この一枚を聞け![MUSIC FROM BIG PINK / THE BAND]



 今年最後に紹介するアルバムはアメリカのレジェンドバンド、THE BANDが1968年にリリースしたデビューアルバム「MUSIC FROM BIG PINK(邦題:ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク)」です。

 THE BANDは玄人好みとされてきたバンドですので、日本ではメチャクチャ有名という感じではありませんが、本国では多くの有名アーティストがリスペクトしている“ミュージシャンズ・ミュージシャン”なのです。

 THE BANDの始まりは1960年代初頭にデビュー時のメンバーが集まり、60年代半ばにフォークサウンドに飽きたボブ・ディランが自身のサポートバンドに使う事で有名となりました。ツアーも終わった60年代後期なるとTHE BANDのメンバーはボブ・ディランの別荘的な住処であるニュヨークの郊外ウッドストックに住み移ります。その住処こそがタイトルにもなっている“ビッグピンク”なのです。建物がピンクに塗られていた事から、この名前になったと言われており、この家でセッションされた数多くの曲が、後に世界中のロックシーンで有名な曲になる事になるわけです。

 ギターのロビー・ロバートソン、ベースのリック・ダンコ、ピアノのリチャード・マニュエル、キーボードのガース・ハドソンの4名は60年代初頭にアメリカのロックシンガー、ロニー・ホーキンスのバックバンドで活動を共にしていました。そこにアメリカ人ドラマーであるリヴォン・ヘルムが参加しTHE BANDとなります。音楽性はロック、フォーク、ブルースとあらゆるジャンルを混ぜたようで、とにかく聞きやすく耳に残るメロディーラインが特徴でもあります!

 このアルバムを聴いた事の無い方は特に "The Weight"、"Lonesome Suzie"、 "I Shall be Released" の3曲はじっくりと聞いてほしい3曲です。"The Weight"はシングルカットされたTHE BANDの象徴ともいえるような曲。"Lonesome Suzie"はピアノのリチャード・マニュエルが書いた咽び泣くような静かなバラードで、"I Shall be Released"は言わずと知れたボブ・ディランが書いた名曲です。当然、ボブ・ディランのヴァージョンも自身のアルバムに収録されていますが、私はこのTHE BANDのヴァージョンの方が数段好きです!

 このアルバムの発売後の1969年にはウッドストック・フェスティバルに参加し、ディランのみならずビートルズのメンバーやエリック・クラプトン等とも親交を深めていくのです。ジョージ・ハリスンがこのアルバムを大量に買い込み、親しい友達に“凄いからこれを聞け”と渡してあるいたのは有名な話でもあります。

 しかし、このバンドにも当時では当然であったドラッグという魔の手が伸びてきます。この事により、70年代になるとメンバー間に亀裂が入り始めます。特にギターのロビー・ロバートソンと他のメンバーとの間には修復できない溝が出来た事も有名な話であります。

 今秋に公開された映画「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」ではこの辺りのバンドに起きていた事がハッキリ描かれています。現在ではロビー・ロバートソンとガース・ハドソンしか生存しておりませんし、ロビーが深くかかわっている映画ですから、この映画の内容が全てではないと思います。しかし、タイトル通りに“かつて僕らは兄弟だった”という表現は間違いないことがこの映画でハッキリ解るのです!!

 バンドを長続きさせることは非常に難しいことでもありますが、ただ長ければ良いという訳ではない事も、この映画から感じ取ることが出来ました。自分も当然この映画は観に行きましたが、中でもドラムのリヴォン・ヘルムが死去する間際、ロビー・ロバートゾンが病床を訪れた時の話は本当に感涙しました。ロックの歴史を再確認する意味でもこの映画は皆さんに観てもらいたいですね。回想する意味でも今一度私もこのアルバムをじっくり聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!


【追記】
実は来年はいよいよこのコーナーのラストイヤーになります!そこで2021年は筆者である私“JS”が洋楽、邦楽問わず、1970年代に衝撃と影響を受けた「ライブアルバム」を紹介していきたいと思います。今少しお付き合いください!!