この一枚を聞け! [EXPOSURE / ROBERT FRIPP]


 今回紹介するアルバムはキング・クリムゾンの中心人物、ロバート・フリップが1979年にリリースしたファースト・ソロアルバム、「EXPOSURE(邦題:エクスポージャー)」です。

 ロバート・フリップはご存知キング・クリムゾンのギターリストで、1969年に発売されたロック史上に残る名盤「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」で一躍有名になりました。自身のデビューは数年さかのぼりますが、やはりこのアルバムでフリップは有名になったと言っても過言ではありません。

 時代はビートルズが終焉を迎え、フラワー・ムーブメントが真っ盛りでありました。その中でキング・クリムゾンはジャズ、ロック等のジャンルを超越した音楽性で、ギターサウンドに至っては攻撃的でありながら、実にメロディアスでアコースティックな部分も持ち合わせていました。そんな新しい音楽性ですので、有名になるのに時間はかかりませんでした。意外に知られていませんが、キング・クリムゾンのデビューライブは、69年にブライアン・ジョーンズの亡きあと、新加入したミックテイラーのお披露目公演となったローリング・ストーンズのハイドパークで行われたフリーコンサートでした。幾つかの前座バンドの中の一つであったのは意外に知られていないのです。

 そのキング・クリムゾンは1974年発売のアルバム「RED」で解散してしまいます。時代はプログレッシブ・ロック全盛の時代であったため、クリムゾンの解散は衝撃的なものでした。フリップは解散後、デビッド・ボウイのアルバムに参加したり、ジェネシスを脱退したピーター・ガブリエルのソロアルバムに参加し、ツアーにも帯同していました。今回紹介するアルバムはこの辺りの流れから生まれた作品であることは間違いないのです。

 この初のソロアルバム「EXPOSURE」にはとてつもない有名なアーティストが多く関わっています。まずはピーター・ガブリエル、ブロンディーのデボラ・ハリー、そしてジェネシスのドラマーであったフィル・コリンズ、さらにホール&オーツのダリル・ホールも参加しています。この時期ダリル・ホールのソロアルバムにフリップが参加した事での参加とみられます。現在、クリムゾンのベーシストでもあるトニー・レヴィンも参加していますし、ジェフ・ベックの超名盤「WIRED」でドラムを叩いているナラダ・マイケル・ウォルデンも参加しているのです。正にオールスターです!!

 1曲目の“Preface”ではイントロダクション的に静かにスタートするが、2曲目の“You Burn Me Up I’m Cigarette”ではパンクの要素を加えたスピード感あるロック。しかも、ヴォーカルはダリル・ホール!フリップが弾いていた今までのイメージには無いような曲にビックリします。しかし、3曲目の“Breathless”ではクリムゾンの“Red”を思わせるような攻撃的なギターフレーズがさく裂するのです。ホント聞いてて痛快なくらいです(笑) また、クリムゾン時代には10分超えは当たり前だった曲の時間も、全てコンパクトにまとめられています。この辺もソロアルバムとして意識したところなのでしょうか。ラスト間際にピーター・ガブリエルのファースト・ソロアルバムにも収録されている“Here Comes The Flood”がこのアルバムにも収録されています。ガブリエルのむせび泣くような声が実に素晴らしい仕上がりになってるのです。

 昨年暮れ、キングクリムゾンの来日公演を観てきました。とにかく素晴らしいの一言。ここ数年の中ではNo.1のライブでした。72歳のフリップも相変わらず攻撃的かつ規則的なフレーズを弾きまくっていましたが、MCも無いライブなのにあれほど時間が短く感じたライブはありませんでした。

 その昔、フリップは奇人と言われた時代もありました。ファンからサインをせがまれると「何のために?」と言い、他人の名前を書くような人だったと言われています。しかし、今回観たフリップは明らかに優しそうな英国おじいちゃんで、終演後にカメラで観客を写す姿などは正におじいちゃんでした(笑) しかし、ギターは実に攻撃的なそのギャップに参ったライブでもありましたね、そんなこと思い出しつつ、またこのアルバムを聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!