第8回(by 佐藤 俊太)
Q:アコギの弦を張り替えたばかりなのに、なぜか3弦がよく切れます。これってギターの不具合ですか?
A:本当に不具合の場合もありますが、アコギの場合、実は3弦が最も切れやすいです。
イシバシ楽器渋谷店の佐藤です。今回も実際に店頭で皆様から頂く事の多い(時にきわどい)ご質問に率直に回答させて頂きます。
第3回は前回までよりは幾分ミニマムなテーマですが、ギターを構成する上で重要な弦についてです。
まず、アコースティックギターの弦について、「そんなの知ってるよ!」という方が多いとは思いますが、基本的なポイントをおさらいさせて頂きます。
◆弦は消耗品!
もちろん切れると交換する必要がありますが、切れなくとも使っていくうちに手汗や汚れなどで劣化していくため、程よいタイミングで交換する必要があります。劣化して錆びた弦はサウンド的にも良くありませんし、指に引っかかって怪我をするリスクを考えても注意する必要があります。交換スパンは使用頻度や張ってある弦の種類によって異なりますが、通常の場合1ヶ月に1回は交換するのがベストです。
また、コーティング処理がしてある弦(エリクサー等)は通常の弦よりも長持ちし、錆や腐食に強いため、交換スパンが長くなるのですが、弦そのものの強度が上がるわけでは無い(=張替えたてであっても切れる時はあっさり切れる)点に注意が必要です。
◆太さによって音が変わります!
基本的に太ければ太いほど音量は増し、図太い音になる傾向があります。細くなれば音量は控えめになりますが、押弦しやすくなります。
アコースティックギターの場合、大きく分けて「エクストラライト」「カスタムライト」「ライト」「ミディアム」の4種類の太さがあり、ミディアムが最も太いゲージとなります。
なお新品のアコースティックギターの場合、大多数のモデルが「ライト」ゲージが張られて出荷されています。また標準より太い弦を張る場合、ネックに負担がかかり、場合によってはナット部分の溝調整が必要となる点に注意が必要です。
◆材質によって音が変わります!
アコースティックギター用の弦の素材は大きく分けると「ブロンズ」「フォスファーブロンズ」の2種類です(コンパウンドやシルクのような特殊なタイプもありますが、今回は割愛します)。
「ブロンズ」は所謂青銅(銅とスズの合金)で、色はどちらかというと黄色がかっており、高域がやや抑えられた落ち着いたトーンが特徴です。ダダリオ弦の商品名「80/20」は、この銅とスズの化合割合を表しています。
「フォスファーブロンズ」は上記のブロンズにリンを加えたもので、色はやや赤みがさしており、ブロンズと比較すると煌びやかで上品なニュアンスのあるトーンです。
フォスファーブロンズの方がやや高価ですが、サウンドのお好みで選んで頂いて問題はありません。
さて、ここで冒頭の3弦がなぜ切れやすいかという点なのですが、アコースティックギターの弦の場合、1、2弦は所謂プレーン弦(芯線のみの構造)で、3~6弦はワウンド弦(芯線を前述のブロンズやフォスファーブロンズで包んだ巻き弦)です。つまり、芯線の太さで比較すると、実は1弦より3弦の方が細いため、3弦の方が1弦よりも切れやすいのです。
また、切れるパターンで非常に多いのが、チューニングの際や、弾き終わって弦を緩める際にペグポストの部分で切れてしまう例です。しかしながら、この現象については、対策を施す事である程度防ぐ事ができます。
*左:良い巻き方の例、右:あまり良くない巻き方の例
3弦のペグポスト付近の上記の画像ですが、右側の良くない例の場合、巻き終わり部分がペグポストの穴のエッジ部分に当たってしまいます。この場合、チューニングしたり緩めたりする都度、エッジ部分と弦が接触を繰り返すため、耐え切れなくなった芯線が切れてしまう・・・ というパターンが多いのです。
左側の例のように、切れやすい3弦や1弦については、他の弦よりも気持ち多めに巻いてあげ、エッジ部分に巻き終わり部分が接触しないようにしてあげる事で、この現象をある程度防ぐ事ができます。また、ここでの巻き数によってナット部分にかかる力がやや変化しますので、サウンド面にも影響があり、意外におろそかにできないポイントなのです。
巻き方についてはプレイヤーによって異なるのですが、基本的には適切な巻き数で、巻き上げていく方向が揃っていればOKです。
もちろん、ペグやギターの他の箇所に問題があり(ペグ穴のバリ取りがいまいちだった場合など)、弦切れが頻発するケースもありますが、弦を正しく張る事で未然に防げるアクシデントもあります。
エレキギターの場合、「4弦がなぜかよく切れる」というケースでも応用が利きますので、お悩みの方は是非「他の弦より多めに巻く」テクニックをお試し頂ければ幸いです。
基本的すぎてつい見落としがちなポイントですが、アコギのみならずエレキギターやベースについても「弦を正しく張る」という行為、サウンド面でも重要ですので、色々と試して頂くと新たな発見があるかもしれません。
さあ大いなるギターワールドの旅に出かけよう!
佐藤 俊太(さとう しゅんた)
渋谷店主任。普段は渋谷店アコースティックフロアに籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプなどなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。






