この一枚を聞け![ROY BUCHANAN / ROY BUCHANAN]


 今月ご紹介するアルバムは“テレキャスターの魔術師”と言われたアメリカのギタリスト、ROY BUCHANANが1972年にリリースしたファーストアルバム、「ROY BUCHANAN(邦題:ロイ・ブキャナン)です。

 日本では余り知名度の無いROY BUCHANANですが、“アーティストが惚れるアーティスト”として有名で、数多くのスーパーギタリストがリスペクトしております。ジェフ・ベックもそのうちの一人で、私が初めてROY BUCHANANの名を知ったのもジェフ・ベックからでした。ベックの名盤「BLOW BY BLOW」に収録されているスティービーワンダーの曲“Cause We've Ended As Lovers”のクレジットに“ロイ・ブキャナンに捧ぐ”と記載してあって、当然ながらバック・トゥー・ルーツしまして知ったわけです!

 ギタースタイルはまさにミスター・テレキャスター。テレキャスとはこんな音ですと言う見本みたいなサウンドで、エフェクト等のギミックは全くなく、唯一サウンドを変えたように聞こえるのは巧みなピッキング・ハーモニクスを多用しているところです。これがまた凄いんですヮ! ナチュラルな薄めのドライブサウンドも、完全なアンプのナチュラルドライブのみで実に潔いサウンドであります。ちなみにROYの使用しているテレキャスは1953年製と聞いたことがあります。

 また、ブルースを弾かせたらピカイチなんですが、カントリー風のフレーズやロカビリー・ギターなんかも実に巧みに弾きこなしてしまうんです。しかも驚くべきことに、このアルバム発売時には彼は30代前半であります。ギターテクニックの渋さはもちろんですが、ジャケットの写真老け過ぎじゃないですか?(笑)

 1曲目の“Sweet Dreams”はハモンドオルガンとテレキャス・サウンドがとても心地よいバラードでスタートし、2曲目ではヴォーカリストを入れてカントリー風な曲という、なかなかバラエティーにとんでおります。基本、インストが殆どでありますが、たまにヴォーカルを入れるところが飽きさせないところでもあるんです。そしてこのアルバムの中にはROYの中でも名曲とされている“The Messiah Will Come Again”が収録されています。哀愁をおびたギターフレーズ、悲しいメロディーライン、後半での盛り上がりと全てを盛り込んだ素晴らしい曲であります。

 この曲はROYを崇拝していたゲイリー・ムーアもハードロック時代に演奏しており、「AFTER THE WAR」というアルバムに収録されております。このアルバムのドラムはコージー・パウエルで、ギターは当然ながら歪んでいるサウンドでありますが、こちらも聞いていただきたいヴァージョンでもあります。じつにダイナミックな仕上がりになっております。また、ジェフ・ベック、ゲイリー・ムーアの他にもエリック・クラプトンやイエスのスティーブ・ハウなども、ROYに影響受けているアーティストであるんです。意外にこの様なアーティストが日本では余り評価されていないのが、残念でもありますね。

 また、ROYは過去に2回ほど来日しております。両方とも観ることは叶いませんでしたが、初来日の公演は「LIVE IN JAPAN」として音源に残されております。実は私が初めてROYのLPを買ったのはこの「LIVE IN JAPAN」でした。当時は日本での公演をライブ盤に残すことが一種ステイタスでしたからネ。2度目の来日は1986年で、その2年後に自死によりこの世を去りました。残念です。

 先月、メルマガ配信200号で多くの方から、有り難いメッセージを頂きました。もう少し頑張りたいと思いますので、今しばらくお付き合いください。全世界的に大変な状況ですが、出口が見え始めています! 自宅で音楽をじっくり聞くには非常に良いタイミングです。今一度、このアルバムじっくり聞きます。とにかくこの1枚を聞け!!