この一枚を聞け![YESSONGS / YES]



 今年は筆者であります私JSが、1970年代に衝撃と影響を受けたライブアルバムを紹介していきます。第2回に紹介するアルバムは3枚組の名盤、1973年にリリースされた「YESSONGS(邦題:イエスソングス)です。

 1970年代初頭から75年くらいまでにかけて、英国ではプログレッシブロックが全盛でした。その音楽性は変拍子が多くて曲の尺が長く、1つのテーマや題材から曲を物語にし作る“コンセプトアルバム”が支流でありました。英国ではPINK FLOYD、KING CRIMSON、YES、EMERSON,LAKE&PALMER、GENESISからなる5大プログレバンドなるカテゴリーも作られるほど、プログレ真っ盛りの年代であったのです。

 その中でもよりクラシカルでメンバーひとりひとりの演奏技術が高く評価されていたのが、今回紹介するYESです。このライブ盤における基本メンバーはヴォーカルにジョン・アンダーソン、ギターはスティーヴ・ハウ、ベースにクリス・スクワイヤー、キーボードはリック・ウェイクマン、ドラムにアラン・ホワイトで、YESの中でも最も脂の乗っていた布陣でもあるのです。

 このアルバムは1972年のツアーをライブ収録したアルバムなのですが、1972年にリリースした5thアルバム「CLOSE TO THE EGE(邦題:危機)」まではドラマーがビル・ブラッフォードでありました。ちなみに最近ではブルーフォードと呼ぶそうです(苦笑)。しかし、収録直後にKING CRIMSONへの参加が決まり脱退。その後任に加入したドラマーこそがアラン・ホワイトなのです。しかし、加入してすぐにこれだけの曲を覚え、ライブアルバムをも収録してしまうその吸収力こそが、当時のミュージック・パワーそのモノの様な気がしますね。

 アルバムはストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」のSEで幕開け、1曲目はアルバム「CLOSE TO THE EGE」に収録されている"Siberian Khatru"でスタートします。この幕開けが非常にカッコよく、いきなりスティーブ・ハウのテクが炸裂します。そして何より凄いのはコーラス!凄い演奏をしながらこれだけのコーラスをこなせるプログレバンドはYESだけだと、私は思います!

 アルバムの中でのドラムをほぼ全てアラン・ホワイトが叩いているのですが、"Perpetual Change" と "Long Distance Runaround"〜"The Fishという曲は、ナント前記のビル・ブラッフォードが叩いているのも注目すべき点です。オカズの叩き方等を聴けばマニアなら解りますね!

 また、このバンドは当時物凄い数の楽器を使っていました。スティーヴ・ハウはGibson ES-175のイメージが非常に強いですが、SUPER400、ES-5、ES-345TD等に加え、ライブではフェンダーのスチールギター、EDS-1275なども加え、幅広い音を出しています。キーボードのリック・ウェイクマンに至っては自分の周りをピアノ、ハモンド、メロトロン、ムーグ等で囲み、両手を使って弾くのが十八番となっていたのです!ベースのクリス・スクワイヤーのサウンドはマエストロ・ベースブラスマスターで歪ませた音が特徴的で、とてつもないコーラスをしながら、強烈に凄いフレーズを弾きまくるという凄腕のベースプレイヤー。とにかく言い出したらキリがない猛者たちの集団なのであります。

 私がこのアルバムを入手したのは発売2年後の1975年でした。中学生だった当時の私にとっては3枚組の価格は高価過ぎ、小遣いや誕生日プレゼントなどを集中させて購入した記憶があります。70年代半ばの¥5,700は多分、現在の¥20,000近くに匹敵するはずです(笑)プログレにドハマリしていた中学生も当時にしては珍しかったのではないかと思いますね。

 そしてYESのアルバムで最大の特徴はジャケットデザインにもあります。ロジャー・ディーンという超有名なアートデザイナーを起用してのジャケットは絵画のように美しく、YESのアルバムのほぼすべてを手掛けています。YES以外にもASIAやURIAH HEEP、BUDGIE、GENTLE GIANTといった多くのバンドのアルバムデザインを手掛けているのも要チェックですね。

 しかし、ロックが生き生きとしていた時代の事って話し出したら止まらないのです(苦笑)。最近のアメリカの音楽チャートを見ると、ソロ歌手ばかりでバンドが居ないのが非常に悲しい事です。昔の音楽が全てとは言いませんが、やはり音楽が発展途上にあった時f代の音楽は鋭さが違うのです。また、この時代の音楽を作っていたアーティスト達も、皆20代半ばである事も大きな驚きであるのですね。そんなこと感心しながら今一度このアルバムを堪能します。とにかくこの1枚を聞け!!

【こちらももう一度聞け!!】

[CLOSE TO THE EDGE / YES]