この一枚を聞け! [BAKED POTATO SUPER LIVE! / GREG MATHIESON PROJECT]


 今回紹介するアルバムはスーパーセッションバンド、GREG MATHIESON PROJECTが1982年に発売した唯一のアルバム、「BAKED POTATO SUPER LIVE! (邦題:ベイクド・ポテト・スーパー・ライブ!)です。

 GREG MATHIESON PROJECT、現在では古くからのAOR(Adult-Oriented Rock)ファンくらいしか知られていないバンドでありますが、80年代初頭では時代の先端を行ったア―ティスト集団であったことは間違いありません。

 中心人物であるグレッグ・マティソンはフュージョン界の巨匠、ラリー・カールトン・バンドのキーボード奏者です。このマティソンの元に集結したのがTOTOのギタリスト、スティーブ・ルカサーとドラムのジャフ・ポーカロです。更にカールトン・バンドでベースを務めていた、ロバート・ポップウェルを加えて限定結成されたのが、このGREG MATHIESON PROJECTなのです。

 どちらかというと中心人物のマティソンより、ギターとドラムの方が有名ではありますが、そんな事は気にせず、このアルバムの凄いところはファーストアルバムにしてライブアルバムであるという事。セッション・バンドでありますから、仕方ないことなのですが、潔さが演奏にも表れております。そもそも凄腕スタジオ・ミュージシャンの集団ですから、ライブでのミスなどはほとんど聞き取れません。それくらい精度の高い演奏が繰り広げられているのです。

 収録されたのは1981年12月で、LAにある有名なライブハウス「ベイクド・ポテト」で行われました。1985年に自分もこのライブハウスに訪れた事がありますが、5〜60人入ったら満杯になってしまう様な、こじんまりとした伝統あるライブハウスです。場所柄か多くのLA在住のアーティストが入り浸っており、自分が訪れた時もカウンターにリー・リトナーが座っておりました(驚)。そんな小規模な小屋で収録された演奏には、なかなか鬼気迫ったものがあるのです!

 1曲目に収録されている“Bomp Me”ではルカサーのアーミング・サウンドからスタート。当時、世に出たばかりのフロイドローズ・トレモロユニットをシェクターのストラトに搭載し、安定したギターサウンドを聞かせてくれます。マティソンのオルガンとMOOGシンセの音も非常に心地よく、ポーカロのリズムは相変わらず素晴らしいグルーブを出しています。2曲目の“Thank You”などはそのまま、ボズ・スキャッグスが歌いそうな曲だし、ラストの“The Spud Shuffle”のルカサーの弾き倒しっぷりと言ったら、ジェフ・ベック真っ青と言った感じです。また、ジェフ・ポーカロのドラムはこの当時のドラマーには無いグルーヴで、オカズの入れ方やゴーストノートの入れ方が絶妙で、簡単なリズムを叩いているのにとてつもなく厚みがあるサウンドなのです。

 しかもPAなどもほぼ無いようなこじんまりとしたライブハウスで、これだけの完成度の高い演奏を繰り広げる事のできるプロ根性に、全く持って脱帽と言ったところであります。今ほどギミックの無い時代、多分録音を被せているような事も行っていないでしょう。そこがこのアルバムの凄いところでもありますね。

 先日、旅行がてら広島までTOTOの来日公演を観に行ってきました。第一印象、みんな演奏上手すぎです! プロなのだから、を通り越している感があります。リズムのタイトさ、ギターサウンド、フラットしないヴォーカルとどれをとっても完璧に感じたのです。東京公演は武道館での開催でしたが、広島公演は2,000人ほどの小規模ホールで観られたことも大変素晴らしかったです!

 大規模にツアーをするバンドのメンバーでさえ、演奏することがある「ベイクド・ポテト」。そんなライブハウスって日本には無いなぁと思いつつ、このアルバムもう一度聞き直します。とにかくこの1枚を聞け!!