この一枚を聞け! [THE SENSUAL WORLD / KATE BUSH]


 今回紹介するアルバムは、イギリスが生んだ天才歌姫、KATE BUSHが1989年に発表した6枚目のオリジナルアルバム「THE SENSUAL WORLD(センシュアル・ワールド)」です。

 KATE BUSHを語る上で忘れてはならない人物こそが、ピンクフロイドのギタリストであるデイヴィッド・ギルモアであります。1977年にギルモアに見いだされ、鳴り物入りでデビューしたのは有名な話です。その音楽スタイルはなんとも言えない甘い声に、表現力豊かなパフォーマンスと、どれをとってもこの時代の先端を行っているアーティストの一人でした。この時のKATEはまだ19歳という若さでありました。

 その片鱗は1978年に発売されたデビューアルバム「The Kick Inside(天使と小悪魔)」で早くも見られます。強烈にインパクトある声質に、パントマイムやダンスをしながら歌う姿は、この時代のロックにあまりなかったスタイルでもあったのです。さながら女版ピーター・ガブリエルと言ったところでしょうか。ちなみにこのアルバムのプロデューサーはもちろん、デイヴィッド・ギルモアなのです。

 デビューから80年代半ばまでにKATEはコンスタントにアルバムを発売していきます。2作目以降はKATE自身のセルフプロデュースとなりますが、その音楽性はどの作品も飽きさせる事の無い素晴らしいモノでした。1986年にベストアルバム「THE WHOLE STORY(ケイトブッシュ・ストーリー)」を発売、その後に発売されたオリジナルアルバムこそが、今回紹介する「THE SENSUAL WORLD」です。

 今までとは少し違う音楽性を打ち出し、世界のあらゆる独特なメロディーラインをすべてつぎ込んだようなスタイルは、今までのアルバムとは確実に変わったものとなっていました。その一つがブルガリアン・ボイスの3名からなる“トリオ・ブルガリカ”の参加です。その声質がワールド・ミュージックのスタイルを一段と引き立てています。そしてもう一つが前述のデイヴィッド・ギルモアの参加であります。2曲目に収録されている“Love And Anger”と9曲目の“Rocket’s Tail”にてギターを弾いています。とくに“Rocket’s Tail”においては、これぞギルモアというギターソロを弾いてくれているので、フロイド・マニアの私としては非常にうれしい限りでございます!! 当然ではありますがこのアルバムは全米でもしっかりランクインしているのです。

 これだけ素晴らしい作品を出しておきながら、KATEは40年間の間に10枚のオリジナルアルバムしか出していません。このアルバムを発売した4年後の1993年に「THE RED SHOES(レッドシューズ)」というアルバムを発売しますが、その後12年にわたってアルバムを発売しませんでした。日本なら完全に忘れ去られますよね(苦笑)。しかし、2005年にアルバム「AERIAL(エアリアル)」を発売すれば、全英でアッという間にベスト10入りするのです。この辺がロックが土台に作られている国の差なんですかね・・・?!

 しかも、殆どライブを行わないKATEは、2014年に20数日間にわたってロンドンでライブを行いました。当然ながら全くチケットが取れないプレミアムライブになった事は間違いありません。日本にはその昔、音楽祭か何かで来日しただけでコンサートでの来日はありません。どうやら飛行機嫌いという噂があるそうです。私も、レーザーディスク(懐かしい)でしか動いているKATEを見たことがありません。機会がありましたら是非見てください。こちらのタイトルは「LIVE AT THE HAMMERSMITH ODEON」です。確かDVDにもなっていなかったようナ・・・?

 先日、KATEのアルバムが全てリマスタリングされてBOXで販売が開始されました。是非、わたしも買い揃えたいと思っているのですが、それよりか前記の映像をブルーレイで再発をしてほしいです。ホントに! それまで再びこのアルバムじっくり聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!