第60回(by ルーク居波)
メールマガジンをご覧の皆さま、今月も様々なギターの魅力をご紹介する「イシバシ三銃士のスーパーギター列伝」のお時間がやってきました。
本日も私ルーク居波が素晴らしきフェンダーの世界をご案内致します。
ここ最近店頭でよくお客様に尋ねられる事があります。それが「ローズウッドとパーフェローの違い」そしてもう一つ「最近アッシュ材のギターって作っていないのですか」という質問です。今回は楽器の話ではなく、木材のお話、フェンダー社の現在の代替材についてお話しましょう。
フェンダー製品で一般的に採用されている木材といえばアッシュ、アルダー、メイプル、ローズウッドですよね。50年代モデルといえばアッシュボディにメイプル指板、60年代モデルといえばアルダーボディにローズ指板が今までの定番でした。しかし近年では木材伐採の規制や資源の枯渇により様々な代替材が登場しています。その中でも最近、やっと定着してきたのがパーフェロー材でしょう。
2017年10月改正のワシントン条約(CITES)にてローズウッド材の国際的な取引に規制がかかったのは皆さんも記憶に新しいと思います。当時はローズウッドの輸出入の手続きの複雑さで様々なメーカーで取り扱いをやめたり、代替材を模索していました。店頭でもいち早く情報を聞きつけたお客様がローズウッド製品を吟味して購入していったのを覚えています。特にオールローズテレキャスターの高騰ぶりには驚かされました。(2019年8月の会議でCITES II分類のローズウッドを使った楽器の輸出入規制からの免除が決定しています。)
そんな中、フェンダー社はいち早くパーフェロー材に着眼し、積極的に採用していきます。もともとパーフェロー材はアコースティックギターやハイエンドブランドギター、フェンダー製品の中ではSRVモデル(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)やジャコ・パストリアスモデルのフレットレスベースなどで採用されていたこともあり、フェンダーファンの中ではすでに知られていたと思います。
フェンダー社は規制後、メキシコラインのローズウッド指板製品のほとんどをパーフェロー指板に変更します。2018年にはメキシコラインからプレイヤーシリーズが発表され、非常に好評を博します。このシリーズによりパーフェロー材の知名度が一気に増えたように感じます。ちなみに同時期にギブソンも一部パーフェロー指板製品をプロトタイプとして出荷していましたがボリビアンローズウッド(パーフェローの別称)と表記しており、その身を隠していた記憶があります笑。
さて肝心のパーフェローとローズウッドの違いですが、まずは学名分類から見るとローズウッドはマメ科ツルサイカチ属、パーフェローはマメ科マカエリウム属と同じマメ科ではありますがまったくの別物です。色合いもどちらも赤褐色ですが、ローズウッドのほうが濃く、パーフェローのほうが淡い色合いをしています。ローズウッドの代替材だけあって音もローズウッドに近いかと言われるとそうでもなく、その音は硬質で立ち上がりが早く、アタック感の強い傾向にあり、どちらかというとエボニー材に近い音響特性を持ちます。
個人的にはパーフェロー指板のサウンドはかなり好きですし、サスティンも良く、アタック感の強さもフェンダーギターとの相性は抜群です。しかしながら、やはり代替材という役回り故、ローズウッドに比べてまだまだ人気は得られていない印象です。要因は様々ですが比較的安価なモデルに多く採用されている点やローズウッドに比べて色合いが淡いことが上げられますね。色合い問題に関しては楽器業界に根深くある濃い指板こそ至高だという刷り込みもあるかと思います。ただ敬遠している方は是非一度試してみてください。非常に上質なトーンウッドであることは確かですから。
次に”最近アッシュ材のギターって作っていないのですか”という質問です。
去年(2020年)の4月頃にフェンダー社がレギュラーラインでのアッシュ材の使用をやめると公式に発表して話題になりました。たしかにここ数年アッシュ材を使ったフェンダー製品は見るからに減りました。USAの新製品、アメリカンプロフェッショナルⅡのラインナップでも現状アッシュモデルはなし、最近発表されたメイドインジャパンのハイブリッドⅡでもすべてアルダー材に統一されています。
