Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


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この一枚を聞け! [COME TASTE THE BAND / DEEP PURPLE]



  ディープ・パープルといえばリッチー・ブラックモアだよねと言う人が多いと思いますが、2代目ギタリストでもあるトミー・ボーリンも味があるギターを弾く素晴らしいギタリストだったことを忘れてはいけません。また、リッチーが脱退した後、解散の危機にあったパープルを一時的ではありますが救ったのがボーリンであることも忘れてはならないのです。

 そのトミー・ボーリンが在籍していた4期のディープ・パープル、唯一のスタジオアルバム「COME TASTE THE BAND」を今回はご紹介します。発売時はやはりリッチーと比べられましたが、私が思うにまるっきり進化したパープルと思って聞いて欲しいのです。音楽性も以前に比べよりファンキーになり、何といってもお気に入りベーシストNO.1のグレン・ヒューズが前面に出ているアルバムなのです。

 ヴォーカルはご存知、デイヴィッド・カヴァデールですが、そのカヴァデールよりハイトーンで歌うヒューズの声は正に圧巻。ソウルフルなカヴァデールの声と非常によくマッチングしているのでこの辺も聞きどころのひとつといえます。

 1曲目の”Comin' Home”のオープニングは正にハードロックの王道だし、3曲目の”Gettin' Tighter”はヒューズの独壇場。そして7曲目の”This Time Around〜Owed to 'G'”からラストの”You Keep on Moving”までの流れは完璧なんです。特に”You Keep on Moving”のベースラインは単調ではあるのですが、計算されたラインでダイナミクスは完璧! エンディングにベースの音を余らせて終わるところなどは鳥ハダもんです。正に捨て曲無しのアルバムとはこのことなんです。

 しかし、私の思いとは裏腹にこのアルバムは全くといって評価が低く、キーボードのジョン・ロードにいたっては、後のインタビューで「このアルバムは発表しなければよかった」なんていっているのです。確かに2期、3期のパープルよりキーボードのフィーチャーは少ないかもしれませんが、私にとってはハードロック・アルバムベスト5に入る凄い作品だと思うんです。

 また、アルバム発売のすぐ後に、このメンバーで来日公演が実現しています。しかし、こちらはアルバムの出来とは正反対でひどいライブだったのを記憶しています。ヒューズはラリっているのかフラフラだし、ボーリンは怪我で全くといってギターが弾けてなかった。更にショッキングなのは翌1976年にディープ・パープルは解散。しかもその数ヶ月後にはオーバードースでトミー・ボーリンが他界してしまった。悲運は重なるものである。

 最近になってこのアルバムが待望のリマスターになって帰ってきた。しかも、2枚組みで未発表曲も含まれている。”Comin' Home”などはオリジナルのフェイドアウトではなく、ぎりまでソロを弾いているレアなヴァージョンに感激しております。

 今回、なぜ今頃ディープパープルを紹介するのかというとご存知であるとは思うが、キーボードのジョン・ロードが先日他界した。パープルの創設者でもあるジョン・ロードのハードロック界への貢献はものすごいものである。ハモンドオルガンを世に広めたのも彼といっても過言ではないだろう。また一人レジェンダリーな人物がロック界から消え、寂しさも倍増である。今日もこのアルバムを聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!
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