この一枚を聞け! [DANGER MONEY / U.K.]


 今回紹介するアルバムは、イギリスのプログレッシブロック・バンド、U.K.が1979年に発売したセカンドアルバム「DANGER MONEY(邦題:デンジャー・マネー)」です。

 1974年、歴史的スーパーバンドであるキング・クリムゾンが惜しまれつつ解散いたしました。最後のメンバーであったベーシストのジョン・ウェットンと、ドラマーのビル・ブラッフォードは、解散後すぐに新たなバンドを結成するために動き出したのであります。なお、ビル・ブラッフォードは現在、ビル・ブルーフォードと呼ばれていますが、私はあえて“ブラッフォード”と呼ばせてもらいます(笑)

 この時期、プログレは過渡期に入っていましたがEMERSON,LAKE & PALMERだけは相変わらず人気があり、ツアーも頻繁に回っていたのです。ウェットンはこの状況を見て、YESのキーボーディストでもあったリック・ウェイクマンとブラフォードとで3ピース・プログレバンドを新たに作る画策をしていました。しかし、さまざまな契約問題から実現には至りませんでした。そんな時、以前ウェットンがロキシー・ミュージックでベースを弾いていた時期にキーボーディストであった、エディー・ジョブソンに声をかけ、バンドの母体が出来てきました。

 その後、ギタリストに奇才アラン・ホールズワースを加え、第一期のU.K.が誕生します。1978年にリリースされたデビューアルバム「U.K.(邦題:憂国の四士)」は正に衝撃を与えたアルバムでした。しかし、そこはプログレバンド!(苦笑) わずか1年少々で方向性の違いからブラッフォードとホールズワースがバンドを去ることになります。すぐにドラマー探しが始まり、ジョブソンがフランク・ザッパ・バンドに在籍していた時のドラマー、テリー・ボジオが後釜ドラマーに決定しました。しかもボジオはこの時まだ28歳でありました!!

 当初、計画していた3ピースバンドでリスタートとなった第二期の新作こそが、この「DANGER MONEY」であります! 1曲目のアルバムタイトル曲でもある“Danger Money”から、ドストライクな重低音に変拍子! シャガれたウェットンの声がたまらなく渋いのです。2曲目の“Rendezvous 6:02”は静かなバラードでありながらも、MOOGシンセの心地よいサウンドが味わえ、3曲目の“The Only Thing She Needs”では究極の変拍子を体感できます! ピアノの音もYAMAHA CPのサウンドが心地よく、何よりジョブソンの真骨頂ともいえるバイオリンソロもしっかりココで聞きことが出来るのです! 第一期の曲間ソロは主にホールズワースがギターで構成されていましたが、第二期では主にジョブソンのヴァイオリンで構成されていたことも要点と言えるでしょう。

 そしてアルバム発売の1979年にU.K.は初来日を果たします。当然、ウェットン信者の私は日本青年館へと足を運びました。すると当日、ライブ録音されることを知らされました。しかも、開演前だか終演後だかは覚えていませんが、「ユーケー、ユーケー、ユーケーッ!」という声援を別撮りしたのが懐かしい思い出です。その模様は「NIGHT AFTER NIGHT」というライブアルバムとなっており、その冒頭に声援として残っているのです! いわゆるヤラセとでも言いましょうか...すみません。(苦笑)

 ただ、このライブアルバム発売当時はオープニングでもあった名曲、“Danger Money”が収録されていませんでした。しかし、最近「完全版」が発売され、早速購入! まさにその時代にタイムスリップしたかのような感じでございました(感涙)。また、私の所有している当時の公演パンフレットには、マキOZのカルメンマキさんのサインが入っているのです! U.K.を観に来ていたマキさんに会場入り口で偶然遭遇! マキOZ・ファンでもある私は真っ先にパンフにサインをもらったのですが、今考えれば失礼な話ですよね。若気の至りでございます。

 既にウェットンやホールズワースもこの世を去り、再演は望めませんが、音源として残り続ける限り、その時代にタイムワープできる訳で、音楽って本当に素晴らしいですよね。このアルバムをまたじっくり聞き直すとします。とにかくこの1枚を聞け!!