もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー
今回紹介するアルバムはボウイが1977年に発売した2枚のアルバムの2作目、"HEROES" である。70年代前半のボウイの音楽スタイルはグラムロックの中心的存在であった。その音楽スタイルに変化が出てきたのは70年代中期で、77年に発売されたアルバムの1作目、「LOW」より音楽のベースをベルリンに移すこととなる。 その「LOW」からアルバム制作をブライアン・イーノとタグを組むことになる。ブライアン・イーノはブライアン・フェリー率いるロキシーミュージックの初期のキーボード奏者である傍ら、新鋭のプロデューサーとしても有名であった。「LOW」では新しいボウイ・サウンドを確立させ、音の重厚さは以前のロックンロールスタイルからは大きくかけ離れたサウンドでもあった。この時代、セックス・ピストルズがデビューし、パンクが主流の音楽シーンであったが、あえてこのスタイルにするボウイの冒険心が私は大好きである。 そしてこのアルバム「"HEROES"」では更なる冒険が飛び出てくる。それはギタリスト、ロバート・フリップの参加である。キング・クリムゾンの中心人物でプログレ界きっての変人ギタリストの参加によりそのサウンドはさらに進化する。74年、クリムゾン解散後にイーノと活動を共にしていたのでこのアルバムへの参加も納得するが、当時プログレ好きの私にとってはデヴィッド・ボウイのアルバムにロバート・フリップが参加するなんて想像もつきませんでした! そのフリップ・サウンドが出まくっているのがタイトル曲でもある"HEROES"だ。何といってもイントロの強烈にサスティーンのきいたファズ・ギターサウンドは正にあの変態ギターサウンドなのです。今聞くとなんてことない音ではありますが、あの音を70年代に作っていたのが恐ろしく凄いのです。 アルバム発売の翌年、1978年に私は初めてボウイのライブを見ることになる。初来日は73年であるがボウイは大の飛行機嫌いで、このときはイギリスから船で来日したことは有名である。78年の来日で船で来たかは定かでないが、とにかくワクワクしながら武道館へと足を運んだ。その理由はあのロバート・フリップが弾いていた”HEROES”のイントロ部分をどの様に弾いているか見たかったのである。 来日公演をサポートしたギタリストはエイドリアン・ブリュー。このときはこの人が誰だか全く知らなかった。そして"HEROES"が始まるとそのギタリストは手に何だか小さいものを持ち、ピッキングせずにあのサスティーンサウンドを出していたのである。マジでぶっ飛びました!後でわかったのですがこれが「E-BOW」だったのです。今ではE-BOWをはじめ、サスティナー等のエフェクトがいっぱい発売されていて誰でも出せるサウンドですが、この時代すごい革命的なサウンドだったのです。 この数年後、エイドリアン・ブリューは再結成キング・クリムゾンに参加し、ロバート・フリップと活動を共にすることになる。ミュージシャンはホント、つながってますね〜!このつながりこそが新しいサウンドを作り出すのだと実感します。そしてボウイも83年にまた新しいスタイルを確立させ、「Let's Dance」というアルバムで完全にスターダムにのし上がるのだ。この時もボウイは新しいギターリストをアルバムに参加させた。それがあのスティーヴィー・レイ・ボーンである。さすがボウイ! ボウイは今年で御年64才。相変わらずクネクネした腰つきで歌っている。最後に来たのは2004年だから、もうそろそろその雄姿を見せてほしいものです。まだまだロックンロールできるんですから・・・ とにかくこの1枚を聞け! バックナンバー |