ロサンゼルス空港から真東の方向に車で1時間ほど移動したカリフォルニア州コロナ市にフェンダーのメインファクトリーがあり、カスタムショップもこの施設内にある。

コロナ工場では、アメリカン・シリーズ、アメリカン・デラックス・シリーズ、アメリカン・ヴィンテージ・シリーズなどのレギュラー製品が日産約700本生産されているが、カスタムショップ製品に関しては日産僅か50本程度だそうだ(2005年現在)。カスタムショップの製品は、ほとんどの工程が手作業により行われており、熟練の職人の手により高い水準の楽器を製作している。

カスタムショップ内は、オフィス、マスタービルダー・ベンチ、カスタムショップ・ファクトリーに区分されている。オフィスでは、カスタムショップ製品の認定書などでしばしばその名を目にするカスタムショップ製造責任者アレックス氏をはじめ、営業部門、マーケティング部門から成り立っている。ここでは、日頃からトップミュージシャンやギターテクニシャンが訪れたり、世界中のディーラーからのカスタム・モデルのミーティングが行われたり、臨機応変に対応できる体制が整っている。今回このカスタムショップのオフィスにてマスタービルダーへのオーダーのため、各マスタービルダーと面談することになった。


マスタービルダー

<ジョン・イングリッシュ>

フェンダー・カスタムショップはこの人抜きでは語ることの出来ない重鎮シニア・マスタービルダー。気さくな人柄で、多忙にもかかわらず快くオーダーに応じてくれた。メイプルネック、ローズネック、ストラト、テレ、ジャズベ、プレベなどヴィンテージ・スタイルのサンバーストやレアカラーものなど思いつくものを片っ端からオーダーしてまいりました!!やはり人気も絶大で常にかなりの数のオーダーを抱えていたり、NAMMショウなどのプロジェクトもあり、大忙しのようで、今回のオーダーに関して納期はしばらくかかりそうですが、詳細が分かりしだい順次ご紹介して参りますので乞うご期待!!今後の入荷状況にも注目してくださいね!

<マーク・ケンドリック>

日本での人気も高い大ベテランのビルダー。エリック・クラプトン本人のために製作したりと着実に名を上げている。今回、クリスティーズ・オークション・カタログでエリック・クラプトンがBBキングとともに写っている仕様の、ピックガードやPUカバーまでゴールドのゴールドレリーフのストラトや、90年代のナッシング・バット・ザ・ブルース・ツアーでも使用されていた、フレイム・ネックでオリンピック・ホワイト、ゴールド・レースセンサーx3そして、ブルース向けにクリーンサウンドで歪まないようブーストをやや押さえたハーフパワー・ブースト搭載という仕様のストラトをオーダー。
もちろん、大定番のブラックのストラトもオーダーして来ましたよ!

<ジョン・クル−ズ>

昨年、スティービー・レイボーンのNO.1ストラトを忠実に再現したモデルを製作したことで人気急上昇中のレリック加工が得意なビルダー。今後の活躍に期待!!


<デニス・ガルズカ>

マスター・ビルダーの中では一番若手で、オールマイティーに何でもこなせるビルダー。
最近ではストラトの5ウェイ配線のうち通常2番目のフロントとセンターPUのハーフトーンのポジションのところを、フロントとリアのMIXがなるように(いわゆるTLサウンド)した配線を提案し製作している。これにより、ストラトのサウンドのバリエーションにテレキャスのようなサウンドが増える。クリス・フレミングもデニスのこの配線を気に入っていて今後のモデルに取り入れるようだ。

<クリス・フレミング>

 
昨年、プレミアム・ギターショウでの実演が記憶に新しい、日本での認知度もグッとUPしたマスタービルダー!彼の製作した57ストラトのネックの握りは絶妙のシェイプでオリジナルに忠実な握り心地バツグンです。現在、新宿店に在庫ございますので是非ご覧ください。

<ユーリ・シスコフ>



今、テレキャスターを作らせるならこの人!!
ちょうど完成間近の50s TELE RELIC CAR w/BIGSBYを買い付けることが出来ました!非常に軽く、鳴りのよい好感触のギターであり入荷が待ち遠しい!近々、新宿店に入荷予定!!

<トッド・クラウス>

 
大柄な体格とは裏腹に緻密で繊細な作業を行うベテラン・ビルダー。今回はジェフ・ベックの愛用した"リトル・リチャード"と呼ばれたサーフグリーンでレースセンサーPU搭載のストラトをオーダー。乞う御期待!!もちろん最新版のホワイトの仕様もオーダーしてありますよ!!