アッシュ材は現在世界的に枯渇しています。その要因は主に二つあり、一つは害虫「エメラルド・アッシュ・ボーラー」の脅威です。今から30年ほど前にアジアから来たこの害虫は現在、大量繁殖を遂げ北米のアッシュの木を片っ端から食い荒らしているそうです。コロナ禍でもサバクトビバッタの蝗害が話題になりましたが人類は虫の大群に勝つすべはあるのでしょうか・・・ちなみに現在は害虫に耐性のあるアッシュの木を植えるプロジェクトが進行中のようですが成長するまで40~50年ほどかかる模様です。
「あ~アッシュボディのモデルですか」ってな感じですね泣
もう一つの要因が自然災害です。気候変動により近年頻繁に起こっているハリケーンや豪雨による洪水で年々アッシュ材の数が減っています、特にミシシッピ川の洪水の被害は甚大でほとんどのアッシュの木が沈んでしまい、アッシュ材は市場からほぼ姿を消しました。そうした流れの中でフェンダーはレギュラーラインからのアッシュ材の使用をやめたわけですが、完全にやめたわけではありません。カスタムショップ製品やアーティストモデル、特別なモデルには今でもアッシュ材を採用しています。最近ですと70thアニバーサリーモデルのブロードキャスターや新発売の75thアニバーサリーストラトキャスターなどの限定モデルにアッシュ材が採用されています。
ともあれ今後も枯渇状態は続いていき、アッシュ材製品は中古も含め市場からどんどん減っています。お探しの方はお急ぎください。もちろんアッシュ材の代替材もすでに出ております。現在フェンダーではパイン材をアッシュ材の代替材として主に使用しております。(カスタムショップラインではササフラス材も使用)
パイン材はトーンウッドの歴史的には古くから使用されており、最初期のエスクワイアに使用されていた事実もあります。パイン材と言ってもパイナップルとはまったく関係なく、日本名ではご存知、松です。音響特性は硬質でキラキラとしておりアッシュ材に近しいです。ただ松は松脂(マツヤニ)を多く分泌し、加工には不向きとされています。フェンダーでは北米の松脂の少ないものを採用しており、ロースト加工を施しています。ロースト加工は真空下で高温熱処理を行う加工で木材に含まれる水分を飛ばし樹液を結晶化させる事で剛性と安定性を高め、軽量化と鳴りの向上を見込めます。この作業を行うことによって音響特性をさらにアッシュ材に近づける狙いがあるのかもしれません、また軽量なものが多いのでスワンプアッシュのような軽量個体も生産可能になります。木目もしっかりと出ているので見た目も魅力的な個体が多いです。
現在のラインナップですとアメリカンプロフェッショナルIIや70thアニバーサリーモデルのエスクワイアなどのモデルに採用されています。
さて、ギター好きの方にとってはすべて今更のお話ではありますが、改めて現状の木材状況をお話させて頂きました。フェンダー社では今後も歴史ある楽器を世に長く出すためにいち早く舵を切り、木材を温存させる方向を選んだわけですね。個人的にもすばらしい取り組みだと思います。ギターの材質が木で出来ている以上、今後も様々なトーンウッドの代替材が登場すると推測できます。フェンダー社に限らず各社、木材の変更の歴史は古く、その都度工夫をして製品を維持しています。地球の資源は有限ですから数少ない希少な木材は今後も大事にしていきたいですね。最近では楽器業界でのエキゾチックウッドの人気も高まっていますから多種多様な木材を採用した楽器が一層楽しめそうですね。今後のフェンダー製品にも期待です。
さあ大いなるギターワールドの旅に出かけよう!
ルーク居波(ルークいなみ)
横浜店勤務時代はデューク工藤に、渋谷店ではスターキー星に師事、現在池袋店にてフェンダーを担当。海外買付なども行っており、2人のフェンダーDNAを引き継いだ若きホープである。彼自身、多数のフェンダーギターを所有しており、中でもジャズマスターにかける愛はイシバシ随一! ちなみに彼が身につけているメガネもフェンダー製なのは言うまでも無い。 フェイバリットミュージックはオルタナ、ポストロック、シューゲイザーなど現代的なものから70~90年代のロックまで幅広く愛聴している。常にお客様の立場に立ち、独自の視点で最高の1本を探すお手伝いをさせて頂きます。























