イシバシ三銃士のスーパーギター列伝

第26回(by 佐藤 俊太)

Q:高額なギターや古いギターって温度や湿度の管理が大変なんですよね?

A:気を付けて頂くポイントはありますが、日々のお手入れ&管理方法はお手頃なギターと一緒です!

 イシバシ楽器渋谷店改め名古屋栄店の佐藤です。

 私事ですが、4月より名古屋栄店に異動となり、名古屋グルメを堪能しつつ業務に携わっております。所属は変わってもこちらのメルマガにて引き続き店頭で皆様から頂く事の多い(時にきわどい)ご質問に率直に回答させて頂きますので、 今後ともよろしくお願い致します。

 さて、梅雨入りし蒸し暑くなり、本格的な夏を迎えるにあたり、気になるのは生の木材を使用したギター/ベースの管理。夏のボーナス時期でそろそろ良い楽器に持ち替えようかなという方、憧れていた楽器をこの機会にゲットしたい方もいらっしゃるかと思います。同時に、ギターにとって一番怖いのが冬場の乾燥とはいえ、同様に夏場の湿気や熱に対しても不安を抱かれている方は多いかと思われます。高額な楽器にとってはなおさらです。

 そこで今回は、そういった楽器の管理&お手入れ方法について、気を付けるべきポイントをいくつかお伝えさせて頂きます。


ポイント1:「ご自分が普段生活されている部屋に置いておき、毎日弾いてあげて下さい」

 いきなりですが最重要ポイントです。これは高額な楽器でもお手頃な価格帯の入門機種であっても変わらないポイントです。

 湿度に関して、木材を使ったギターにとって最適なのは45〜47%程度と言われており、多くのメーカーの工場内はこの数値内の湿度に保たれています。しかしながら、四季のある&狭い住宅事情の日本で1年を通してこの湿度を保つのはほぼ不可能です。では少しでも良い環境に置いておきたい所ですが、実際のところ湿度45〜47%というのは人間自身にとっても快適な環境です。そうでなくても、楽器はあくまで人が弾くもので、本来人と同じ空間にあってしかるべきものです。よって、ご自分が普段生活されている部屋(リビングルームやソファのある寝室等)に保管して頂き、その部屋をご自分にとって快適な環境(暑すぎず、涼しすぎず、蒸しすぎず、乾燥しすぎず)に調整してあげるのがベストです。少しの時間でも良いので毎日弾いてあげるというのもポイントで、毎日弾いていると僅かなコンディションの変化にも気づいて頂き、トラブル等大事になる前に対処しやすくなるという点でも重要です。

 また、基本的な事ですが、部屋の中でも直射日光が当たる窓際や、エアコンの送風が直に当たるような場所は避けた方が良いです。

 それとは逆に「高価なものだから」と屋根裏部屋や倉庫、押し入れのやクローゼットの中等に湿度調整剤等を入れてケースに入れっぱなしで保管される方がいらっしゃいますが、これも避けて頂いた方が無難です。しまいっぱなしというコンディションになりがちな点も問題ですし、何よりいくら湿度調整剤と一緒であっても自分が押し入れや屋根裏部屋にケース内に入れられて置きっぱなしにされたら・・・と想像してみて下さい。快適な環境とはとても言えないはずです。湿度調整剤はあくまで付加的なものとして必要に応じて使って頂くのが良いかと存じます。


ポイント2:「ポリッシュやクロスは塗装の種類に合ったものを、正しい方法で使って下さい」

 普段弾き終わった後のお手入れは、基本的に専用のクロスで乾拭きして頂くだけでも十分ですが、弦交換のタイミング等、たまった汚れを綺麗にしたいと感じる場面があるかと思います。

 そうした際にはポリッシュやオイル等のお手入れ道具を使って頂く事になるのですが、塗装の種類やどのような木材かによって、適切な道具や方法が異なります。

 代表的な例として、Gibson等に塗装がニトロセルロースラッカーである楽器が挙げられます。こうした楽器のお手入れには必ずラッカー塗料対応のポリッシュを使って頂く必要があります。拭き方も汚れを落とそうとごしごしと力を入れすぎるとかえって傷がついたりする場合もありますので、杢目に沿って優しく拭いてあげましょう。ただし、同じラッカー塗料であっても、GibsonのV.O.S.に代表される極薄仕上げのものや、Cole Clarkのようなサテン仕上げのものに関しては、逆にポリッシュやクロスを使って拭くと艶が出てしまったり、木部にダメージを与えてしまったりして、質感を損ねてしまう場合がある点も注意です。

 この辺りはご購入時に説明させて頂きますし、ご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。

 *以前Guitar Questで紹介させて頂きましたが、私佐藤が個人的に愛用しているのはこちらのポリッシュです。GibsonやMartin等の戦前のヴィンテージにも問題なく使えますし、化学薬品っぽくない良い香りなのもGOODです!

写真
Ken Smith / Pro Formula Polish ポリッシュ
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ポイント3:「アコギやベース等弦の張力がある場合は、弾き終わったら弦を緩めて下さい」

 これも高級/お手頃なモデル両方に共通して言える事です。

 見た目には分かりませんが、弦の張力はかなり強く、アコギやベース等はチューニングを張りっぱなしにしておくと弦の張力に負けてネックが反ってしまう場合があります。さらにアコギ等ボディが空洞の楽器場合は、ネックの反り以外にもブリッジが引っ張られる事によるボディトップの膨らみやブリッジはがれ(アーチトップの場合は逆にブリッジが押さえつけられる事によるボディトップの沈み込み)等のトラブルが起きる場合もあります。

 完全にダルダルになるまで緩める必要はありませんが、弾き終わった後は軽く緩めて頂く事をお勧めします。

 逆に張力が少ない細い弦を張った状態のエレキギターやウクレレ等は、緩める必要が無いケースもありますので、この辺りはご相談下さい。

 他にも細かい所は色々とありますが、お手入れや管理方法において特に重要な3ポイントを紹介させて頂きました。

 ラッカー塗装のモデル等に特有な注意点はありますが、基本的な所は高額品であってもお手頃な入門用機種であっても共通していますので、過度に気にしすぎたり警戒しすぎる事無く、基本に忠実に日々のお手入れをして頂きつつ演奏を楽しんで頂ければ幸いです。

 「そうはいっても不安・・・」「やりかたがいまいちわからない・・・」等あれば、是非お気軽にイシバシ楽器店頭でお尋ね下さい。ご購入/お持ちの楽器それぞれに合った方法をお伝え致します。

 大いなるギターワールドの旅に出かけよう!

佐藤 俊太

佐藤 俊太(さとう しゅんた)

渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店アコースティックフロアに籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプなどなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。