Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


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この一枚を聞け! [ IN THE WEST / JIMI HENDRIX ]



 遂にこの男のアルバムを紹介することになりました。孤高の天才ギタリスト、JIMI HENDRIXが1972年に発売したライブアルバム「IN THE WEST」を今回は紹介いたします。

 最初に言っておきましょう。JIMI HENDRIX(以下ジミヘン)が音楽シーンに居たのは、たった4年少々という事です。1966年、無名のサポート・ミュージシャンであったジミヘンをあるアーティストが見出すのである。そのアーティストは当時人気絶頂であったアニマルスのベーシスト、チャス・チャンドラーです。チャスは当時、ストーンズのキース・リチャーズの恋人より“凄いギタリストが居る”と情報をもらい、紹介されたギタリストこそが、ジミヘンだったのです。

 チャスの導線によりドラムにミッチ・ミッチェル、ベースにノエル・レディングを集め、The Jimi Hendrix Experienceを結成し、翌67年にファーストアルバム「ARE YOU EXPERIENCED」を発売し、ここからスターダムへの道が開いたのです。デビュー当時はイギリスでしか人気がなったが、有名なモンタレー・ポップ・フェスティバル出演後にはアメリカでも、非常に評価され人気は絶大なものとなりました。

 ジミヘンの演奏技術は当時シーンで活躍していたアーティストの技術を超越したものであり、ステージパフォーマンスは他を圧倒するモノでありました。ギターを壊すのは当たり前で、ネックを持ってシゴいてのセクシーアクションや時にはギターを燃やすこともあり、そのパフォーマンスは正にオリジナルでありました。

 1968年になると活動拠点をアメリカに変更し、アメリカ国内を隅々までツアーして周り、そんな多忙の中に発売された最後のスタジオ・アルバムこそが名盤「ELECTRIC LADYLAND」なのです。時代も混迷していましたが、ジミヘンの音楽性も良い意味では前衛的ですが、この時期混迷していたとも私は思います。それくらいこのアルバムはブッ飛んでいたと思うのです。

 今回は紹介するアルバムはジミヘンの死後1972年に発売されたものであり、あらゆる会場で収録されたライブアルバムであります。The Jimi Hendrix Experience時代の音源もあり、後期に活動していたBand Of Gypsys時代の音源も収録されているのです。1曲目の“Johnny B Good”から始まり、イギリス国歌〜ビートルズの“Ser Pepper's Lonely Hearts Club Band”、そして最後の“Red House”まで捨て曲なしのライブアルバムなのです。(現行発売されてるCDは曲順も曲数も違います)

 ジミヘンのアルバムは死後有りえないほど発売されています。本来、アルバムには原盤権と言うものが存在し、ざっくり言うと楽曲を音源として発売するにはこの原盤権を持っている者の許可の上に成り立っています。ジミヘン本人はこの権利を管理していなく、その後マネージャーも死亡してしまったことから、1980年代まで無許可と言われても仕方ないアルバムも多く発売されました。

 しかし、このアルバムはその部類と言われたくないほど、完成度の高いアルバムを思います。中学生の頃、このアルバムのジャケットを見て“なんじゃこれ?”といつも思ってました。80年代、時代がCD世代になってきた時、真っ先にこのアルバムをCDで手に入れました。しかし、いつの間にか再発もされず、中古品でもプレミアがついていた時代があります。それはやはり前記の原盤権問題があったと思うのです。

 この春、ジミヘンの映画が公開されました。「JIMI -栄光への軌跡-」がそれですが、デビューからジミーがスターダムにのし上がっていく1967年頃までのジミーを、ヒップホップ・アーティストであるアンドレ・ベンジャミンが熱演しています。ホント、しゃべり方までそっくりです。在り来たりの死亡するまでの物語でないところがこの映画の凄いところだと思いますね。とにかくこの1枚を聞け!!
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