Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


目次に戻る

この一枚を聞け! [FOOL LOOSE & FANCY FREE / ROD STEWART]



 今回紹介するアルバムは1979年に発売されたロッド・スチュワート8枚目のソロアルバム、「FOOL LOOSE & FANCY FREE / 明日へのキックオフ(邦題)」です。

 ロッド・スチュワートはイギリスを代表するロック・ヴォーカリスト。そのロッドの音楽遍歴はかなりのモノなのであります。1960年代の下積み時代を経て、まずロッドが脚光を浴びるのは1968年に参加した第一期のジェフ・ベック・グループでした。ヤードバーズを脱退後、ソロ活動をしていたジェフ・ベックだが、68年に結成するジェフ・ベック・グループはヴォーカルを前面に出したバンドでした。そのヴォーカリストにロッド、そして当時はベーシストであったロン・ウッド(現ローリング・ストーンズ)と不定期であったドラマーでのスタートとなり、その後キーボードにニッキー・ホプキンスが加わることになります。

 ロッドがこのジェフ・ベック・グループに参加したのは約2年ほどで、その後ベースのロン・ウッドと共にスティーブ・マリオットが抜けたスモール・フェイセスへと参加します。この時点でロンはギターへ転向し、バンド名も”フェイセス”へと変更したのです。この時点でのロッドの知名度はかなりのもので、バンドはほぼロッドのバンドと言っても過言ではないと思うのです。

 1975年にロン・ウッドがストーンズへの参加が決まった時点でバンド解散、ロッドはソロ活動へと移っていくのです。音楽性はポップなロックに変更し、数多くの全米No.1を生み出しています。そして1977年にこのアルバム「FOOL LOOSE & FANCY FREE」を発売。大きく変わったところはそれまでのポップなロック路線をよりバンド路線に移行したことです。その大きな原因となったのはドラマーのカーマイン・アピスであると確信しています。

 カーマイン・アピスは60年代の人気バンド、ヴァニラファッジを経て、ハードロックのカクタス、そしてジェフ・ベックとのスーパートリオバンド、ベック・ボガード&アピスのドラマーでもある実力派。そのアピスを加入させてのこのアルバムは、前作の「A NIGHT ON THE TOWN」から比べると非常にロック色が濃く、ハードに仕上がっています。

 ライブでのオープニング曲の定番となった1曲目の“Hot Legs”、しっとり聞けるバラードの“You're In My Heart (The Final Acclaim)”も非常にいい! しかし、このアルバムのキーポイントは5曲目に収録されている“You Keep Me Hangin' On”です。アピスが在籍したヴァニラファッジも演奏していたシュープリームスの名曲。アレンジはほぼヴァニラファッジと同じように演奏しているが、よりハードでドラマチックに仕上がっています。イントロのオルガンソロもたまらんのです! たぶん弾いているのはニッキー・ホプキンスと思われます(未確認ですが)。

 さらにこのアルバムに参加している固定バンドメンバー以外のゲストミュージシャンも凄いんです。ギターにスティーヴ・クロッパー、ブルースハープにジョン・メイオール、キーボードに前記のニッキー・ホプキンスや若かりし頃のデビッド・フォスターまでが参加しているんです。昔のアルバムはこのゲストのクレジットを見ているだけでも楽しくなりますよね。

 そしてもちろんロッドはまだまだ現役です! 1997年に行われたエルビス・プレスリー没後20周年記念ライブで、私が敬愛するE.YAZAWAとウェンブリースタジアムで一緒に歌ったときは感無量でした。最初は全く知らない日本人アーティストにしらけ気味の雰囲気でしたが、YAZAWAがひとたび歌うと”凄いなコイツ!”という雰囲気に変わり、その反応をいち早く察知したのもロッドであった。最後には隣にYAZAWAを呼び、ジョン・ボン・ジョビと3人で"Heartbreak Hotel"を歌った時、泣きそうになったのは自分だけではなかったはずです! ネッ?! とにかくこの1枚を聞け!!
バックナンバー
バックナンバー