<グレッグ・フェスラー>

ロベン・フォード・モデルの製作で有名なビルダー。最近ではヴィンテージ・スタイルのストラトなども精力的に製作しております。

マスタービルダー達と面談したオフィスのすぐ隣にはベンチと呼ばれるビルダー毎に独立した工房があり、ここで製作が行われている。


マスタービルダー達は、スペシャル・モデルの製作はもちろん、フェンダー製品の品質管理や、製品の研究開発等にも広く携わっている。

CUSTOM SHOPファクトリー

フェンダー社では指定の木材供給会社より仕入れを行っており、良質の材料を充分な量を確保している。
フェンダー社が設定した基準に基づき、大まかな材料の選定が行われた後(この時点で、カスタムショップ用と、通常のレギュラーモデル用とに分けられている)納品される。
納品されるとまず、カスタムショップ用の中からマスタービルダーが直々に材料を選定し、好みの材を確保している。この後充分にシーズニングされ木工加工される。

 
ボディーの加工はカスタムショップの物も、レギュラー・ラインの物も同じ建物内部で行われるが、カスタムショップの物は大まかな外周まで切り出した後は、ほとんどが手作業にて時間を掛けて行われ、レギュラー・ラインの物はNCルーターを用いて大量に加工される。

ネック材の加工は、ざっくりとルーターで分厚いネックの形まで削るとあとはノギスを片手にひたすら手作業で削り込んでいた。指板面のポジションマークとサイドのドットを入れNCによりフレットの溝が切り込まれ、その溝に手作業で丁寧にフレットが打ち込まれる。

フェンダー社ではほとんどのパーツが自社製である。いまだにレオ・フェンダーが使用していた60年代の機械が残っていたり、磨耗した機械を修復して使用されている。ストラトのトレモロ・ユニットや、PUや、PUカバー、ピックガードなど90%は自社製。

塗装ブースは、木片や埃等がブース内に入り込まないよう細心の注意が払われており、スタッフでさえ、責任者の許可なしには、立ち入ることが出来ない。
現在、塗装ブースは14箇所あるが、そのうちの3つがカスタムショップ専用のブースとなっている。
 


レリック加工

カスタムショップのタイムマシーン・シリーズのレリック加工は、ベテランの女性作業員のジャネットさんによる完全な手作業により行われていた。

塗装加工が終わったネックに、まずワイヤーブラシを用いて指板面の磨り減った風合いをつけ、電動の消しゴムでエッジをならし、ステインという黒い薄い油のようなものを染みさせ、また消しゴムでならしという作業を数回行い指板面の経年変化を再現し、ベルトのバックルを5個束ねた自前の道具で軽くヘッド部やネックサイド、裏面をたたきステインを染みさせ1000番のサンドペーパーを掛け、ダストスプレーを上下さかさまにして冷却スプレーとして使用しスプレーすることによって、塗装面に見事にウェザーチェックを再現する。
 



   

ボディーも美しい塗装がされた状態(かなり薄く仕上げられたラッカー塗装でまだツヤのある状態)から肘の当たるトップのコンター部分とバックのコンター部のすれてあたる部分にバフがけマシーンで、塗装が剥げるまでオーバーバフィングを行い、例のお手製のバックルと、半円筒状の細かい網のついた幅5センチ長さ30センチ程の金属の網棒でランダムにボコボコたたき傷つけ、ステインを染みさせ、サンディングしダストスプレーで冷却させウェザーチェックをつけて完成。


 
ペグやネジなどの金属パーツは細かい砥石がつめられた回転するつぼのような機械を使い、その中で20~30分程度まわすと金属の新品らしいツヤはなくなり、曇った風合いになる。さらに腐食剤等を使用し錆をつけ、経年変化を再現する。

これらの作業をほとんどジャネットさん一人に任されていて、時にはマスタービルダーのものも手伝うこともあるそうです。ちょうど実際にマーク・ケンドリック製作のテレ・ネックのレリック加工をマークと話し合いながら行っていた。
 

<アビゲイル・イバラ>


カスタムショップのPUももちろん自社製で、ここではアビゲイル・イバラ(アビーというニックネームで呼ばれている)は見逃すことが出来ない。超ベテランのアビーは、古いミシンの糸巻機のような機械を用いて、エナメル線を手繰りながら手巻きしていた。ペダルを足で操作しつつカウンターを確認しながらすごい速さで巻いていき、8003回転で見事にピタッと止まる。このように手巻きでPUを巻けるのはアビーと、アビーに手ほどきをうけたマスタービルダーだけである。昨年のプレミアム・ギターショウでクリス・フレミングがPUの手巻きを実演している。あとは2台のオートメーションの日本製の専用機によって、カスタムショップのPUが製作されている。

後は、セットアップブース。ベテランの専任の作業員により、ネックの取り付け、アッセンブリーの取り付け、ブリッジの取り付けが行われ、各ディーラーからのオーダーシートを確認しながら仕上げられ、梱包されて世界各国へ送られていく。
ちょうど、セットアップのブースでは日本向けのチームビルドの春畑ストラト10数本が仕上げに掛かるところであった。これらは近々に納品される予定との事だった。



こういった過程でカスタムショップの製品が製造されている。正直、思っていたよりもかなりの部分が手作業にて行われており、細心の注意の元、製作されている様子には多少、面食らった。もっと、オートメーション化されているものと勝手な想像をしていた。実際に、カスタムショップ製品がこのように製作されている様子を拝見すると、改めてその水準の高さや、職人の意気込の凄さを肌で感じることが出来た。

FENDERはエレキギターの歴史そのものであり、その伝統と誇り、技術を現在に継承し、現在も日々、進化している。


◎石橋楽器各店のFender Custom Shop商品情報