この一枚を聞け! [MR.BAD GUY / FREDDIE MERCURY]


 今回紹介するアルバムは、今巷でかなりブームとなっている、QUEENのヴォーカリストであるフレディー・マーキュリーが1985年に発売した唯一のソロアルバム、「MR.BAD GUY(邦題:Mr.・バッド・ガイ)」です。ジャケットかなり濃い仕上がりとなっています!

 現在(2018年11月23日)公開中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」が物凄いヒットで、いままでQUEENを知らなかった方にもこのバンドの素晴らしさが伝わり、昔からのファンの私としては非常にうれしい限りでございます。QUEENは1973年にデビューするのだが、さかのぼる事2年前の1971年には既にバンド活動を始めています。

 ギタリストであるブライアン・メイとドラマーのロジャー・テイラーにより結成されていたバンド「SMILE」がQUEENの前身バンドとなり、この「SMILE」のベースが脱退したことで加入することになるのが、ヴォーカリストのフレディー・マーキュリーとベースのジョン・ディーコンになるわけです。

 バンドの転機となるのは1974年、3枚目のアルバム「SHEER HEART ATTACK」でした。イギリスで認められるだけでなく、アメリカでもその人気決定付けたアルバムとなりました。そして4作目があの名盤「A NIGHT AT THE ORERA」であります! 映画のタイトルにもなった“Bohemian Rhapsody”はまさにロック史上に残る名曲となったわけです。

 しかし、バンドは1982年に発表されたアルバム「HOT SPACE」よりサウンドを大幅に変更し、時代の流れでダンサブルなナンバーを多く収録し、これによりバンドの推進力を大きく失う事になります。ワールドツアーも行い、日本にもしっかりと来日しましたが、ここから2年近くQUEENは沈黙することになってしまいました。84年に大ヒットアルバム「THE WORKS」を発売しますが、この年より1985年にかけて、メンバーはそれぞれソロアルバム活動に勢力を注ぐようになるのです。

 そんな中、発売されたのがこの「MR.BAD GUY」であります。まず第一印象は“全て打ち込みですか?”と思えるくらいのリズムの軽さ(失礼)。やはりロジャーのドラムと比べてしまうのはイケナイのですが、時代を物語るほどのリズムの軽さです。反対にそれがソロアルバムとしては目立ち、全くQUEENと違うサウンドで挑むフレディーに完敗と言ったところです。1曲目の“Let's Turn It On”では相変わらずのフレディー節が全開です! そして2曲目の“Made In Heaven”と3曲目の“I Was Born To Love You”はフレディーが死後発売されたQUEENのアルバム「MADE IN HEAVEN」に演奏部分をレコーディングし直し収録されています。昔、日本のドラマでQUEENの“I Was Born To Love You”が主題歌となりましたが、実はこれはフレディーの曲と言った方が正しいのですね。

 とにかく肝入りで製作されたソロアルバムですが、イギリスでヒットした以外は好成績とは言えなかったようです。また、フレディー自身もこの時期の荒れた生活が影響し、後に命まで縮める事になるとは思っていなかったと思います。

 その後、1985年〜86年にはQUEENは再び大きく羽ばたく事になるのですが、その内容は映画を見ると良くわかりますね。映画とリアルでは若干、時間軸が違いますがその辺は良しとしましょう(笑) とにかくフレディーにとってもターニングポイントになったアルバムであることは間違いないと思います!!

 奇しくもこのメールマガジンの配信日は、フレディー・マーキュリーが世界に向けてエイズである事をカミングアウトした日であります。衝撃なのはその翌日の1991年11月24日に彼が他界してしまった事です。今でもそのニュースを克明に覚えております。しかし、死後20数年たった今、映画でまたQUEENというバンドがクローズアップされてくれることが非常にうれしく思います。そんな事を思いながらまたこのアルバム聞き直すとします。とにかくこの1枚を聞け!!

この一枚を聞け! [QUEEN / INNUENDO] No.80(2010年4月22日発行)もお読みください。