら洒落になりません・・・

次にARC-53Mをマニュアルモードに切り替え、各エフェクタ-の切り替えが出来ているか、音が変化するか、MIDI 信号・コントロール信号は正常に送られているか等々、 確認します。ここまでで問題が無ければ次の段階へ移行します。

次の確認はシステムボードが持つノイズの確認です。FTTでは、このノイズチェックの際に接続したギターのボリュームを0、アンプのVOLUMEをフルテンに セットしてノイズ検証を行っておりました。まず、AMP自体が持つノイズを確認した 後にシステムボードを接続し、どのくらいの違いがあるかを確認しました。 通常の信号、各エフェクターのもつノイズ、さらにはチューナーのノイズに至るまで、徹底的にチェックしていきます。

この時に、敢えて別にACアダプターを用意して信号ラインに近づけたところ、一番ノイズに弱いJB-21付近で大きくノイズを拾いました。 改めて、信号ラインと電源の位置関係の重要性を感じました。

エフェクターボード製作|結束、そして完成へ?編

最後の工程へやってまいりました。ここまでで問題をクリアしたペダルボードを美しく、かつトラブルのないボードへと仕上げていきます。 それはケーブル類の結束です。さて、ここで話を振り返りましょう。

配線編で、多くの機材を敢えて固定してきませんでした。その理由はこの最後の作業の為です。配線編で機材を固定してしまうと、 結束がしにくいのはもちろんのこと、結束により多 少ケーブルの長さが短くなってしまうので、結果的に負荷の多いボードになってしまう為です。 それらに柔軟に対応する為、完成編まで多くの機材を固定せずに置いておきました。

さて、その結束ですが、まずはARC-53Mに近いケーブルからまとめていきます。この時にケーブルが垂直にARC-53Mへ入らないように、 写真のように余裕を持たせてまとめていきます。コレは美学の話になりますが、信号ラインがまっすぐにまとまっているとすごくすっきりして見えますよね! そして、動きを少なくする為に結束バンドで配線をまとめていきます。この時にボードに結束バンド用のベースを使用し、そのベースに結束バンドを通し、 まとめたケーブルをボードへ固定します。

各箇所結束が終わり、エフェクターを固定、そして、結束バンドの足を切り、ようやく・・・ようやく完成!ここまで長かった・・・感動モノです!! 「見た目が綺麗なボードは、ノイズも少ないんです。」との言葉でクールに締めくくったFTTさん、本当にカッコよすぎますっ!!!

PHOTO GALLERY

実際に製作してみて・・・

今回は比較的小規模のシステムボードでしたが、作業自体はほぼ丸一日。こんなに大変だとは正直思っておりませんでした。 作業の下準備から完成まで、一貫して「プレイヤーのこと」を思い、「トラブルへ強い」システムを組む為に、あらゆる方向から想像力を膨らませ、 作業工程ひとつひとつにトラブル対策を施すことの重要性を改めて体感いたしました。

今回もボード制作を行う作業部屋のすぐ近くには、日本を代表する超有名ギタリスト2人分(別々のバンドですが、どちらも世界的に有名なバンドのお方です。。)の メイン機材がFTTでのメンテナンスのために到着しており、足を踏み入れるのも恐れ多いような環境の中での作業でしたが、何故FTTにはそうした第一線で活躍する 一流アーティストの機材が集まってくるのか、今回のボード組みへの徹底した拘りを目の当たりにすることで、納得できました。

また、多くの時間をかけて出来上がったボードを見ると、改めて感動してしまった自分がいます。この感動を多くのユーザー様にも共感していただけるよう、 私も日々研究と技術力向上を目指したいと思います!ご協力頂きました、フリーザトーンに感謝と共に御礼を申し上げます!

今回の研修を快く引き受けてくださいましたFTTの代表の林氏と、実際にプロが使用するボード等を日々手掛けており、今回のボード制作において FTTの凄技ポイントの数々を丁寧にレクチャーしてくださった佐藤氏、 日本のバンドを支えていると言っても過言ではないFTTの皆様、本当にありがとうございました!

ペダルボードに関しまして、ご質問、ご相談などございましたら、イシバシ楽器渋谷店までご来店くださいませ!今回の記事にてご紹介できなかった部分も踏まえて、 ご説明させていただきます!また、今回作成いたしましたボードも渋谷店にて展示しておりますので、そのボードに関するご質問もお待ちしております!!

渋谷店エフェクター担当:加涌(カワク)

FREE THE TONE 取扱店のご案内