もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー
今回ご紹介するCDは伝説のギターリスト、ロリー・ギャラガー率いるTASTEが71年に発売した、イギリスのワイト島で70年8月に行われた「ワイト島ポップ・フェスティバル」時の実況録音盤である(LIVE盤のことを当時こう呼んだ)。 TASTEの結成は68年。アイルランド出身のロリーを中心に作られたバンドある。この時代トリオのバンドというとクラプトンのCREAMが有名であるが、そのCREAMより更にブルース色が強くCREAMの後継バンドとして育てられたのも有名な話である。 この時代、ブルースバンドの活躍が非常に多い。ピーター・グリーン率いるフリードウッド・マック、アルヴェン・リーのテン・イヤーズ・アフター等、歴史に名を残すブルースバンドが多数デビューしているもの事実。その中でもこのTASTEは余分なところを全て削ぎ落としたようなソリッドなブルースバンドであった。 69年にファーストアルバム「TASTE」でデビュー。スタジオ録音盤は2枚しかなく、解散後にライブアルバムを本作を含め2枚発売している。ベスト盤等は後に発売されているが、正式な音源はたしかこの4枚のみだったような気がする。しかもこのアルバムは最も末期のTASTEの音源であるがその素晴らしい演奏は何度聴いても鋭い。 この年のワイト島ポップフェスには歴史に残るバンドが多数出演している。68年に始まったこのフェスも70年開催の時、最も多い動員数となっている。ウッドストックからの流れで時代はフェスティバルブーム、60万人以上動員したとも言われているが不正入場者も多数いたといわれている。TASTE以外の出演バンドはジミヘン、ザ・フー、ドアーズ、ジョニー・ミッチェル、マイルス・デイビス、EL&Pと夢のような共演である事は間違いない。El&Pなどは本ライブがデビューライブであった。 その物凄い出演者の中でもTASTEのパフォーマンスは特に鋭かった。アンコールが5回も出たと伝えられている。オープニングの”What's Going On"も有名な演奏であるが、私は3曲目の”Morning Son”がとてもお気に入りである。収録曲6曲のうち3曲は10分を超える曲であるが、ロリーのギター・テクニックを聴いていると意外と長く感じさせないのだ。 ロリーはこのライブの後、TASTEを解散させソロ活動へと移っていく。スタイルは変えてはいないが、よりギターが前面に出てきている。その中でも76年に発売した「Calling Card」も必聴である。そしてチェック柄のシャツにボロボロのストラト、小さいアンプをフルテンで弾くそのスタイルは独自のスタイルとして語りつながれている。 90年代に入っても活動を続けていたロリーだが、長年強烈に飲酒していたしっぺ返しとして肝臓を患っていった。95年になるとツアーも続けられなくなり、肝臓移植手術を行ったが経過は思わしくなく95年6月14日に47年の生涯を閉じた。死後も数多くの音源が発売され、今もなお彼のギターは多くのミュージシャンの憧れでもある。ジミヘンやクラプトンほど有名ではないが、必ず聴いてもらいたいギターリストの一人である。とにかくこの1枚を聴け! バックナンバー |