この一枚を聞け![THE LIVE ADVENTURES OF MIKE BLOOMFIELD AND AL KOOPER / MIKE BLOOMFIELD AND AL KOOPER]



 今回紹介するアルバムはブルース・ギタリストのMIKE BLOOMFIELDとアメリカのシンガー、AL KOOPERが、1969年にリリースされた“セッション・アルバム”の先駆けともなったライブアルバム「THE LIVE ADVENTURES OF MIKE BLOOMFIELD AND AL KOOPER (邦題:フィルモアの奇蹟)です。

 1960年代後半はロック・ムーブメントが最も乱立した時代で、フェスティバルの始まりでもあり、音楽シーンその物に活気があった時代でもあります。1969年8月に行われたウッドストック・フェスティバルは、あらゆるジャンルが入り乱れ、純粋に音を楽しむ一大イベントであったことに皆さんもご存じだと思います。

 そのウッドストックが開催される1年前に本作品は収録されています。場所はフラワームーブメント発祥の地とも言われるサンフランシスコにあるフィルモア・ウエストで収録されている事から、邦題に「フィルモアの奇蹟」と名づけられているのです。

 そもそもMIKE BLOOMFIELDもAL KOOPERも日本では素人受けするアーティストではない事は確かです(失礼)。MIKE BLOOMFIELDは1967年までポール・バターフィールド・ブルース・バンドというバンドでギターを弾いておりました。ソロになったのは脱退した年からで、ブルース畑のギタリストの中では注目株であったのは間違いありません。一方、AL KOOPERは60年代中期にボブ・ディランと活動を共にし、67年にブラッド・スウェット・アンド・ティアーズを結成し、米国内では知名度もかなりあるアーティストです。

 60年代後半には他のアーティストと共に演奏する“セッション・スタイル”が確立し始め、あらゆるセッション・アルバムが発売されることになります。その代表格ともいえるのが本作品であります。何がそんなに凄いかというと、とにかく即興で演奏しているであろう“フレーズ”、”タイミング”、”サウンドカラー”全てが素晴らしいグルーヴで構成されており、その臨場感たるや50年以上前に演奏されている事を忘れてさせてしまう程の出来栄えなのですヮ!!

 当時はドラッグが蔓延していましたので、キマッて居る状態なのかもしれませんが、その“音の駆け引き”は尋常なモノではありません。このアルバムは良くわからないMIKE BLOOMFIELDの長い前説から始ります(笑)また、当時リリースしばかりのTHE BANDの名曲、“The Weight"をインストで演奏しているのですが、そのギターサウンドはピカイチです!ホントに聞くと解るはずです。また、“Dear Mr. Fantasy”という曲中では、このアルバムが収録された1か月前に発売されたばかりのTHE BEATLESの“Hey Jude"の有名なサビの部分が演奏されています。オシャレじゃありませんか!

 またこのアルバムには多くのゲストが参加しています。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドで活動を共にしたエルビン・ビショップ、デビューして間もないカルロス・サンタナやコーラスでサイモン&ガーファンクルのポール・サイモンなどです。といっても3日間行われたこのセッションの最終日、体調不良で参加できなくなったMIKE BLOOMFIELDの代わりに急遽参加したと言うのも伝説となっています。MIKE BLOOMFIELD自身、ジャンキーであったと思いますので大方そんな感じの理由かと推測します(苦笑)。当然、前記のゲストの演奏もこのアルバムにしっかり収録されているので、2度お得という事ですね。

 特にカルロス・サンタナは収録された年にSANTANAでデビューしておりますので、初のライブ収録作品という事になると思います。そしてこの1年後にウッドストックで強烈な演奏を披露することになるのです。実にレジェンダリーな流れですね。

 最近ではセッション・アルバムというのはなかなか存在しませんが、その原点ともいえるこのアルバムは全てのギタープレイヤーには聞いてほしいですね。私も今一度じっくり聞き直すとします。とにかくこの1枚を聞け!!